Windows XP Recovery Console の使い方とよく使うコマンド集

概要 — Recovery Console とは
Recovery Console(リカバリーコンソール)は、Windows XP に付属する限定的なコマンドライン環境です。管理者権限で起動し、以下のようなトラブルシューティングを行えます:
- 起動に関わるファイルやブートローダの修復
- 破損したドライバやサービスの無効化/有効化
- ディスクの不良セクタ検出と回復
- インストールメディアからのファイル展開
注: Microsoft は高度なユーザー向けとしています。まずはセーフモード(起動時に F8)で問題解決を試みてください。
用意するもの
- Windows XP のインストール CD(CD 上の Windows XP バージョンが PC に入っているものと同等かそれ以上であること。可能なら Service Pack 3 を推奨)
- CD ドライブに挿入できること
- 管理者パスワード(インストール済みシステムにパスワードが設定されている場合)
重要: SP3 以上のメディアを使うと互換性が高くなります。ディスクが手元にない場合は、信頼できる入手元(公式 Microsoft ダウンロード)を使ってください。
インストール手順(代表例)
以下は、CD ドライブが D: の例です。作業は画面の指示に従い、慎重に実行してください。
Windows XP CD を CD-ROM ドライブに挿入します。
エクスプローラやマイ コンピュータから CD ドライブを開きます。
[スタート] をクリックし、[ファイル名を指定して実行] を選びます。
「開く」ボックスに次を入力します(ドライブレターは環境に合わせて変更):
d:\i386\winnt32.exe /cmdcons
ここで d は CD-ROM のドライブレターです。
表示されるセットアップダイアログで Recovery Console の説明を読み、インストールする場合は [はい] をクリックします。
インストール後、コンピュータを再起動します。次回起動時に「Microsoft Windows Recovery Console」がスタートアップメニューに表示されます。
起動後の基本操作
黒い画面に白い文字のインターフェースは威圧的に見えますが、コマンドラインの経験があれば扱いやすいです。ヘルプを見たいときは次のように入力します:
help
特定コマンドの詳細を知りたい場合は:
help fixmbr
ここからは、Recovery Console でよく使うコマンドと使い方をまとめます。
よく使うコマンド一覧(チートシート)
コマンド | 役割 | 使いどころ | 注意点 |
---|---|---|---|
Bootcfg | Boot.ini を再構築/修復 | ブートエントリが消えたとき | ブート設定を誤ると起動できなくなる可能性あり |
Chkdsk /r | 不良セクタ検出と復旧 | ファイルシステムの破損、起動失敗 | 実行に時間がかかる。バックアップ推奨 |
Copy | ファイルを別場所へコピー | 破損したファイルを置き換える | 上書き前に元ファイルをバックアップ |
Delete | ファイルを削除 | 問題ドライバを削除する | 削除は元に戻せないことを想定 |
Disable | サービス/ドライバを無効化 | 起動時にクラッシュするドライバがある場合 | 依存関係に注意 |
Enable | 無効になっているサービスを再有効化 | 無効化が原因で機能しないとき | サービスの再有効化で再度クラッシュする可能性あり |
Diskpart | パーティション操作 | パーティションの確認・変更 | 非常に危険。誤操作でデータ消失の恐れあり |
Expand | 圧縮ファイルを展開 | インストール CD からファイルを取り出す | 正しいファイルを展開すること |
Fixmbr | ハードディスクのブートコード修復 | 「オペレーティングシステムが見つからない」と表示される場合 | マルチブート環境では注意 |
Fixboot | ブートセクタ修復 | ブートレコードの問題解決 | 既存のブート情報が上書きされる |
具体的なトラブル別の対処例
起動時に「Operating system not found」や類似メッセージが出る場合:
- Fixmbr を実行してブートコードを修復
- 必要に応じて Fixboot を実行
ブルースクリーン(BSOD)がドライバのロードと関係している場合:
- Disable で該当ドライバを無効化して再起動
ファイルシステムの破損が疑われる場合:
- Chkdsk /r を実行して不良セクタの検出と復旧を試みる
代替手段と制限事項
回復コンソールが使えない/効果がない場合の代替手段:
- Windows XP の「修復インストール」(インプレースアップグレード)
- サードパーティのブート可能なリカバリディスク(オープンソースや商用)
- ハードディスクを別マシンに接続してデータを救出
Recovery Console が向かないケース(失敗する/使えない):
- ハードウェア故障(電源、マザーボード、HDD の物理故障など)
- ブートローダ以外の深刻な OS コア破損
- 暗号化されたボリューム(回復にキーが必要)
役割別チェックリスト(短縮版)
管理者・IT 担当者:
- CD のバージョンと対象 PC のバージョンが一致しているか確認
- 重要データを可能ならバックアップ
- Diskpart 実行前にパーティション図を記録
ホームユーザー:
- まずは F8 でセーフモードを試す
- CD を用意できない場合は専門家に相談
- コマンド実行時は一つずつ作業し、結果を確認
支援者(電話/リモートで助言する人):
- 実行したコマンドと出力を必ず記録
- ユーザーに誤操作させないための明確な手順を提示
小さな用語集(1 行)
- ブートセクタ: HDD の先頭にある、OS を起動するための小さなコード。破損で起動不可になる。
- Boot.ini: Windows XP のブートエントリを記述する設定ファイル。
よくある失敗と回避策
- 間違ったドライブレターでコマンドを実行してファイルを誤って上書きする: 実行前に dir で内容を確認する。
- Diskpart で誤ったパーティションを削除する: 事前にスクリーンショットやメモで位置を確定する。
- Fixmbr をマルチブート環境で安易に実行して Windows ブートローダーを上書きする: マルチブート構成のときは事前に構成方法を確認する。
軽微な演習(テストケース)
- 起動しない仮想マシンを用意する。ブートローダを壊すシミュレーションを行う。
- Recovery Console で Bootcfg と Fixmbr を使って修復できるか確認。
- Chkdsk /r を実行してエラーの検出・回復時間を計測し、運用手順に反映する。
意志決定フロー(いつ Recovery Console を使うか)
flowchart TD
A[PC が起動しない/ブートで失敗] --> B{セーフモードで起動できるか}
B -- はい --> C[セーフモードで原因特定・アンインストール]
B -- いいえ --> D{インストールメディアはあるか}
D -- ない --> E[メディアを入手する(公式)/データ救出を優先]
D -- ある --> F[Recovery Console をインストール/起動]
F --> G[Bootcfg, Fixmbr, Fixboot を試す]
G --> H{解決したか}
H -- はい --> I[正常起動]
H -- いいえ --> J[代替手段(修復インストールなど)]
セキュリティとプライバシーの注意
- Recovery Console は管理者権限で実行されます。信頼できない環境での使用は避けてください。
- 暗号化ボリュームやパスワード保護されたアカウントがある場合、事前準備が必要です。
まとめ
Recovery Console は Windows XP の重要なトラブルシュートツールです。起動不可の際にブート修復、ディスクチェック、ドライバの無効化などを行えます。ただし、間違った操作はデータ消失につながるため、手順に従い慎重に実行してください。先にセーフモードやデータバックアップを試みることをお勧めします。
Image credit: Paul Boxley