WindowsのMailアプリでGmailを追加できないエラー0x80070490の対処法
要約
- Windows標準のMailアプリでGmailを追加しようとした際に発生するエラー「0x80070490」を段階的に診断・解決する手順をまとめました。まずは権限・アプリ更新・アプリ修復・システムスキャンの順で確認し、必要に応じてGmail側の設定や代替手段(IMAP手動設定、ブラウザアクセス、別クライアントの利用)を試してください。
重要: この記事は一般的なトラブルシューティングを目的としています。組織の管理下にある端末やGoogle Workspaceアカウントの場合は管理者ポリシーが影響することがあるため、先にIT管理者に相談してください。

本記事の対象と目的
このガイドは次の状況を想定しています: Windows 10/11 で標準の「Mail と Calendar(以下、Mailアプリ)」に個人のGmailアカウントを追加しようとしたときに、エラーコード「0x80070490」や「設定が見つかりませんでした(We couldn’t find your settings)」のようなメッセージが出て追加できない場合。その原因となる代表的な要素を整理し、確実に検証できる手順、代替策、検証方法、よくある失敗例とその回避策を提示します。
目次
- 原因の概要
- 優先して行うべき基本手順
- 詳細な手順(権限、更新、修復、スキャン)
- Gmail側で確認すべき設定
- 代替アプローチといつ使うか
- 役割別チェックリスト(エンドユーザー/管理者)
- 受け入れ基準とテストケース
- よくある失敗例(いつこの方法で直らないか)
- セキュリティとプライバシー留意点
- 最後に(まとめ)
原因の概要
エラー0x80070490が発生する代表的な原因は次のとおりです。
- 権限(Privacy)設定: Windowsの「Email access」や「Let apps access your email」が無効になっている。
- アプリの古さ: Mailアプリ自体が古く不具合を抱えている。
- アプリ内部の破損: Mailアプリのインストールや構成ファイルが破損している。
- システム側のファイル破損: Windowsのシステムファイルやイメージが壊れている。
- Gmail側の制約: IMAPが無効、二段階認証やアプリパスワードの必要、アカウントロック、組織ポリシーによる制限。
- ネットワーク/資格情報の問題: 端末の時刻がずれている、ネットワーク制限、プロキシ経由での通信問題。
次章では、影響が大きくかつ確実な順に対処します。まずは端末側の基本設定から始め、次にアプリの修復・更新、最後にGmail側の確認や代替手段を検討します。
優先して行うべき基本手順(概要)
- Windowsのプライバシー設定でアプリのメールアクセスを許可する。
- Microsoft Store経由で「Mail and Calendar」を最新に更新する。
- アプリの「修復(Repair)」または必要なら「リセット(Reset)」を試す。
- システムファイルの整合性チェック(SFC)とDISMでWindowsイメージを修復する。
- Gmail側でIMAPの有効化や二段階認証/アプリパスワードの確認を行う。
以下、各手順を詳細に説明します。
1. プライバシー設定を変更する(アプリにメールへのアクセスを許可)
重要: まず最初に確認する項目です。Mailアプリ自身がメールへアクセスする権限を持っていないとアカウント追加で失敗します。
手順:
- Windowsキー + I を押して「設定」を開く。
- 左側のメニューから「プライバシーとセキュリティ」を選ぶ。
- 右ペインで「メールアクセス」セクションを探す。
- 「メール アクセス」を有効にする。
- 「アプリがメールにアクセスできるようにする」をオンにし、一覧から「Mail and Calendar」がオンになっていることを確認する。
確認後、設定アプリを閉じ、Mailアプリに戻って再度Gmailを追加してみてください。
重要: 組織で管理されている端末の場合、グループポリシーやMDMによりこの設定が上書きされることがあります。その場合はIT管理者に問い合わせてください。
2. Mailアプリを更新する(Microsoft Store経由)
古いバージョンのアプリはOAuthフローや認証の変更に追従できず、エラーを引き起こすことがあります。Microsoft Storeから最新版に更新します。
手順:
- タスクバーのMicrosoft Storeアイコンをクリックするか、タスクバーの検索で「Microsoft Store」を検索して開く。
- Microsoft Store 左下の「ライブラリ」アイコンをクリックする。
- 「更新プログラムの取得」ボタンを押して、一覧のアプリを最新化する。
- Mail and Calendar の更新が完了したら、PCを再起動してから再試行します。
注意: 更新時に「更新に失敗しました」と表示された場合は「再試行」を選び、失敗が続く場合はネットワークやMSアカウントのサインイン状態も確認してください。
3. アプリを修復またはリセットする
Mailアプリ自体の構成が破損していると、修復が有効です。修復で直らない場合はリセットを検討します(リセットはアプリの設定とデータを初期化します)。
手順:
- Windowsキー + I で「設定」を開く。
- 左メニューから「アプリ」を選択する。
- アプリ一覧で「Mail and Calendar」を探す。
- 右の三点ボタンをクリックして「詳細オプション」を選ぶ。
- 「修復」ボタンを押してプロセスが完了するのを待つ。
- 修復で改善しなければ「リセット」を実行する(データ損失に注意)。
重要: リセット後は再度アカウントを追加する必要があります。事前にメールのバックアップや設定メモを取っておくと安心です。
4. システムファイルとイメージのチェック(SFCとDISM)
Windowsの保護されたシステムファイルやイメージが破損している場合、Mailアプリの動作に問題が出ることがあります。管理者権限のコマンドプロンプトで以下を実行します。
手順:
- スタートメニューで「cmd」または「コマンドプロンプト」を検索して、右クリック→「管理者として実行」。
- 以下のコマンドを順に実行し、各コマンドの完了を待つ。
sfc /scannowSFCが完了したら、次にDISMコマンドを実行します。
DISM.exe /Online /Cleanup-image /Scanhealth
DISM.exe /Online /Cleanup-image /Restorehealth- 処理が完了したらPCを再起動し、Mailアプリで再度アカウントを追加して確認してください。
ヒント: DISMやSFCがエラーを報告した場合は、ログを確認して追加の修復手順を検討する必要があります(管理者サポートを推奨)。
5. Gmail側で確認すべき点(Googleアカウント設定)
Mailアプリは通常OAuthを用いてGmailに接続します。以下の点を確認してください。
- ウェブブラウザでGmailに正常にログインできるか(ブラウザでログインできない場合はアカウント側の問題)。
- IMAPが有効になっているか: Gmailの設定→「転送とPOP/IMAP」でIMAPが有効か確認する。
- 二段階認証(2FA)を使っている場合、アプリパスワードが必要になることがある。Mailアプリは通常OAuthを使用するが、認証方法によってはアプリパスワードを求められる場合がある。
- アカウントにセキュリティ上の警告や異常ログインの通知がないか。
- 組織(Google Workspace)の管理者が外部アプリのアクセスをブロックしていないか。
注意: 2022年以降、Googleは「安全性の低いアプリの許可」ポリシーを段階的に廃止しました。従来の古い認証方式を利用するクライアントは接続できない可能性があります。
6. 代替アプローチ(いつ使うか)
- IMAP手動設定: OAuthで失敗する場合、IMAPの手動設定で接続できるか試す(推奨はしないが検証用途として有用)。
- サーバー: imap.gmail.com, ポート: 993, SSL/TLS: 必須
- SMTP: smtp.gmail.com, ポート: 465 または 587, SSL/TLS
- ブラウザでWeb版Gmailを使用: 迅速かつ安全にメールを使いたい場合の回避策。
- 別のメールクライアント: Thunderbird や Outlook(デスクトップ版)などで接続可能かを試し、問題がMailアプリ固有かを切り分ける。
- 新しいWindowsユーザーアカウントの作成: プロファイルに依存する問題を切り分けるため。
いつ代替を使うか:
- 上記の修復や更新で直らない場合
- 企業ポリシーでMailアプリの利用が制限されている場合
- すぐにメールを使いたいがOSレベルでの修復に時間をかけたくない場合
決定木(簡易フロー)
以下は対処の流れを示す簡単な決定木です。
flowchart TD
A[MailにGmailを追加しようとしてエラー] --> B{Mailアプリにメールアクセス権はあるか}
B -- いいえ --> C[設定でメールアクセスを有効にして再試行]
B -- はい --> D{アプリは最新版か}
D -- いいえ --> E[Microsoft Storeで更新して再試行]
D -- はい --> F{修復で改善するか}
F -- はい --> G[完了]
F -- いいえ --> H[システムスキャン(SFC/DISM)を実行]
H --> I{直らないか}
I -- いいえ --> G
I -- はい --> J[Gmail設定(IMAP、2FA、アプリパスワード)を確認]
J --> K{企業ポリシーの影響あり?}
K -- はい --> L[管理者に相談]
K -- いいえ --> M[別クライアントを検討]役割別チェックリスト
- エンドユーザー:
- Windowsのメールアクセス権を有効にした
- Mailアプリを更新した
- アプリの修復を試した
- SFC / DISMを実行した
- Gmailにブラウザでログインし、IMAP/2FA設定を確認した
- IT管理者:
- MDM/GPOでアプリのメールアクセスがブロックされていないか確認
- ネットワークやプロキシでOAuthのドメインがブロックされていないか確認
- 組織のGoogle Workspace管理コンソールで外部アプリのアクセス制御を確認
受け入れ基準(Критерии приёмки)
- MailアプリにGmailアカウントを追加して、受信トレイが一覧表示されること。
- 新着メールの送受信が行えること(送信テストを1通実施)。
- 再起動後もアカウント情報が維持され、再度エラーが出ないこと。
テストケース(受け入れテスト)
- 正常系: MailアプリにGmailを追加して、受信トレイのメールが最新順に表示される。
- 送信テスト: 作成したテストメールを別アドレスへ送信し、送信成功を確認する。
- ネットワーク切替: Wi-Fi→有線に切り替えても切断や認証エラーが発生しないか確認する。
- アプリ更新後の再試行: Microsoft Storeでの更新後にアカウントが失われないこと。
よくある失敗例(この記事の手順で直らない場合)
- アカウントがGoogle側でロックされている(異常ログインや保護のために一時停止された)
- 組織のGoogle Workspace管理者が外部接続を制限している
- 端末が企業ネットワークに接続されており、プロキシやファイアウォールがOAuth通信を遮断している
- Mailアプリの既知のバグ(非常に稀)で、Microsoftからの修正が必要なケース
対処: これらの場合は、Googleのアカウント回復手順、IT管理者への相談、またはMicrosoftサポートへの問い合わせが必要です。
セキュリティとプライバシーに関する注意
- 二段階認証(2FA)はセキュリティ向上に有効です。Mailアプリを使う際は2FAを有効にし、必要ならアプリパスワードを発行してください。
- アプリパスワードは本人の端末専用のパスワードです。紛失や流出を防ぐため、定期的に見直してください。
- 組織データや個人情報を扱う場合、企業のポリシーやGDPRなど規制に従ってください。外部アプリへデータアクセス権を与える前に、リスクを評価してください。
トラブルシューティングSOP(簡易プレイブック)
- 電源再起動→Mailアプリ再試行。
- 設定→プライバシー→メールアクセスを確認。
- Microsoft StoreでMailアプリを更新。
- 設定→アプリ→Mail and Calendar→修復→改善なければリセット。
- 管理者権限でSFC / DISMを実行。
- GmailでIMAPとセキュリティ設定を確認。
- それでも不可の場合は、別クライアントで接続確認→ログを収集してサポートへ報告。
1行用語集
- OAuth: ウェブサービス間で安全に認証情報を共有するための認証フロー。
- IMAP: メール受信プロトコル。サーバ上のメールを同期する方式。
- SFC: System File Checker。Windowsのシステムファイル整合性ツール。
- DISM: Deployment Image Servicing and Management。Windowsイメージ修復ツール。
よくある質問
Q: MailアプリがGmailを追加できないが、Outlookデスクトップ版では追加できる。何が原因?
A: Mailアプリ固有の権限やUWP(ユニバーサルWindowsプラットフォーム)実装による問題の可能性があります。Mailアプリの修復や更新、あるいは別クライアントの使用を検討してください。
Q: 二段階認証を使っているとMailアプリでパスワードを聞かれる。どうする?
A: まずGmailのセキュリティ設定でアプリパスワードが必要か確認してください。可能であればOAuthでのサインインを選び、アプリパスワードを使う場合はGoogleアカウントの「アプリパスワード」で専用パスワードを発行します。
Q: 企業の端末で問題が起きた場合の相談先は?
A: 端末やアカウントが組織管理下にある場合は、まず社内のIT管理者に連絡してください。管理者がGPOやMDMで制限を解除する必要があることがあります。
最後に(まとめ)
この記事では、WindowsのMailアプリでGmailを追加しようとした際に表示されるエラー0x80070490の代表的な原因と、それぞれの対処法を段階的に説明しました。まずは権限とアプリ更新・修復を優先し、必要であればシステムスキャンやGmail側の設定確認、代替クライアントの利用を検討してください。多くの場合は権限と更新で解決しますが、組織ポリシーやGoogle側のセキュリティ設定が関わるケースでは、管理者やサポートへの相談が必要です。
もし手順を試した後も問題が続く場合は、実行した手順と表示されたエラーメッセージ/スクリーンショットを準備して、Microsoftサポートまたは社内ITへ問い合わせしてください。