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クラウドを使わずにコンピュータ間でファイルを同期する方法

2 min read 同期 更新されました 12 Oct 2025
クラウドを使わないファイル同期の方法
クラウドを使わないファイル同期の方法

クラウドに保存せずにコンピュータ間でファイルを同期する方法のイメージ

クイックリンク

  • BitTorrent Sync
  • AeroFS
  • Cubby
  • 自分でサーバーを立てる
  • 欠点(考慮ポイント)

なぜクラウドを使わない同期を選ぶか

プライバシーや容量制限、サービス提供者への依存を避けたい場合、ファイルを第三者のサーバーに置かず端末同士で直接同期する方法が有効です。こうした方法は次のような利点があります。

  • データが第三者のサーバーに保管されないため、アカウント流出でファイルが見られるリスクを軽減できる
  • 容量に制限されにくく、ローカルディスクや接続先のストレージによっては大容量の同期が可能
  • 自分で管理・監査できる(特にセルフホストのケース)

逆に、オフサイトの中央バックアップがないためバックアップ方針を自分で設計する必要があります。モバイルやウェブ経由の利便性はクラウドより劣る点もあります。

BitTorrent Sync

BitTorrent Sync(現在はResilio Syncとして知られることが多い)は、BitTorrentプロトコルの仕組みを使って暗号化された形で直接ファイルを転送します。同期の基本的な流れは次の通りです。

  1. クライアントをインストールする(Windows / macOS / Linux対応)
  2. 同期したいフォルダを選び、”シークレット”(共有キー)を作成する
  3. そのシークレットを別の端末に入力すると、直接ピア間で同期が始まる

重要: 転送は暗号化され、ローカルネットワーク経由でもインターネット経由でもピアツーピアで行われます。別途サーバーを立てる必要はありません。

BitTorrent Syncの同期ツアー画面

利点

  • セットアップが容易で即時同期が可能
  • OSを跨いだクライアントが揃っている
  • 中央サーバーにファイルが残らない

欠点・注意点

  • 両端末がオンラインかつ到達可能である必要がある
  • 初回のシードや大量データの初同期では時間がかかることがある
  • 管理者が複数台に導入・監査する用途では運用ポリシーが必要

AeroFS

AeroFSはDropboxに似たユーザー体験を提供しつつ、ファイル自体はAeroFSのサーバーにホストされません。アカウント管理や共有管理のための中央サーバーは存在しますが、ファイルはあくまで各端末にのみ保存されます。

特徴

  • フォルダを作成すれば自動的に同期が始まる(Windows / macOS / Linux対応)
  • 各フォルダは最初は1人と共有可能。追加共有は有料プランが必要な場合がある
  • インターフェースやツアーはDropboxに似ているためユーザー習熟が早い

AeroFSのインストール時のツアー画面

利点

  • 使い勝手がDropboxに近いので移行が容易
  • 管理用のサーバーはアカウント管理のみ。ファイルは端末に残る

欠点・注意点

  • 共有の拡張やチーム用途では料金が発生する場合がある
  • 中央アカウントが存在するため、アカウント関連の攻撃面はゼロではない

Cubby

CubbyはLogMeInが提供するサービスで、クラウド保存を基本に提供しつつ、DirectSyncという端末間の直接同期機能を提供します。DirectSyncを使えばクラウドを介さずに無制限のファイルを同期できますが、現在は有料機能です。

  • プラットフォーム: Windows / macOS(Linux非対応)
  • 初期設定ではクラウドが有効になっているため、DirectSyncを利用するには設定変更や有料プランが必要

Cubbyのクラウド同期をオフにする設定画面

利点

  • 既存のクラウド機能と併用可能
  • GUIが整っているため一般ユーザーに導入しやすい

欠点・注意点

  • DirectSyncが有料になっているためコストが発生する
  • Linuxを利用するユーザーは選択肢から外れる

自分でサーバーを立てる(セルフホスト)

より高度な制御や監査、オンプレミス運用を求める場合は、セルフホスト型の同期ソフトを導入する選択肢があります。代表的なオプションは次の通りです。

  • SparkleShare: Gitをバックエンドに使ったDropboxライクなオープンソースの同期ソリューション。自分でホストして、アクセス制御や監査ログを管理できる
  • rsync: リアルタイム同期ではないが、増分バックアップや定期的なミラーリングに有効。cronなどと組み合わせて夜間バッチで同期する

その他、NextcloudやownCloudのようなファイル同期・共有プラットフォームを自分のサーバーに導入する方法もあります。これらはウェブアクセスやモバイルアプリを自前で提供できるため、アクセス性とプライバシーの両立を図る場合に有効です。

利点

  • 完全な管理権限と監査が可能
  • 自社ポリシーに合わせたバックアップや冗長化が設計できる

欠点・注意点

  • 運用コストと管理負担が増える(OS・ミドルウェアのパッチ適用、障害対応など)
  • ネットワーク設定(ファイアウォール、NAT越え、証明書管理など)が必要

欠点(考慮すべき運用上のポイント)

重要: クラウドを使わない同期方式は便利ですが、運用上のトレードオフがあります。主な注意点は次の通りです。

  • 中央のバックアップが無いため二重化・オフサイトバックアップを自分で設計する必要がある
  • 同期は端末同士の接続に依存するため、常時同期させるには端末を稼働させ続ける必要がある
  • モバイルアプリやブラウザ経由での即時アクセスが期待できない場合がある

いつうまくいかないか(典型的な失敗例)

  • 両端末が同時にオフラインの場合、変更が反映されないまま差分が蓄積して競合が発生する
  • 大量データを初回同期する際にネットワーク帯域を圧迫し、ほかの業務に影響する
  • サーバーや端末のハードディスク故障で、バックアップがないとデータを失う
  • 共有キーやシークレットを誤って公開すると、意図しないアクセスを許すリスクがある

代替アプローチ

  • ハイブリッド: 日常はP2P同期だが、重要データは週次でクラウドや別のオフサイトへバックアップする
  • スナップショット/バージョニング付きのNASを現地に置き、定期的に別サイトへレプリケーションする
  • オンプレミスのNextcloud/ownCloudを使って、外部アクセスはVPN経由に限定する

運用チェックリスト(導入前・導入後)

導入前

  • 同期対象フォルダとデータ分類(機密/一般/アーカイブ)を定義する
  • バックアップ方針(頻度・保存先)を決める
  • ネットワーク要件(帯域、ファイアウォール設定)を確認する

導入後

  • 初期同期の完了を確認し、差分・競合ファイルをチェックする
  • 定期的にバックアップのリストアテストを行う
  • 端末のOSや同期ソフトの更新を管理する
  • シークレットや共有権限の監査を実施する

簡易SOP(セットアップ手順のテンプレート)

  1. 選択したソフトを各端末にインストールする
  2. 同期するトップレベルフォルダを決定し、初期コピーを作成する
  3. 共有キー(シークレット)を生成して、通信相手に安全な手段で渡す
  4. 初回同期をモニタリングし、エラーや競合を解消する
  5. バックアップスケジュールを設定し、ログとアラートを有効化する
  6. 運用マニュアルと復旧手順をドキュメント化する

リスクマトリクスと緩和策

リスク影響度発生確率緩和策
端末故障でデータ消失定期的なオフサイトバックアップとRAID/NASの利用
共有キー流出キー交換を安全チャネルで実施、共有権限を最小化
帯域不足による業務影響初回同期は夜間に実行、帯域制御を設定
運用ミス(誤削除等)バージョニング/ごみ箱機能、有効な復旧手順

互換性と移行の注意点

  • OSサポートを確認する(特にLinuxサポートの有無)
  • 大量データを移行する場合は初回シード用の物理搬送(外付けHDDでの初期同期)を検討する
  • 企業利用ではSAML/SSOや中央管理機能の有無を確認する

1行用語集

  • P2P: ピア・ツー・ピア。中央サーバーを介さず端末同士で直接やり取りする通信形態。
  • シークレット: 共有キー。同期フォルダを特定の端末と共有するための鍵。
  • セルフホスト: ソフトウェアを自分のサーバーで運用すること。

選択フローチャート

flowchart TD
  A[モバイルアクセスが必須?] -->|はい| B[クラウド型 or セルフホストでモバイル対応]
  A -->|いいえ| C[端末間直接同期でOK?]
  C -->|はい| D[BitTorrent Sync / Resilio Sync を検討]
  C -->|いいえ| E[セルフホスト(Nextcloud等)かハイブリッド]
  B --> F[使い勝手重視ならAeroFS等]
  F --> G[チーム共有要件を確認]
  G --> H[料金・管理要件で最終決定]

ソーシャルプレビュー(提案)

OGタイトル: クラウドを使わずにファイルを同期する方法

OG説明: プライバシー重視のP2P同期からセルフホストまで、クラウドを介さないファイル同期の選び方と運用チェックリストを解説します。

短い告知文(100–200語)

クラウドに保存せずパソコン同士でファイルを同期したいですか?この記事では、BitTorrentベースのResilio Sync、AeroFS、CubbyのDirectSync、そしてセルフホスト型の選択肢について、特徴・利点・欠点・運用チェックリストをまとめました。バックアップ設計や帯域対策、セキュリティ上の注意点も解説しているので、管理者/個人問わず導入判断の助けになります。


最後に: あなたは他にクラウドを使わない同期方法を使っていますか?ぜひコメントで教えてください。

画像クレジット: Elliot Brown on Flickr

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