VMware Workstation 17 Player の新機能と Windows 11 対応アップグレード手順

概要(何が変わったか)
VMware Workstation 17 Player の主要な改善点は次のとおりです。
- TPM(Trusted Platform Module)チップのエミュレーションに対応し、Windows 11 の TPM 要件を満たせます。
- 仮想マシンのディスクや TPM 関連データを選択的に暗号化できる新しい暗号化オプションを導入しました。
- セキュアブートを仮想マシンで有効化できるようになり、最新の OS をより実機に近い形で検証できます。
- 自動起動(ホスト起動時に仮想マシンを自動で立ち上げる)オプションを追加。
- サポートされるゲスト OS の範囲に最新の Ubuntu、Fedora、Debian のリリースが追加されました。
重要: Windows 7 ホストはサポート対象外になっており、ホスト OS は Windows 8 以降が必要です。
だれがこの記事を読むべきか
- Windows 11 を仮想環境で試したい一般ユーザー・開発者
- システム管理者で仮想化環境を管理する担当者
- 既存の VMware Workstation Player を最新版に更新したい人
主要な用語(1行定義)
- TPM: セキュリティキーの保護などに使われるハードウェアベースのモジュール。
- セキュアブート: 起動時に署名済みのブートローダのみを許可する仕組み。
- VMware Tools: 仮想マシン内で動作するユーティリティ群。パフォーマンスや機能互換性を向上させる。
目次
- 新機能の詳細
- インストール/アップグレード前の確認事項
- Windows 11 ホストでのインストール手順(Winget を使用)
- 仮想マシン内で VMware Tools を再インストールする手順
- 互換性と移行のヒント
- セキュリティとプライバシーの留意点
- 役割別チェックリスト
- 決定フローチャート(Mermaid)
- まとめ
新機能の詳細
TPM エミュレーション
VMware Workstation 17 Player は仮想 TPM を提供します。これにより、Windows 11 やその他の OS が要求する TPM 要件を仮想環境で満たせます。実機の TPM と同等のハードウェアセキュリティを完全に再現するわけではありませんが、OS インストーラや一部のセキュリティ機能の検証には十分です。
仮想マシンの暗号化オプション
- TPM 関連ファイルのみ暗号化
- 仮想ディスク全体を暗号化
用途に応じて選択できます。ディスク全体を暗号化すると運用負荷(キー管理やバックアップ手順の見直し)が増えるため、運用方針に合わせて選んでください。
その他の改善点
- サポート対象ゲスト OS の追加(Ubuntu、Fedora、Debian の最新リリース)
- ホスト起動時に仮想マシンを自動起動するオプション
インストール/アップグレード前のチェックリスト
重要: 作業前に必ず以下を確認・実施してください。
- ホスト OS が Windows 8 以降であることを確認する(Windows 7 は不可)。
- 重要な仮想マシンはバックアップ(スナップショットやエクスポート)を取得する。
- 管理者権限を持つアカウントで作業する。
- ネットワークポリシーやウイルス対策がインストールをブロックしないよう一時的に設定を確認する。
Windows 11 上での VMware Workstation 17 Player のインストール(Winget 使用)
以下は Microsoft Store 経由で Winget を使ってインストールする手順です。
手順
管理者権限のコマンドプロンプトを開く:
- Win + R を押して「ファイル名を指定して実行」を開きます。
- 「cmd」と入力し、Ctrl + Shift + Enter を押して管理者として起動します。
Winget で VMware のエントリを検索します。
winget search VMware
検索結果から VMware Workstation Player のバージョン 17.0.1(または公式に示された最新版)の ID を確認してコピーします。
次のコマンドでインストールします(ID を使用する場合は適宜置き換え):
winget install VMware.WorkstationPlayer
- ダウンロードとインストールが自動で進行します。インストーラ側での追加操作が不要な場合が多いですが、画面の指示が出た場合は従ってください。
- インストールが完了したら、コマンドプロンプトを閉じます。
重要: 管理者権限で実行しないとインストールに失敗する可能性があります。
仮想マシン内で VMware Tools を再インストールする手順
新しい Workstation に合わせて VMware Tools も更新が必要です。古いツールはアンインストールしてから新しいものをインストールしてください。
手順
- VMware Workstation から対象の仮想マシンを起動します。
- 仮想マシン内の Windows で Win + R を押し、「appwiz.cpl」と入力して Enter を押します(プログラムと機能を開く)。
- 一覧から VMware Tools を選択してアンインストールします。完了後、仮想マシンを再起動して変更を反映させます。
- 仮想マシンにログインし、VMware Workstation の上部メニューから「Player > Manage > Install VMware Tools」を選択します。これで ISO イメージが自動マウントされます。
- マウントされたドライブ内のセットアップを実行し、指示に従ってインストールします。
- インストール後、仮想マシンを再起動して VMware Tools の機能を有効にします。
注意: VMware Tools のバージョンが古いままでは、ドラッグ&ドロップや画面解像度自動調整、共有フォルダなどの機能が正しく動作しない場合があります。
互換性と移行のヒント(マトリクス)
項目 | 推奨/可否 | 備考 |
---|---|---|
Windows 7 ホスト | 非対応 | Workstation 17 は Windows 8 以降が必要 |
Windows 8/10/11 ホスト | 対応 | 管理者権限でのインストール推奨 |
最新の Ubuntu/Fedora/Debian ゲスト | 対応 | ゲスト追加ツールは各ディストリ要件に準拠 |
TPM を必要とする OS(例:Windows 11) | 対応(仮想 TPM) | 一部の高度なハードウェア依存機能は実機と差異あり |
役割別チェックリスト(運用向け)
システム管理者:
- バックアップとエクスポートを実施
- インベントリ上の VM をリストアップし、優先度を決定
- 暗号化ポリシーとキーローテーション手順を定義
開発者/テスター:
- 新しい VM イメージでテストスイートを実行
- セキュアブートや TPM に依存する機能の動作確認
エンドユーザー:
- 作業中のデータは事前に保存・同期
- インストールは管理者と連携して実施
決定フローチャート(アップグレードすべきかの判断)
flowchart TD
A[現在の VMware バージョンを確認] --> B{ホストは Windows 8 以降か}
B -- いいえ --> C[アップグレード不可: ホストOSを更新]
B -- はい --> D{仮想環境で Windows 11 を使用する予定か}
D -- はい --> E[Workstation 17 へアップグレードを推奨]
D -- いいえ --> F[現行のまま運用可。ただしセキュリティ更新を確認]
E --> G[バックアップを取得し、作業を実行]
セキュリティとプライバシーの留意点
- 仮想 TPM は実機 TPM と異なり管理側でデータを復元可能な設計のことがあります。機密性の高い運用では、暗号キー管理ポリシーを厳格にしてください。
- 仮想ディスク全体を暗号化する場合、バックアップの暗号化・リストア手順を事前に検証してください。
- 転送中や保管中のイメージに個人データが含まれる場合は、組織のプライバシーポリシーや GDPR 等の法規制に従いマスキングや削除を検討してください。
代替アプローチといつ使うか
- 軽量で単純なテスト環境のみ必要な場合: 他のハイパーバイザ(Hyper-V、VirtualBox)で代替検討。ただし TPM/セキュアブート のサポート状況を事前確認。
- 本番検証やハードウェア依存の厳密な検証が必要な場合: 実機または専用のセキュア検証環境を使用。
ミニ手順(要約)
- ホスト要件を満たしていることを確認(Windows 8 以降)。
- 仮想マシンをバックアップする(スナップショット/エクスポート)。
- 管理者権限で Winget を使い Workstation 17 をインストール。
- 仮想マシンの VMware Tools を古いものはアンインストールしてから新規インストール。
- 必要に応じて仮想 TPM とセキュアブートを有効化して動作確認。
よくある失敗例/回避策
- 失敗: 管理者権限なしでインストールを開始してエラーになる。→ 対策: 管理者としてコマンドプロンプトを実行する。
- 失敗: VMware Tools を更新せずに各種機能が動作しない。→ 対策: 旧ツールはアンインストールしてから再インストール。
- 失敗: 暗号化後のバックアップを復元できない。→ 対策: 暗号キー管理とリストア手順を事前に検証する。
まとめ
VMware Workstation 17 Player は仮想 TPM とセキュアブート対応により、Windows 11 や最新の Linux ディストリビューションを仮想環境で試験・開発するための現実的な選択肢になりました。アップグレード前のバックアップと VMware Tools の更新を忘れずに行えば、既存の仮想マシンやワークフローを大きな問題なく移行できます。
重要: Windows 7 ホストは非対応です。ホスト OS のアップデートが必要な場合は計画的に進めてください。
まとめの要点:
- TPM とセキュアブートが仮想化で利用可能になった。
- Workstation 17 は Windows 8 以降のホストが必要。
- アップデート時は必ずバックアップと VMware Tools の再インストールを行う。