TL;DR
Windowsで「Error writing to file …(エラー1310)」が出る場合は、まず管理者権限でインストーラーを実行し、Windowsインストーラーの再登録、制御フォルダアクセスの無効化、既存バージョンの完全削除を試してください。問題が続く場合は、Program Install and Uninstall トラブルシューティングツール、SFC/DISMスキャン、フォルダの所有権取得、クリーンブートを順に実行することで解決する可能性が高いです。
概要
Error 1310(表示例: “Error writing to file
この記事では、初心者と管理者それぞれが実行できる手順、決定フロー、SOP(標準作業手順)、ロール別チェックリスト、障害対応手順、テストケース、リスクとその緩和策などを網羅して提示します。
重要: 管理者権限で操作する際は、誤って必要なシステムファイルを削除したり、セキュリティを無効化したまま長時間放置しないでください。
目次
- 根本原因の把握
- 手順 1 管理者としてインストールを実行する
- 手順 2 Program Install and Uninstall トラブルシューティングツールを実行する
- 手順 3 Windows インストーラーサービスの状態を確認する
- 手順 4 Windows インストーラーを再登録する
- 手順 5 制御フォルダアクセスをオフにする
- 手順 6 同一アプリケーションの古いバージョンをアンインストールする
- 手順 7 一般的なWindows修復手順
- 決定フロー(図)
- ロール別チェックリスト
- IT向けSOP(プレイブック)
- インシデントランブックとロールバック手順
- テストケースと受け入れ基準
- よくある失敗例と代替アプローチ
- リスクマトリクスと緩和策
- 1行用語集
- サマリー
根本原因の把握
まず、なぜError 1310が発生するかを短く整理します。
- ファイルまたはフォルダへの書き込み権限がない。特に Program Files や Windows ディレクトリなど保護された領域で発生しやすい。
- Windows インストーラー(msiexec.exe)の登録が壊れているか実行できない。
- セキュリティ機能(Controlled folder access やサードパーティ製アンチウイルス)がインストーラーのファイル操作をブロックしている。
- 既存の同一アプリケーションが残っており、ファイル競合が発生している。
- システムファイルやイメージに不整合があり、インストールプロセスが失敗する。
用語定義: msiexec は Windows の MSI インストールエンジン。SFC は System File Checker。DISM は Deployment Image Servicing and Management。
手順 1 管理者としてインストールを実行する
もっとも簡単で効果の高い対処法です。インストーラーを右クリックして「管理者として実行」を選んでください。管理者権限により、通常のユーザー権限ではブロックされるフォルダやレジストリへのアクセスが可能になります。
手順:
- インストーラーファイルを保存したフォルダを開く。
- インストーラーファイルを右クリックし、”管理者として実行” を選択する。
注意: 管理者権限がない場合は、IT管理者に昇格してもらうか管理者アカウントの資格情報を用意してください。
手順 2 Program Install and Uninstall トラブルシューティングツールを実行する
Microsoft が提供する Program Install and Uninstall トラブルシューティングツールは、破損したレジストリキーやインストール情報の不整合を検出・修復します。手順は次の通りです。
手順:
- Microsoft の Program Install and Uninstall トラブルシューティングのダウンロードページへ移動する(ブラウザで検索してください)。
- 「Download troubleshooter」ボタンからファイルを取得する。
- ダウンロードしたフォルダをエクスプローラーで開く。
- MicrosoftProgram_Install_and_Uninstall.meta.diagcab をダブルクリックしてツールを起動する。
- 表示されるウィザードで「Next」をクリック。
- 「Installing」を選択して続行する。
- 問題のあるプログラムが一覧に表示されれば選択、表示されない場合は「Not listed」を選び、問題となっているインストーラーのパスを指定します。
このツールは多くのインストール障害に対して安全に試せる最初の手段です。
手順 3 Windows インストーラーサービスの状態を確認する
Windows Installer サービス(Windows Installer)は MSI ベースのインストールを担当します。サービスが停止しているとインストールに失敗します。
手順:
- タスクバーの検索ボックスに「services」と入力する。
- 検索結果の「サービス」アプリを開く。
- 一覧から “Windows Installer” を探してダブルクリックする。
- サービスが停止していれば「開始」をクリックする。
- 既に開始している場合は一旦「停止」→「開始」で再起動する。
- 「適用」→「OK」で保存してウィンドウを閉じる。
注意: 変更後にインストールを再試行してください。
手順 4 Windows インストーラーを再登録する
Windowsインストーラーのレジストリ登録が破損している場合、msiexec を再登録することで解決することが多いです。以下のコマンドは管理者権限のコマンドプロンプトから実行してください。
手順:
- Win + S を押して検索を開く。
- 「CMD」と入力してコマンドプロンプトを検索する。
- コマンドプロンプトを右クリックして「管理者として実行」を選択する。
- 以下のコマンドを実行して Windows インストーラーの登録解除と再登録を行う。
msiexec /unregister
msiexec /regserver
画像注: 以下のコマンドを実行中のスクリーンショットは、msiexec の登録解除を示しています。
- コマンドプロンプトを閉じ、Windows を再起動してからインストールを再試行します。
注意: 場合によっては msiexec /regserver の代わりに msiexec /register を使う資料もあります。どちらの形式でも msiexec の COM 登録を更新します。
手順 5 制御フォルダアクセスをオフにする
Controlled Folder Access(制御フォルダアクセス)は、ランサムウェア対策としてフォルダへの不正な変更をブロックしますが、正当なインストーラーもブロックされる可能性があります。インストール中のみ一時的にオフにするのが安全です。
手順:
- システムトレイの Windows セキュリティ(盾のアイコン)をダブルクリックする。
- 左側メニューで「ウイルスと脅威の防止」を選択する。
- 「ランサムウェア対策の管理」をクリックする。
- 「制御フォルダアクセス」を選択し、機能が有効ならオフにする。
注意: インストールが完了したら必ず制御フォルダアクセスを再度有効にするか、インストーラー実行ファイルを許可リストに追加してください。
手順 6 同一アプリケーションの古いバージョンをアンインストールする
同一ソフトウェアの既存のインストールが競合し、ファイル上書きやレジストリ整合性の問題でエラーが発生することがあります。古いバージョンを完全にアンインストールしてから、新しいバージョンを入れ直してください。
手順:
- 設定アプリ > アプリ > インストール済みアプリ から該当アプリをアンインストールする。
- レジストリや残存ファイルが心配なら、IObit Uninstaller などのサードパーティアンインストーラーで残滓を除去する。
注意: レジストリの削除や残存ファイルの手動削除は注意して行い、必要ならシステムバックアップを取得してください。
手順 7 一般的なWindows修復手順
上記で解決しない場合は、より一般的なシステム修復を試みます。
SFC と DISM を使ったシステム修復
システムファイル破損を修復するために、以下のコマンドを管理者権限で実行します。
- 管理者権限でコマンドプロンプトを開く。
- 以下を順に実行する。
sfc /scannow
DISM /Online /Cleanup-Image /RestoreHealth
SFC は破損したシステムファイルを検出して可能なら置換し、DISM はオンラインイメージの整合性を修復します。DISM の実行後に再度 sfc /scannow を実行するのが推奨です。
フォルダの所有権を取得する
インストール先フォルダのアクセス権が制限されている場合、フォルダの所有者を自分に切り替えることで書き込み権限を得られます。所有権変更はフォルダのプロパティ > セキュリティ > 詳細設定 から行います。詳しい手順は「フォルダの所有権を取得する」ガイドを参照してください。
クリーンブートでのインストール
サードパーティ製の常駐ソフトウェアが干渉している可能性がある場合、クリーンブートで最小限のサービスのみを有効にした状態でインストールを試みます。msconfig とタスクマネージャーでスタートアップ項目とサービスを限定して再起動し、インストールを試してみてください。
クリーンブートで成功すれば、どのサービスやアプリが競合しているかを一つずつ有効化しながら特定します。
決定フロー
以下は Error 1310 対応の判断フローです。問題の切り分けを早めるため、提示の順で実行してください。図は mermaid 記法で表現しています。
flowchart TD
A[インストーラーを管理者で実行] -->|成功| Z[完了]
A -->|失敗| B[Program Install and Uninstall を実行]
B -->|修復成功| Z
B -->|失敗| C[Windows Installer サービスを確認]
C -->|停止/再起動後成功| Z
C -->|失敗| D[msiexec を再登録]
D -->|成功| Z
D -->|失敗| E[制御フォルダアクセスをオフにする]
E -->|成功| Z
E -->|失敗| F[既存バージョンを完全にアンインストール]
F -->|成功| Z
F -->|失敗| G[SFC/DISM を実行]
G -->|成功| Z
G -->|失敗| H[クリーンブートとフォルダ所有権の確認]
H -->|成功| Z
H -->|失敗| I[IT 管理者に連絡してログ調査]
I --> Z
ロール別チェックリスト
以下はエンドユーザーとIT管理者向けの簡潔 Checklist です。
エンドユーザー用チェックリスト:
- インストーラーを右クリックして「管理者として実行」したか
- 制御フォルダアクセスを一時オフにしたか
- パソコンを再起動してから再試行したか
- 既存のアプリをアンインストールしたか
IT管理者用チェックリスト:
- Program Install and Uninstall ツールの結果を取得したか
- Windows Installer サービスのイベントログを確認したか
- msiexec の再登録を試したか
- SFC/DISM のログと結果を保存したか
- グループポリシーや endpoint protection の設定を確認したか
IT向け SOP(標準作業手順)
対象: 社内 PC で Error 1310 を報告された場合の対応手順。
- 影響範囲の確認
- 問題報告者の OS バージョンと該当ソフト名、インストーラーの種類(MSI/EXE)を確認する。
- インストールログ(インストーラー側がある場合)とイベントビューアのアプリケーションログを収集する。
- 初期対応(ユーザ端末で実行)
- 管理者実行、再起動、既知のセキュリティソフトの一時無効化を指示。
- 管理者対応
- Program Install and Uninstall の実行、Windows Installer のサービス確認、msiexec の再登録を実施。
- SFC/DISM を実行し、結果を保存する(%windir%\Logs\CBS\CBS.log と DISM の出力)。
- 深堀り
- フォルダ所有権とアクセス許可を確認し、必要なら修復。
- グループポリシーで配布した制限がないか確認する。
- 回避策と恒久対策
- 一時的に別フォルダ(例: C:\Temp\Install)にインストールする移行手順を提供。
- 必要ならソフトウェア配布ツール(SCCM/Intune)で配布し、管理者権限を付与した状態でインストールする。
- 文書化
- 対応手順と最終的な解決方法をナレッジベースに記録する。
インシデントランブックとロールバック手順
万が一の障害発生時に備えるランブックを示します。
インシデント対応手順:
- インシデント識別: 報告者からログと再現手順を受領。
- 影響評価: 複数端末で発生するか、特定ユーザーのみかを評価。
- 一時対処: インストールを延期させ、原因特定が完了するまで業務影響を最小化。
- 恒久対処: 根本原因に基づく修正を実施(例: 権限修正、レジストリ修復、ポリシー変更)。
- ロールバック: 恒久対処で予期しない副作用が出た場合は以下を実行する。
- 直前のレジストリバックアップを復元する。
- 変更したサービス設定を元に戻す。
- セキュリティ設定を復旧し、必要ならアンチウイルスの除外設定のみを追加する。
ロールバックの前に必ずシステムのバックアップと、実施した変更の一覧を残してください。
テストケースと受け入れ基準
インストール作業後の受け入れ検証のための簡潔なテストケース。
テストケース 1: 管理者権限でのインストール
- 前提: 管理者アカウントでログイン。
- 操作: インストーラーを管理者実行。
- 期待結果: インストール完了。エラー1310が発生しない。
テストケース 2: msiexec 再登録後のインストール
- 前提: msiexec /unregister と msiexec /regserver を実行済み。
- 操作: 再起動後にインストールを実行。
- 期待結果: インストール完了。イベントログにエラーが記録されない。
テストケース 3: クリーンブートでのインストール
- 前提: クリーンブート実施(サードパーティサービス無効化)。
- 操作: インストールを実行。
- 期待結果: インストール完了。成功した場合は競合アプリの特定を続行。
受け入れ基準:
- 該当ソフトが正常に起動し、基本機能が動作すること。
- インストールに関連する Windows イベントログに重大なエラーが残らないこと。
- 必要に応じてアンインストール・再インストールが問題なく実行できること。
よくある失敗例と代替アプローチ
失敗例:
- 単に管理者で実行しただけで解決せず、後続の権限変更や msiexec の再登録を行っていない。
- 制御フォルダアクセスを無効化し忘れたためにインストーラーが書き込みをブロックされ続けた。
- 古いバージョンを残したまま上書きインストールを行い、ファイル競合が発生した。
代替アプローチ:
- 別のインストールパス(たとえば C:\Temp\Install)にインストールしてから正規の場所に移動できるか検討する。
- 企業環境では、ソフトウェア展開ツール(SCCM/Intune)を使って配布することで権限問題を回避する。
- どうしても動作しない場合は、インストーラーを入れ替え(別パッケージや最新版)して試す。
リスクマトリクスと緩和策
以下は対処時に考慮すべき主要リスクと緩和手段です。
リスク | 影響度 | 発生確率 | 緩和策 |
---|---|---|---|
セキュリティ機能を無効化したまま放置 | 高 | 中 | インストール後すぐに元に戻す。必要な許可のみを除外リストに追加する。 |
レジストリ操作によるシステム不安定 | 高 | 低 | 変更前にレジストリバックアップを取得。変更はログに記録。 |
誤ったフォルダ所有権の変更でアクセス障害 | 中 | 低 | 管理者ポリシーに従い、影響範囲を限定したテストを行う。 |
既存アプリのデータ喪失 | 高 | 低 | アンインストール前にユーザーデータのバックアップを取得する。 |
1行用語集
- msiexec: Windows の MSI インストーラー実行プログラム。
- SFC: System File Checker。システムファイル整合性を検査・修復するツール。
- DISM: Deployment Image Servicing and Management。Windows イメージの整合性を修復するツール。
- Controlled folder access: Windows セキュリティのランサムウェア対策機能でフォルダの改変を防ぐ。
追加のヒントと運用上のベストプラクティス
- 社内で同じソフトのインストール問題が頻発する場合、ソフトウェアパッケージング(MSI もしくは管理者権限付きインストーラ)と展開ポリシーを見直して統一することを検討してください。
- PowerShell スクリプトを用意して msiexec 再登録や SFC/DISM 実行、ログ収集を自動化すると対応速度が向上します。
- 重要なシステム変更を行う前に、復元ポイントを作成するか、イメージバックアップを取得しておくと安全です。
サマリー
この記事では、Windows で発生する Error 1310 の一般的原因とその段階的な対処法を示しました。まずは管理者実行、Program Install and Uninstall ツール、Windows インストーラーのサービス確認と再登録、制御フォルダアクセスの一時無効化、既存バージョンの完全削除、SFC/DISM、フォルダ所有権変更、クリーンブートの順で試してください。IT管理者向けの SOP、インシデントランブック、テストケース、リスクマトリクスも提供しているため、個人利用から組織対応までカバーできます。
重要: いずれの手順でも不安がある場合や問題が広範囲に及ぶ場合は、IT管理者や専門家に相談してください。