Chromeを常にシークレットモードで起動するためにコンテキストメニューにショートカットを追加する方法

概要
Google Chromeのシークレット(Incognito)モードは、ローカルの閲覧履歴、クッキー、フォーム送信データを保存しないモードです。既定のホットキーは Ctrl + Shift + N ですが、常時シークレットで起動する「常設」オプションは用意されていません。本記事では、Windows 11のデスクトップ右クリックメニューに「Chrome Incognito」ショートカットを追加する手順を、アイコンの追加や元に戻す方法を含めて丁寧に説明します。
重要: レジストリの編集は管理者権限を必要とし、誤った変更はシステムに影響を与える可能性があります。変更前にレジストリのバックアップを作成してください。
前提条件
- Google Chromeがインストールされていること
- Chromeの実行ファイル(chrome.exe)のフルパスが分かっていること(例: “C:\Program Files\Google\Chrome\Application\chrome.exe”)
- 管理者権限でレジストリを編集できること
追加するレジストリキーの目的(簡単に)
- キー: Computer\HKEY_CLASSES_ROOT\Directory\Background\shell
- ここに新しいサブキーを作ると、デスクトップの背景(右クリック)メニューに項目を追加できます。
- 追加する “command” サブキーの既定値にChrome実行ファイルのパス+ -Incognito を入れると、そのコマンドが実行されます。
デスクトップ右クリックメニューにChromeシークレットを追加する手順(ステップバイステップ)
- まず、Chromeの実行ファイルのフルパスを用意します。デスクトップにChromeのショートカットがない場合は、スタートメニューからドラッグしてショートカットを作成するか、インストール先から直接パスを確認します。
- デスクトップにあるChromeショートカットを右クリックして「プロパティ」を選びます。
- 「リンク先」または「対象」欄のパスを選択してコピーします(例: “C:\Program Files\Google\Chrome\Application\chrome.exe”)。
- タスクバーの検索アイコン(虫めがね)をクリックして検索ボックスを開きます。
- 検索ボックスに regedit と入力します。
- 検索結果から「レジストリエディター」を選び、管理者権限で起動します。
- レジストリエディターで次のキーに移動します: Computer\HKEY_CLASSES_ROOT\Directory\Background\shell
- shell キーを右クリックして「新規」→「キー」を選びます。
- 新しいキーの名前を入力します。ここでは「Chrome Incognito」とします。
- 作成した「Chrome Incognito」キーを右クリックし、「新規」→「キー」を選んで、名前を command にします。
- command キーを選択した状態で、右側の (既定) 文字列をダブルクリックして編集ウィンドウを開きます。
- 値データ欄に、先ほどコピーしたChromeのフルパスを貼り付け、その後にスペースと -Incognito を追加します。最終的には以下のようになります(例):
“C:\Program Files\Google\Chrome\Application\chrome.exe” -Incognito
- [OK] をクリックして保存し、レジストリエディターを終了します。
- デスクトップの任意の場所を右クリックして「その他のオプションを表示」→従来のコンテキストメニューを開くと、追加した「Chrome Incognito」メニューが表示されます。
- 「Chrome Incognito」を選ぶと、Chromeがシークレットモードで起動します。
追加したキーを元に戻す(削除する方法)
- レジストリエディターを管理者権限で開き、次のキーに移動します: Computer\HKEY_CLASSES_ROOT\Directory\Background\shell
- 追加した Chrome Incognito キーを右クリックし、「削除」を選びます。
- レジストリエディターを閉じ、右クリックメニューから「Chrome Incognito」が消えていることを確認します。
コンテキストメニューのショートカットにアイコンを追加する(任意)
- まず、表示に適した小さなアイコン(16×16など)をICO形式で用意します。IconArchiveなどのサイトからダウンロードできます。
- レジストリエディターを開き、次のキーに移動します: Computer\HKEY_CLASSES_ROOT\Directory\Background\shell\Chrome Incognito
- 「Chrome Incognito」を右クリックして「新規」→「文字列値」を選びます。
- 文字列の名前を Icon にします。
- 追加した Icon 文字列をダブルクリックし、値データにダウンロードしたICOファイルのフルパスを入力します(例: C:\Users\YourName\Pictures\chrome16.ico)。
- [OK] をクリックして保存します。
- デスクトップ右クリックメニューをもう一度確認すると、指定したアイコンがメニュー項目に表示されます。
動作確認と受け入れ基準
- 右クリック(デスクトップの背景)→「Chrome Incognito」が表示される
- 「Chrome Incognito」をクリックするとChromeが起動し、ウィンドウの左上に「シークレット」アイコン(またはIncognitoを示す表示)が見える
- 別の通常ショートカットから起動した場合は通常モードで起動する(標準ショートカットの挙動は変わらない)
トラブルシューティング(よくある問題と対策)
- レジストリに書き込めない/アクセス拒否される: 管理者権限でレジストリエディターを実行しているか、企業管理のポリシーでキーが保護されていないか確認してください。
- メニューが表示されない: 正しいキー場所(Computer\HKEY_CLASSES_ROOT\Directory\Background\shell)に作成したか、キー名が間違っていないか確認します。
- Chromeのパスが間違っている: 実行ファイルのパスを実際のインストール先で確認し、コピーして貼り付けてください。32-bit/64-bit やユーザーごとのインストール場所によりパスが異なる場合があります。
- アイコンが表示されない: ICOファイルのパスが正しいか、ファイル形式がICOであるか確認してください。PNGは直接使えません。
代替アプローチ(状況に応じて選ぶ)
- デスクトップのChromeショートカットの「プロパティ」でリンク先に -Incognito を追加する: デスクトップから常時シークレットで起動したい場合は、この方が簡単です。
- スタートアップにその修正ショートカットを追加する: PC起動時に自動でシークレットで立ち上げたい場合は、修正したショートカットをスタートアップフォルダに入れます。
- 管理対象デバイス(企業環境)では、企業ポリシーが優先されることがあるため、IT管理者に相談してください。
- サードパーティのランチャーや右クリック拡張ツールを使う: レジストリ編集が難しい場合は、信頼できるユーティリティで同等の機能を実現できますが、追加ソフトはリスクを伴います。
いつこの手法が向かないか(反例)
- 組織の管理下にあるPCでレジストリ編集が禁止されている場合
- Chromeがポータブル版など特殊な設定でインストールされている場合
- システムポリシーやウイルス対策ソフトがレジストリの変更をブロックする場合
セキュリティとプライバシーの注意点
- シークレットモードはローカルに閲覧履歴やクッキーを残さないだけで、ネットワーク上のトラッキング(ISP、職場のネットワーク管理者、訪問先サイトなど)やダウンロードしたファイル・ブックマークは保護しません。
- ダウンロードしたファイルやローカルに保存したデータは通常どおりPC上に残ります。
- 本手順は機能上の利便性を高めるものであり、匿名化や追跡防止の万能策ではありません。
実行前チェックリスト(短縮版)
- Chromeのフルパスを確認した
- レジストリのバックアップを作成した
- 管理者権限でレジストリエディターを実行できる
- 変更後に動作確認した
1行用語集
- シークレット(Incognito): Chromeのローカル閲覧情報を保存しない一時的な閲覧モード。
まとめ
デスクトップのコンテキストメニューに「Chrome Incognito」ショートカットを追加することで、どこからでもワンクリックでChromeをシークレットモードで開けるようになります。手順はレジストリにキーを追加してコマンドを登録するだけで、必要に応じてアイコンを付けたり、簡単に削除したりできます。レジストリ編集の際は必ずバックアップと管理者権限の確認を行ってください。
重要: 本手順はWindows 11向けに説明していますが、Windows 10でも同様のキー構成で適用できます。ただし、OSのバージョンや管理ポリシーによって動作が異なる場合があります。
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