Windows 11で保護履歴が表示されない問題を修正する方法

はじめに
Windows セキュリティの「保護履歴(Protection History)」は、Windows Defender が検出した脅威とその対処内容をログとして保存します。表示できない場合は、システムファイルの破損、設定の不整合、ベータ版 OS のバグ、あるいはマルウェアによる干渉などが原因であることが多いです。
このガイドでは、まず簡単な方法から確実な修復手順まで順を追って説明します。各手順には実行上の注意と代替案、管理者向けのチェックリストや受け入れ基準も含めています。
重要: 管理者(Administrator)権限が必要な操作があります。操作前に重要なデータのバックアップをとってください。
目次
- 基本的なトラブルシュート
- 再起動
- 検出履歴ファイルの削除
- Windows セキュリティパッケージの再登録
- システムファイルの修復(SFC / DISM)
- Windows セキュリティの修復/リセット
- マルウェアスキャン
- 代替アプローチといつ失敗するか
- ロール別チェックリスト(エンドユーザー / IT 管理者)
- 手順書(SOP)短縮版
- 受け入れ基準とテストケース
- セキュリティ強化とプライバシー注意点
- よくある質問
- まとめ
基本的なトラブルシュート — ステップバイステップ
1. PCを再起動する
小さなグリッチや一時的なプロセスの競合は再起動で解決することが多いです。まずやるべき最初の手順です。
- Windowsキーを押してスタートメニューを開きます。
- 電源アイコンをクリックします。
- 「再起動」を選択します。
再起動後、Windows セキュリティを開き、左側のメニューから「保護履歴」を確認してください。
2. 検出履歴ファイルを削除して再構築させる
説明: 検出履歴のファイルが破損していると表示できないことがあります。ファイルを削除すると、Windows が次回起動時に履歴データベースを再生成します。管理者としてコマンドプロンプトを実行してください。
- Windows + S を押して検索を開きます。
- cmd と入力し、検索結果から「管理者として実行」または「開く」を選びます。
- 次のコマンドを一つずつ入力して実行します(正しい引用符とスペースを使ってください)。
del "C:\ProgramData\Microsoft\Windows Defender\Scans\mpcache*" /s > NUL 2>&1
del "C:\ProgramData\Microsoft\Windows Defender\Scans\History\Service\DetectionHistory*"
del "C:\ProgramData\Microsoft\Windows Defender\Scans\mpenginedb.db"
- コマンドプロンプトを終了し、PCを再起動します。
- Windows 検索で「ウイルスと脅威の防止」を開き、「保護履歴」を確認します。
注意: これらのファイルを削除しても、Windows は新しい履歴を再生成します。削除前にログのバックアップを取りたい場合は、該当フォルダを別場所にコピーしてください。
3. Windows セキュリティパッケージを再登録する
説明: アプリパッケージの登録情報が壊れていると、UIや履歴の読み込みに失敗します。PowerShell を管理者権限で実行して再登録します。
- Windows + S を押して検索を開きます。
- PowerShell と入力し、「管理者として実行」を選びます。
- 以下のコマンドを入力して実行します。
Get-AppxPackage Microsoft.SecHealthUI -AllUsers | Reset-AppxPackage
PCを再起動します。
再び管理者で PowerShell を開き、次を実行してアプリを再登録します。
Add-AppxPackage -Register -DisableDevelopmentMode "C:\Windows\SystemApps\Microsoft.Windows.SecHealthUI_cw5n1h2txyewy\AppXManifest.xml"
- PowerShell を閉じ、Windows セキュリティを起動して保護履歴を確認します。
注意: 企業や管理された環境では、グループポリシーやMDMが再登録を制限している場合があります。管理者に確認してください。
4. システムファイルを修復する(SFC と DISM)
説明: 破損したシステムファイルは、Windows セキュリティの機能に支障をきたします。SFC と DISM を使って修復します。管理者権限のコマンドプロンプトで実行してください。
- Windows + R を押して「ファイル名を指定して実行」を開き、cmd と入力して Enter を押します(管理者として実行する必要があります)。
- 次のコマンドを実行します。
sfc /scannow
実行後、問題が検出された場合は自動で修復を試みます。
- 続けて DISM を実行します(時間がかかることがあります)。
DISM /Online /Cleanup-Image /CheckHealth
DISM /Online /Cleanup-Image /ScanHealth
DISM /Online /Cleanup-Image /RestoreHealth
- 完了後、PCを再起動して保護履歴を確認します。
5. Windows セキュリティを修復またはリセットする
説明: Windows 11 のアプリ設定から「修復」または「リセット」操作を行うと、設定やキャッシュを初期化して問題を解決できる場合があります。
- Windowsキーを押して「システム コンポーネント設定」と入力し、開きます。
- リストから「Windows セキュリティ」を探し、右のオーバーフローアイコンをクリックします。
- 「詳細オプション」を開きます。
- 「修復」をクリックして実行します。状況によっては「リセット」を選びます。
- 操作完了後、PCを再起動して確認します。
注意: リセットを行うとアプリの設定が初期化されます。
6. マルウェアスキャンを実行する
説明: マルウェアが「保護履歴」表示に干渉している可能性があります。Windows セキュリティのフルスキャンを実行してください。
Windows + S を押して「ウイルスと脅威の防止」を検索して開きます。
「スキャン オプション」を開きます。
- 「フルスキャン」を選び、「今すぐスキャン」をクリックします。
検出された脅威は指示に従って隔離または削除してください。完了後、PCを再起動して保護履歴を確認します。
代替アプローチといつ失敗するか(カウンター例)
- シンプルな再起動で直らない場合: ファイル破損やパッケージ自体の欠落が考えられるため、SFC/DISM やパッケージ再登録に進みます。
- 企業管理下で改善しない場合: グループポリシーやエンドポイント管理(MDM/Intune)が原因で表示できないことがあります。IT 管理者に確認してください。
- ベータ版(Insider)を使用している場合: OS バグの可能性が高く、Microsoft のフィードバックハブに報告するか、正式リリース版に戻すことを検討してください。
- それでも駄目な場合: システムの復元、回復オプション、またはインプレースアップグレード(既存のファイルを保持したままWindowsを上書き)を検討します。
代替ツール: サードパーティのログ解析ツールや EDR 製品は独自のログを持っていることがあるため、Windows の保護履歴が見えない場合でも脅威の履歴を確認できます。ただし信頼できるベンダーの製品を使用してください。
ロール別チェックリスト
エンドユーザー向け(短い手順):
- 再起動を実行する
- Windows セキュリティを開き「保護履歴」を確認する
- フルスキャンを実行する
- 重要データをバックアップした上でITへ連絡する
IT 管理者向け(深いチェック):
- グループポリシー設定(Windows Defender / Microsoft.SecHealthUI 関連)を確認
- イベントビューア(Applications and Services Logs\Microsoft\Windows\Windows Defender)を確認してエラーを特定
- SFC/DISM を実行して結果をログ保存
- 必要に応じて AppX パッケージを再登録、またはインプレースアップグレードを計画
短いSOP(作業手順)
- 影響のある端末で再起動を実施。
- 表示されないことを再現し、スクリーンショットとログを収集。
- 管理者でコマンドプロンプトを開き、検出履歴ファイルを削除。
- PowerShell 管理者で Appx パッケージのリセットおよび再登録を実行。
- SFC/DISM を実行し、必要なら再起動。
- Windows セキュリティの修復/リセットを実行。
- フルスキャンを実行し、マルウェアを除去。
- 問題が残る場合はシステム復元またはインプレースアップグレードを実行。
受け入れ基準(確認項目)
- 保護履歴が「表示される」こと。
- 直近の脅威エントリが読み取れること。
- Windows セキュリティの主要 UI が正常に起動すること。
- 変更後にエラーイベントがイベントビューアに残らないこと。
テスト方法: 上記のリストを実施後、3回の再起動を含めて保護履歴が一貫して表示されるか確認してください。
テストケース / 受け入れテスト
- TC-01: 再起動後に保護履歴が見えるか(期待: 見える)
- TC-02: 検出履歴ファイル削除→再起動→保護履歴確認(期待: 見える)
- TC-03: SFC/DISM 実行後にエラーが解消されるか(期待: 修復される、重大な破損があれば管理者に報告)
- TC-04: PowerShell でパッケージ再登録後に UI が正常に起動するか(期待: 起動する)
- TC-05: フルスキャン後、隔離/削除した脅威の履歴が保護履歴に反映されるか(期待: 反映される)
セキュリティ強化とプライバシーの注意点
- ログの扱い: 保護履歴には検出されたファイル名やパス、時刻などが含まれます。機密情報が含まれる可能性があり、ログを外部へ送信する際は社内ポリシーに従ってください。
- EDR と連携: 企業環境では Microsoft Defender for Endpoint や他の EDR を活用し、保護履歴以外の検出ソースも参照してください。
- 権限最小化: 修復作業は管理者アカウントで行いますが、作業後は管理者権限を必要最小限に戻すことを推奨します。
追加のトラブルシュート・ヒント(ヒューリスティック)
- どこが失敗しているかを特定するコツ: UI が起動するか→データが空か→ファイルが壊れているか の順で切り分けます。
- ログ場所の把握: 保護履歴は内部的に ProgramData の Defender フォルダ等に保存されます。権限があればファイル更新時刻で不整合を確認してください。
- 一時的なプロファイル問題: 新しいローカルユーザーを作成して、そのユーザーで保護履歴が見えるか試すことで、プロファイル固有の問題かを判定できます。
よくある質問
Q: 保護履歴を削除しても問題ありませんか?
A: 保護履歴そのものはログです。削除しても検出機能自体には影響しません。ただし過去ログが消えるため、必要があればバックアップをとってください。
Q: グループポリシーで制御されていますか?
A: はい。企業環境ではグループポリシーや Intune の設定が Windows セキュリティの表示や機能を制限している場合があります。IT 管理者に確認してください。
Q: ベータ(Insider)版を使っている場合は?
A: Insider ビルドは不安定な場合があります。バグで保護履歴が表示されないことがあるため、安定版に戻すか、問題をフィードバックハブで報告してください。
まとめ
保護履歴が表示されない問題は、まず簡単な再起動やフルスキャンから始め、順に検出履歴の削除、パッケージ再登録、システムファイルの修復、アプリの修復/リセットを試してください。多くの場合、これらの手順で回復します。企業環境やベータビルドでは管理ポリシーやOSバグが原因となることがあるため、適切な担当者に相談してください。
最後に、問題が続く場合は「システムの復元」や「インプレースアップグレード(上書きインストール)」を検討してください。これらは最終手段ですが、OSの整合性を回復するのに有効です。
もしこの記事についてのフィードバックや改善案があれば、コメントで教えてください。