Windowsで「Windows Online Troubleshooting Service is disabled」エラーを修正する方法

Windows PCは時々トラブルに遭遇します。幸い、Windowsには多くの問題を自動で診断・修復するトラブルシューティング機能があります。しかし、トラブルシューティングが正しく動作せずに「Windows Online Troubleshooting Service is disabled」というエラーが出ると戸惑うことがあります。
この記事は、そのエラーを段階的に診断・修復するための詳細ガイドです。各ステップは再現性を持たせ、ホームユーザーからIT管理者まで使えるチェックリストや回避方法、代替案、簡易プレイブックを付けています。
目次
- TL;DR(要点)
- 事前準備と注意事項
- Windowsのアクティベーション状態を確認する
- グループポリシー設定を確認・変更する
- レジストリの微調整(Software PublishingのStateを書き換える)
- システムファイルの検査と修復(SFC / DISM)
- 関連するWindowsサービスの確認と起動
- Microsoft Defender ファイアウォールを一時無効にしてテスト
- 一時ファイルの削除
- クリーンブートでの検証
- Windows Updateの適用
- 代替案、プレイブック、チェックリスト、よくある落とし穴
- 受け入れ基準とテスト項目
- 1行用語集
- 要点まとめ
重要: 以下の操作のうち、特にレジストリ編集やシステム修復はシステムに影響します。先に必ずバックアップまたは復元ポイントを作成してください。
注意: 手元のWindowsエディションや管理権限によっては、一部の手順が実行できない場合があります(例: gpedit.mscはHomeエディションに標準で含まれません)。その場合は代替手順を参照してください。
事前準備
- 管理者アカウントでサインインしてください。
- 重要なデータはバックアップしてください。
- レジストリを編集する前にレジストリのエクスポート、またはシステムの復元ポイントを作成してください。
レジストリのバックアップ(簡易):
- 「Win + R」を押して「regedit」と入力し、レジストリエディタを起動します。
- 編集 → エクスポート を選び、全体(コンピューター)をエクスポートします。安全のため外部ドライブに保存してください。
システム復元ポイント作成(簡易):
- スタートから「復元ポイントの作成」と検索して開く。
- 「作成」をクリックして、分かりやすい名前を付けて保存します。
1. Windowsのアクティベーション状態を確認する
原因: Windowsがアクティブ化されていないと、一部オンライン機能や診断機能が制限されることがあります。
手順:
- スタートメニューを開き、「設定」を起動します。
- 左のメニューで「システム」を選び、「アクティベーション」をクリックします。
表示が「アクティブではありません」となっている場合は、正規のプロダクトキーまたはデジタルライセンスでアクティベーションしてください。アクティベーションに問題がある場合はMicrosoftサポートに連絡するか、別の修復手順を試してください。
2. グループポリシー設定を確認する
原因: 組織や誰かがグループポリシーでオンライン診断を無効にしていると、WOTS(Windows Online Troubleshooting Service)が利用できません。
注意: gpedit.mscはWindows Pro / Education / Enterpriseで利用可能です。Homeエディションではgpeditが無いので、後述のレジストリ代替手順を使用してください。
手順 (gpedit.mscが利用できる場合):
「Win + S」を押して検索を開きます。
「gpedit.msc」と入力して Enter を押します。
左ペインで以下に移動します:
Computer Configuration > Administrative Templates > System > Troubleshooting and Diagnostics > Scripted Diagnostics
右ペインの「Allow users to access online troubleshooting content on Microsoft servers from the Troubleshooting Control Panel (via the Windows Online Troubleshooting Service – WOTS)」ポリシーをダブルクリックします。
「有効」を選び、「適用」→「OK」をクリックします。
レジストリで同等の設定を行う(Home向け代替):
- キー: HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Policies\Microsoft\Windows\ScriptedDiagnostics
- 値: AllowOnlineTroubleshooting(DWORD)= 1
値が存在しない場合は、新規DWORD(32ビット)を作成して1に設定してください。レジストリを編集する際は、必ず事前バックアップを忘れないでください。
3. レジストリの微調整(Software PublishingのStateを書き換える)
原因: ソフトウェア公開(Software Publishing)関連の信頼状態が不正になると、オンライン診断の呼び出しやアクセスがブロックされることがあります。
重要: レジストリ操作は慎重に行ってください。必ずバックアップと復元ポイントを作成してください。
手順:
「Win + X」を押してメニューを表示し、「ファイル名を指定して実行(Run)」を選びます。
regedit と入力して Enter を押します。
UACが表示されたら「はい」を選びます。
左ペインで次のキーに移動します:
HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\Windows\CurrentVersion\WinTrust\Trust Providers\Software Publishing
右ペインで「State」DWORDをダブルクリックします。
値データに 23c00 を入力して「OK」をクリックします。
レジストリエディタを閉じ、PCを再起動します。
補足: もし State の値が既に存在するが別の値になっている場合は、元の値をエクスポートして保管しておきましょう。問題が悪化した場合はエクスポートしておいた.regで復元できます。
4. システムファイルの検査と修復(SFC / DISM)
原因: 破損したシステムファイルは多くのWindows機能を阻害します。SFCやDISMはそれらを検出・修復できます。
推奨手順:
管理者としてPowerShellまたはコマンドプロンプトを起動します(スタートを右クリック→Windows PowerShell (管理者))。
次のコマンドを順に実行します:
sfc /scannow
- SFCは保護されたシステムファイルをスキャンし、不整合があれば可能な限り修復します。
- SFCで問題が解決しない場合は、DISMでイメージを修復します(インターネット接続が必要です):
DISM /Online /Cleanup-Image /RestoreHealth
- DISMが完了したら、再度 sfc /scannow を実行して最終チェックを行います。
ヒント: ログは C:\Windows\Logs\CBS\CBS.log に出力されます。詳細を確認したい場合は管理者権限でログを参照してください。
5. 関連するWindowsサービスの確認と起動
原因: BITSや診断サービス、WMIなどのサービスが停止していると、オンライン診断は機能しません。
手順:
- Win + R を押して services.msc を実行します。
- 次のサービスを検索し、状態が「実行中」かを確認します。停止している場合は、右クリック→開始を選びます。
- Background Intelligent Transfer Service (BITS)
- Cryptographic Services
- Delivery Optimization
- Diagnostic Execution Service
- Diagnostic Policy Service
- Diagnostic Service Host
- Diagnostic System Host
- Windows Management Instrumentation (WMI)
- Windows Modules Installer
- Windows Time
コマンドで確認・起動する例(管理者PowerShell):
# サービスの状態を確認
Get-Service -Name BITS, Winmgmt, cryptsvc, UsoSvc | Format-Table -AutoSize
# サービスを開始する
Start-Service -Name BITS
Start-Service -Name Winmgmt
補足: サービスが「開始できない」や「すぐ停止する」場合は、イベントビューア(Event Viewer)でエラーコードや詳細を確認してください。依存関係の問題や権限の問題が原因であることが多いです。
6. Microsoft Defender ファイアウォールを一時無効にしてテスト
原因: ファイアウォール設定がオンライン診断の通信を遮断している可能性があります。
手順(テスト用に一時無効化):
- 「Windows セキュリティ」アプリを開きます。
- 左のメニューから「ファイアウォールとネットワーク保護」を選択します。
- 「ドメインネットワーク」→Microsoft Defender ファイアウォールのスイッチをオフにします。プライベート・パブリックも同様にテストします。
重要: テスト後は必ずファイアウォールをオンに戻してください。ファイアウォールを長期間無効にすることは推奨されません。
7. 一時ファイルの削除
原因: 一時ファイルやキャッシュが破損していると、診断ツールやダウンロードが失敗することがあります。
手順:
- ストレージ設定から「一時ファイル」を開き、不要なファイルを削除します。
- または、Win + R で %temp% と入力し、Tempフォルダ内のファイルを削除します(実行中のアプリケーションが使用しているファイルは削除できません)。
補足: ディスククリーンアップやサードパーティのクリーナーを使う前に、どのファイルを削除するかを確認してください。
8. クリーンブートでの検証
目的: サードパーティソフトやサービスが干渉しているかを切り分けるため、最小構成でWindowsを起動して問題を再現します。
手順(簡潔):
- 「msconfig」を実行して「システム構成」ユーティリティを開きます。
- 「サービス」タブで「Microsoftのサービスをすべて隠す」にチェックを入れ、残りのサービスをすべて無効にします。
- 「スタートアップ」タブ(またはタスクマネージャーのスタートアップ)でスタートアップ項目を無効にします。
- 再起動して問題の再現を試みます。
クリーンブートで問題が発生しなければ、無効にしたサービスやアプリのうちどれかが原因です。1つずつ有効にして再起動し、原因を特定してください。
9. Windows Updateの適用
原因: 未適用の更新に、既知の不具合修正が含まれていることがあります。
手順:
- Win + I で設定を開き、「Windows Update」を選びます。
- 「更新プログラムのチェック」をクリックして、利用可能な更新をすべて適用します。
代替案・最終手段
- システムの復元: 問題が起きる前の復元ポイントがあれば、そこへ戻すのが最も確実です。
- 修復インストール(上書きインストール): 個人データを残したままWindowsを再インストールする方法です。時間はかかりますが、システムの深刻な破損を修正できます。
- クリーンインストール: 最終手段。データは必ずバックアップしてから実行してください。
トラブルシューティングプレイブック(短いSOP)
目的: 手順を順に実行して効率よく原因を特定するためのチェックリスト。
ステップ:
- 管理者権限でログイン、重要データをバックアップ。
- アクティベーション状態を確認。
- サービス(BITS, WMI, Diagnostic Services)を確認・起動。
- グループポリシー(またはレジストリ)でオンライン診断を有効化。
- レジストリの Software Publishing State を 23c00 に設定(必要時)。
- SFC /scannow → DISM /RestoreHealth を実行。
- 一時ファイルを削除し、クリーンブートで再試行。
- ファイアウォールを一時無効化して再試行。
- Windows Update を適用し、再起動。
- 再発する場合はシステム復元または修復インストールを検討。
役割別チェックリスト:
ホームユーザー:
- 復元ポイントを作成
- sfc /scannow と DISM を試す
- 一時ファイルを削除
- ファイアウォールを一時的にオフにして検証
IT管理者:
- グループポリシーを確認して組織方針を検証
- イベントログから関連エラーを抽出
- デバイス管理/更新ポリシーを確認
サポート担当:
- ユーザーの手順を再現しログ(CBS, DISM)を収集
- ネットワークフィルタやプロキシ設定を確認
再現テスト/受け入れ基準
- トラブルシューティングツールを起動して、エラー「Windows Online Troubleshooting Service is disabled」が表示されないこと。
- 関連サービス(BITS、Diagnostic Policy Service等)が実行中であること。
- SFC/DISMで修復後、エラーが再発しないこと。
テスト手順(例):
- 再起動後、管理者としてトラブルシューティングを実行する。
- ログにエラーが出ていないことを確認する(イベントビューア、CBS.log)。
- 1週間ほど通常運用しても同様のエラーが発生しないこと。
いつこの方法は効かないか(ケーススタディ)
- 組織のポリシーで明示的にオンライン診断を永続的にブロックしている場合。IT部門の方針が原因なら、管理者に解除を依頼してください。
- OS自体の深刻な破損やハードウェア故障(ディスク故障、メモリエラー)がある場合。ハードウェア診断を優先すべきです。
- ライセンス違反や不正なイメージを使用している場合は、正規のサポートが受けられないことがあります。
簡易意思決定フロー(Mermaid)
flowchart TD
A[問題発生: トラブルシューティングが失敗] --> B{Windowsはアクティブか}
B -- いいえ --> C[アクティベーションを行う]
B -- はい --> D{サービスは実行中か}
D -- いいえ --> E[サービスを開始]
D -- はい --> F{gpeditまたはレジストリで無効化されているか}
F -- はい --> G[ポリシーを有効化]
F -- いいえ --> H[SFC/DISMで修復]
H --> I{解決したか}
I -- はい --> Z[完了]
I -- いいえ --> J[クリーンブート/復元/修復インストール]
J --> Z
1行用語集
- WOTS: Windows Online Troubleshooting Service の略。Microsoftのオンライン診断サービス。
- SFC: System File Checker。保護されたシステムファイルを検査・修復するツール。
- DISM: Deployment Image Servicing and Management。Windowsイメージを修復するツール。
- BITS: Background Intelligent Transfer Service。Windowsのバックグラウンドデータ転送サービス。
- WMI: Windows Management Instrumentation。管理情報と管理操作のフレームワーク。
- UAC: User Account Control。管理者権限に関する確認プロンプト。
要点まとめ
- まずはWindowsのアクティベーション状態と関連サービスの稼働を確認してください。
- Homeエディションではgpedit.mscが使えないため、レジストリで同等の設定を行ってください。
- レジストリ編集やシステム修復を行う前に必ずバックアップと復元ポイントを作成してください。
- SFCとDISMは多くのシステム関連トラブルを修復できます。ログを保存し、必要ならサポートに提供してください。
この記事のチェックリストを順に実行すれば、ほとんどの「Windows Online Troubleshooting Service is disabled」エラーを解消できます。もしそれでも解決しない場合は、システムの修復インストールやハードウェア診断、またはMicrosoftサポートへの問い合わせを検討してください。