MacでUSBが認識されないときのトラブルシューティング完全ガイド

USBは今なおファイル移動やバックアップで広く使われています。大切なファイルをUSB経由でMacに移したい場面は多く、しかし「USBドライブがMacに表示されない」「認識されない」といったトラブルに遭遇すると作業が滞ります。本記事では、原因の切り分けから具体的対処、最終手段のデータ復旧やフォーマットまで、安全に進めるための実務的な手順とチェックリストをまとめます。
重要: 以下の操作はデータ損失リスクを伴う場合があります。特にフォーマットや修復操作を行う前に、可能であればドライブのイメージバックアップ(クローン)を取得してください。
よくある原因と短い説明
- 不適切な接続: コネクタの差し込み不良やアダプタ、ハブの問題。
- USBドライブの破損: フラッシュメモリ自体の物理故障や内部ファイルシステムの破損。
- USBポートの障害: ポートの物理損傷、給電不足、汚れ。
- macOSの不具合: カーネル拡張、ドライバ、ファームウェア、SMC/PRAMの問題。
- ウイルス感染: ドライブ自体にマルウェアがある場合、macOSが読み込まないことがある。
- 電源オフ/スイッチ: 一部の外付けドライブには電源スイッチや外部電源が必要。
重要な用語(1行定義):
- Finder: macOSのファイルブラウザ。サイドバーとデスクトップ表示設定で外部ディスクの表示を制御します。
- Disk Utility(ディスクユーティリティ): ドライブの検査・修復・フォーマットを行うmacOS標準アプリ。
- Terminal: macOSのコマンドライン。diskutilなどの低レベル操作に使います。
すぐできるチェックリスト(ユーザー向け)
- 別のUSBポートで試す。
- 別のMacやPCで認識されるか確認する。
- ハブやアダプタを外して直接接続する。
- Macを再起動する。
- Finderの設定で外部ディスクが表示されるようになっているか確認する。
- デスクトップ表示設定で外部ディスクが表示されるようになっているか確認する。
手順:8つの方法(詳細)
方法1: 接続を変えて切り分け
- Macを再起動してみる。
- USBを一度抜き、別のUSBポートに差し込む。USB-Cハブや延長ケーブルが原因のことが多いので直接接続する。
- 別のMac/PCに接続して動作確認。別のマシンで認識されればドライブは生きている可能性が高い。
- SDカードの場合はカードリーダーやスロットを交換してみる。
注意: USBメモリが物理的に壊れていると、差し替えでも認識されないことがあります。
方法2: Finderの設定を確認する
- Finderを開く → メニューから「環境設定…」を選択。
- サイドバータブを開く(Sidebar)。「ロケーション」や「外部ディスク(External disks)」の項目にチェックを入れる。
- Finderウィンドウのサイドバーに外部ディスクが表示されるか確認する。
ヒント: Finderの環境設定はmacOSのバージョンにより表示文言が異なる場合があります。表示されない場合は次の方法へ。
方法3: デスクトップ表示設定の確認
- Finder → 環境設定 → 一般タブを選ぶ。
- 「外部ディスクをデスクトップに表示する(External disks)」にチェックを入れる。
- デスクトップにアイコンが現れるかを確認する。
方法4: USBポートのリセット(SMC / NVRAM の簡易操作)
SMC(電源管理)やNVRAM/PRAMのクリアは、USB電源やポートの挙動を改善することがあります。機種やチップ(Intel / Apple Silicon)で手順が異なります。
Intel Mac(T2チップがない一般的なノート型)
- Macをシャットダウン。
- MagSafeや電源ケーブルを外す(デスクトップの場合は電源を切る)。15秒待つ。
- 電源を入れ直す。
- 起動時にCommand + Option + P + Rを20秒ほど押し、NVRAMをリセットする(音が鳴る機種は2回目の起動音で放す)。
Apple Silicon搭載Mac
- SMC/NVRAMの手動リセットは不要。Macをシャットダウンして数秒後に再起動するだけで同等の効果がある場合があります。
追加ステップ:
- 反応しないアプリを強制終了: Command + Option + Esc で不応答プロセスを終了させる。
- USBを再接続して、スリープ→復帰で変化がないか確認する。
注意: 手順は機種やmacOSバージョンによって変わるため、メーカーの公式ガイドを確認してください。
方法5: Terminalを使った切り分け
Terminalからディスク一覧や排出を試行し、OSレベルで認識されているか確認します。以下は代表的なコマンドです。
# 接続されているディスク一覧を表示
diskutil list
# 例: disk2 をアンマウント/排出する
diskutil eject disk2
# 再度一覧を確認して、消えたか確認
diskutil list
手順:
- Finder → アプリケーション → ユーティリティ → Terminal を開く。
diskutil list
を実行して、該当ドライブが表示されるか確認する。- 認識されていれば、
diskutil info diskX
(X は番号)で情報を取得できる。 - ドライブが見つかったら一度
diskutil eject diskX
を実行し、再接続して挙動を観察する。
問題が続く場合は、Console(ユーティリティ)で接続時のログ(Errors and Faults 等)を確認し、USBコントローラやドライバ関連のメッセージを探します。
方法6: システム情報でUSB接続を確認する
- アプリケーション → ユーティリティ → システム情報(System Information)を開く。
- 左ペインで「USB」を選ぶ。
- 対応するUSBバスに接続デバイスが一覧表示されるか確認する。
ここでデバイス名が表示されるがマウントされない場合は、ファイルシステムの問題(不正なフォーマットや破損)である可能性が高いです。
方法7: ディスクユーティリティ(First Aid)で修復
- アプリケーション → ユーティリティ → ディスクユーティリティを開く。
- 左側で該当の外部ドライブを選択する(表示されていない場合は上の表示メニューで「すべてのデバイスを表示」)。
- 「First Aid(ファーストエイド)」をクリックして「実行」する。
- 修復が完了したらアンマウント→再接続を試みる。
注意: First Aidで修復できない場合、次のステップは読み取り専用でデータを救出することです。修復操作を続けるとファイルがさらに破損することがあります。
方法8: macOSとファームウェアのアップデート
古いOSや未適用のファームウェアが原因でドライバやUSBコントローラが適切に動作しないことがあります。システム設定 → ソフトウェア・アップデートで最新バージョンに更新してください。
更新後に再起動して状況が改善するか確認します。
データが重要な場合の安全な復旧フロー(ミニメソドロジー)
- 物理的な切り分け: 別ポート・別Macで動作確認。
- OSレベルの検出確認:
diskutil list
とシステム情報で存在を確認。 - 読み取り専用アクセス: マウントせずにツールで読み取りを試みる(商用の復旧ソフトを使う場合も読み取り専用モードが望ましい)。
- イメージ取得: ddや市販ツールでドライブ全体のイメージを作成(可能なら)。
- イメージから解析/復旧を行う。
注意: 自力でイメージを取る際は誤操作で上書きしないように細心の注意を払ってください。
いつ自分でやるべきで、いつ専門に依頼するか(判断基準)
- 自分で対処する: ドライブが物理的に損傷しておらず、
diskutil
で識別される、またはFinderに表示される場合。 - 専門業者に依頼: ドライブが物理的に回転しない、焦げ臭い、初期化に失敗している、重要かつ唯一のバックアップがそのドライブしかない場合。
決定フロー(Mermaid)
以下は簡易的な意思決定フローです。
flowchart TD
A[USBを接続したが認識されない] --> B{別ポートで動作するか}
B -- はい --> C[Finder/デスクトップ設定を確認]
B -- いいえ --> D{別PCでは動作するか}
D -- はい --> E[Mac側の問題(SMC/NVRAM/OS)を修正]
D -- いいえ --> F{システム情報でデバイスが見えるか}
F -- はい --> G[ディスクユーティリティでFirst Aid実行]
F -- いいえ --> H[物理損傷の可能性→専門業者へ相談]
役割別チェックリスト
一般ユーザー:
- 再起動、別ポート、別PC、Finder/デスクトップ表示確認、ディスクユーティリティのFirst Aid実行。
IT担当者:
- SMC/NVRAMリセット、Consoleログ解析、Terminalでのdiskutil操作、ファームウェア更新、必要ならクローン取得と専門ツールで復旧。
リスクマトリクス(主なリスクと対策)
- 誤ったフォーマット(高リスク) → 対策: フォーマット前に必ずバックアップ/イメージを取得。
- 物理損傷による追試行(中〜高) → 対策: 自力での頻繁な抜き差しを避け、専門に相談。
- マルウェア感染(中) → 対策: 別の隔離されたマシンで読み取り専用で解析、ウイルス対策ソフトでスキャン。
テストケース/受入基準
- 受入基準1: USBを接続してから30秒以内にFinderまたはデスクトップにアイコンが表示される。
- 受入基準2:
diskutil list
に該当デバイスが列挙され、diskutil info
で容量や識別子が確認できる。 - 受入基準3: ディスクユーティリティのFirst Aidがエラーなしで完了する、または読み取り専用でデータの抽出が可能であること。
これらの基準を満たさない場合は、データ復旧ツールの使用や専門サービスの依頼を検討してください。
代替アプローチと注意点
- 電源付きUSBハブを利用する: 一部の外付けHDDはUSBバスパワーでは足りないため、外部電源付きハブで安定化する。
- 別のファイルシステムを試す: Windowsでしか読めないNTFSのUSBを使っている場合、macOSは標準で読み取り専用になる(サードパーティのNTFSドライバで書き込み可能にする方法あり)。
- ハードウェアの交換: コネクタ部分が壊れているUSBメモリは、基板修理かチップを外してICリーダーで読み取る必要がある(専門業者向け)。
ローカル(日本)向けの注意点
- 修理依頼する場合は、データ復旧専門の業者に事前に相談し、費用見積もりと成功率の説明を受けること。
- 法人利用で機密データがある場合は、業者の秘密保持(NDA)や廃棄証明の有無を確認する。
セキュリティとプライバシーの簡単な注意
- 不明なUSBは接続しない。マルウェア感染のリスクがあります。
- データ復旧を第三者に依頼する場合、機密情報の取り扱い方を明確にしてください。
まとめ
本稿ではMacでUSBが認識されない場合に試すべき基本手順(再起動、別ポート、Finderとデスクトップ設定の確認)、Terminalやシステム情報、ディスクユーティリティを用いた詳細な切り分け、SMC/NVRAMリセット、OSアップデート、そしてデータを安全に扱うための復旧フローを示しました。まずはリスクの少ない手順から順に実行し、状況が改善しない場合は専門家へ相談してください。
重要: ドライブの初期化(フォーマット)は最終手段です。重要データがある場合は、まずイメージ取得と読み取り専用での復旧を優先してください。
短い提案: どうしてもフォーマットが必要で、データを失いたくない場合は、専門のデータ復旧ソフトやサービスの利用を検討してください(Disk Drillなどの市販ソフトは読み取り専用モードを提供することがあります)。