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WikiLeaks:新『Grasshopper』流出とCIAのWindows向けマルウェア

1 min read セキュリティ 更新されました 19 Oct 2025
WikiLeaks:Grasshopper流出とCIAのWindowsマルウェア
WikiLeaks:Grasshopper流出とCIAのWindowsマルウェア

WikiLeaksのGrasshopper流出文書を示す画像

概要

WikiLeaksはVault7シリーズの一部として、CIAに関連するとされる27件の文書を公開しました。これらの文書は、同庁がMicrosoft Windowsを標的にしたマルウェア作成のために内部向けのCLI(コマンドラインインターフェース)フレームワークを開発していたことを示唆しています。

用語定義: CLI(コマンドラインインターフェース)— テキスト入力で操作するソフトウェアの操作方法。

公開資料の要点:

  • フレームワーク名は「Grasshopper」。
  • ターゲットのOSやアンチウイルス製品に合わせてカスタムのマルウェアインストーラを生成できる。
  • 生成物はWindowsインストーラ形式で配布され、標的端末で実行するとカスタムペイロードが永続化される仕組み。
  • 2012年から2015年にかけて使用された可能性があるとWikiLeaksは記載しています。

Grasshopperとは(概念と仕組み)

Grasshopperは、複数のインストーラ構成要素を組み合わせて動作するフレームワークです。ドキュメントは内部マニュアルの形式で、スパイやエージェント向けに書かれた使用手順を含むとされています。

仕組み(ミニ・メソドロジー):

  1. ターゲット環境の情報(OSのバージョン、インストール済みアンチウイルス)を入力する。
  2. Grasshopperが必要なインストーラコンポーネントを選択してスタックを作成する。
  3. 各コンポーネントが順にペイロードに作用し、最終的に永続化と実行を目指すインストーラを生成する。
  4. 生成したインストーラを標的で実行するとペイロードがデプロイされる。

ドキュメントは、インストーラは「1つ以上のインストーラコンポーネントのスタック」であり、各コンポーネントが直列でペイロードに作用して最終的に永続化させる、と記述しています。

永続化と「Stolen Goods」モジュール

一部の永続化メカニズムは「Stolen Goods(盗用品)」と呼ばれ、世界中のサイバー犯罪者が開発したマルウェア部品を適応・改変して使った例が示されています。文書はロシア系のマルウェア「Carberp」を例に挙げ、元コードを大幅に改変して利用したと述べています。

重要な引用: 「永続化の手法とインストーラの一部は取り出して我々のニーズに合わせて変更した。元のCarberpのコードの大部分は大幅に改変されており、未改変のまま残った部分は非常に少ない。」

証拠と使用期間について

ドキュメントはこれらのツールがいつ、どの程度使われたかを明確に断定していません。WikiLeaksは2012年から2015年に使用された可能性を指摘していますが、外部からの独立検証は示されていません。既に公開されたVault7の他バッチには次のものがあります:

  • Year Zero: ハードウェアやソフトウェア向けのエクスプロイトを含む。
  • Dark Matter: iPhoneやMac向けのエクスプロイトに焦点。
  • Marble: 解析回避(アンチ・フォレンジック)を目的としたコードのソース例。

リスク評価と対策

以下は発見された設計の性質に基づく一般的なリスク評価と軽減策です。公開資料からの直接的証拠以外は新たな事実の創出を避け、考えうるリスクとして整理しています。

リスクマトリクス:

リスク影響発生確率(質的)推奨対策
カスタムマルウェアによる侵害多層防御、EDR導入、サンドボックス実行
既存のマルウェアコードの改変利用IOC共有、シグネチャ依存排除、行動検知
難読化・パッキングによる検知回避メモリ解析、振る舞い分析、ヒューリスティック検出

推奨対策(運用面):

  • EDR(エンドポイント検出・対応)の展開とチューニング。ログの長期保存と相関解析を行う。
  • アップデートとパッチ管理を徹底する。特にOSと主要ソフトウェア。
  • サンドボックスでの実行テストを標準化し、不審なインストーラは隔離して解析する。
  • インテリジェンス共有(ISACやCERTを介したIOC共有)を行う。

いつこの手法は失敗するか(反例)

Grasshopperや類似フレームワークの成功は、標的環境の情報収集とデプロイ手段に依存します。以下は失敗シナリオの例です。

  • 標的が最新のパッチと挙動ベースの検出を備え、未署名のインストーラを実行しない場合。
  • ネットワーク分離と厳密なアプリケーションホワイトリスティングがある場合。
  • EDRが初期のランタイム行為を捕捉し、通信遮断やプロセス終了で阻止した場合。

これらは万能の防御ではありませんが、組み合わせて使うことで成功確率を下げられます。

防御の代替アプローチ

技術的対策:

  • 振る舞い検知(ヒューリスティック)とサンドボックスの併用。
  • メモリ解析やプロセスのサプライチェーン検査で難読化されたペイロードを検出。
  • アプリケーションのコード署名ポリシー強化。

運用的対策:

  • 最小権限の適用。管理者権限での実行を制限。
  • ソフトウェア供給元の検証とサプライチェーンリスク評価。
  • インシデント対応手順と定期演習の実施。

役割別チェックリスト

CISO / 経営層:

  • 重要資産の優先順位付けと保護予算の確保。
  • インテリジェンス共有チャネルへの参加。

IT管理者:

  • パッチ管理の監査と定期レポート。
  • EDRおよびログ収集の健全性確認。

インシデントレスポンダー:

  • 不審インストーラ発見時の隔離手順を確認。
  • メモリダンプ、ネットワークキャプチャの取得と保存。

1行用語集

Grasshopper: 環境に応じたカスタムWindowsインストーラを生成するCLIフレームワーク。

まとめ

公開された文書は、CIAとされる組織がWindows向けに高度に適応可能なマルウェア生成フレームワークを設計していた可能性を示しています。使用の実態や範囲は明確ではありませんが、文書で示された設計方針は検知回避や既存マルウェアの改変利用といった特徴を持ちます。組織は多層防御と行動ベース検出、インテリジェンス共有を強化することでリスクを軽減できます。

重要: 本記事は公開された文書の記述に基づく解説です。文書の出自や使用実態については独立した検証が必要です。

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