Microsoft Store エラー 0x87E10BD0 を修正する方法
はじめに
エラー 0x87E10BD0 は、主に Microsoft Store から特定のゲームやアプリをダウンロードまたはインストールしようとした際に「Something unexpected happened」「purchase can’t be completed」といったメッセージと共に発生することが報告されています。Sea of Thieves などのゲームでよく言及されますが、他の UWP アプリでも起こり得ます。
このガイドは、問題の原因を段階的に切り分けて修正するための実践的な手順、失敗するケースと代替案、検証方法を含んでおり、エンドユーザーと IT 管理者の両方に役立つ内容を目指しています。
重要: 以下の操作の一部は管理者権限または再起動を伴います。作業前に進行中の作業を保存してください。
影響と症状の把握
- 発生タイミング: Microsoft Store でダウンロードやインストールを開始した直後に発生することが多い。
- 典型的なメッセージ: “Something unexpected happened”、”purchase can’t be completed”、およびコード 0x87E10BD0。
- 影響: ダウンロード/インストールが停止し、該当アプリを取得できない。
用語の短い定義: UWP — Windows のユニバーサル Windows プラットフォーム アプリの総称。
対処手順の概要(優先度順)
- Windows ストア アプリのトラブルシューティングを実行
- Microsoft アカウントにサインインしているか確認
- Microsoft Store のキャッシュ(wsreset)をリセット
- AUInstallAgent フォルダーを再作成
- Microsoft Store Install Service の動作確認と自動起動化
- クリーンブート(スタートアップ削減)で競合を切り分け
- Microsoft Store の再登録(PowerShell)
これらの手順は下で詳細に説明します。各節は短い要約、手順、確認項目、失敗時の代替案を含みます。
1. Windows ストア アプリのトラブルシューティングを実行
要約: Windows に組み込まれたトラブルシューティングツールは、構成や一般的な問題を自動検出し修正する場合があります。すべてのケースで解決するわけではありませんが、最初に試す価値があります。
手順(Windows 11 の例):
- 「スタート」メニューから「設定」を開く(歯車アイコン)。
- 左側メニューから「トラブルシューティング」を選ぶ。
- 「その他のトラブルシューティングツール」を開く。
- 「Windows ストア アプリ」を見つけ、「実行」をクリックする。
- 表示される提案を順に適用し、完了したら PC を再起動して問題が解消するか確認する。
Windows 10 の場合は「設定」→「更新とセキュリティ」→「トラブルシューティング」→「追加のトラブルシューティングツール」から同じツールを実行します。
確認事項: トラブルシューティング後に “問題が見つかりました/修正しました” のメッセージがあるか。改善がなければ次の手順へ。
代替案: トラブルシューティングが失敗する場合はログ(イベント ビューア)で関連エラーを確認し、より具体的なエラーコードやコンポーネント名を特定します。
2. Microsoft アカウントにサインインしているか確認
要約: Microsoft Store は Microsoft アカウントの状態に依存します。アカウント未サインインや資格情報の不整合が原因で購入やダウンロードが失敗することがあります。
手順(Windows 共通):
- スタート → 右クリック → 「ファイル名を指定して実行」を選ぶ、または Win + R を押す。
- 「ms-settings:emailandaccounts」を入力して OK をクリックする。
- 「メールとアカウント」画面で Microsoft アカウントが表示されているか確認。
- 表示がない場合は「Microsoft アカウントを追加」を選び、メールアドレスとパスワードでサインインする。
- サインイン後は PC を再起動して Microsoft Store から再試行する。
確認事項: Microsoft Store に表示されるアカウントが期待どおりか、別のアカウントでログインしていないか。
代替案: 既にサインインしていて問題が続く場合、一度サインアウトして再度サインインする、または Microsoft アカウントのブラウザ上でのセッションやセキュリティ通知を確認します。
3. Microsoft Store のキャッシュをリセット(wsreset)
要約: キャッシュの破損が原因でストア操作が失敗することがあります。wsreset.exe を実行してキャッシュをクリアします。
手順:
- Win + R を押して「ファイル名を指定して実行」を開く。
- 「wsreset.exe」と入力して OK を押す。
- コマンドが実行されると、コマンドプロンプトのような黒いウィンドウが一瞬表示され、処理完了後に Microsoft Store が自動で開きます。
- Store が開いたら対象アプリのダウンロードを再試行する。
確認事項: wsreset 実行後に Store が正常起動するか。ダウンロード開始まで進むか。
注意: wsreset はストアのキャッシュを削除しますが、インストール済みアプリやアカウント情報を削除するものではありません。
4. AUInstallAgent フォルダーを再作成
要約: 一部の環境では AUInstallAgent フォルダーが破損または欠損していることでインストール処理が妨げられ、エラーが発生することがあります。フォルダーを削除して再作成することで修正される場合があります。
手順:
- Win + R を押して Run を開く。
- 「%windir%」と入力して OK をクリックし、Windows フォルダーを表示する。
- AUInstallAgent フォルダーが存在するか確認する。存在する場合は右クリックして【削除】する(管理者権限が必要)。存在しなければそのまま次へ。
- Windows フォルダー内で右クリック → 新規 → フォルダーを選択する。
- フォルダー名を「AUInstallAgent」と入力して Enter を押す。
- PC を再起動して、Microsoft Store で対象アプリを再ダウンロードする。
確認事項: フォルダー作成後にエラーが再現しないか。削除できなかった場合は権限(所有権)を確認する。
代替案: 権限が原因で削除できない場合はセーフモードで起動して操作を試みる。
5. Microsoft Store Install Service が動作しているか確認
要約: Microsoft Store Install Service(インストール関連のサービス)が停止または無効になっていると、UWP アプリのインストールに失敗します。サービスが自動起動かつ実行中であることを確認します。
手順:
- タスクバーの検索ボックスに「サービス」と入力してサービス(Services)アプリを開く。
- リストから「Microsoft Store Install Service」を探し、ダブルクリックでプロパティを開く。
- 「スタートアップの種類」を「自動」に設定する。
- サービスが停止している場合は「開始」をクリックする。既に実行中なら「再起動」を行う。
- 「適用」→「OK」で閉じ、Store の動作を確認する。
確認事項: サービスが自動で起動するか、再起動後にエラーが消えるか。
代替案: サービスが頻繁に停止する場合、イベント ビューアで故障原因を確認し、依存サービスの状態もチェックする。
6. クリーンブートでスタートアップ項目を切り分け
要約: 他の常駐アプリやサービスが Microsoft Store のインストール処理と競合している可能性があります。クリーンブートでサードパーティの起動項目を無効化して問題を切り分けます。
手順(概略):
- Win + R → msconfig と入力してシステム構成(MSConfig)を開く。
- サービスタブで「Microsoft のサービスをすべて隠す」にチェックを入れ、残りを無効化する。
- スタートアップはタスクマネージャから不要項目を無効にする。
- PC を再起動して Microsoft Store で問題が再現するか確認する。
確認事項: クリーンブート後にダウンロードが進むか。進む場合は無効化した項目を一つずつ有効にして原因を特定します。
注意: クリーンブートは診断手順です。常時の運用状態として使用しないでください。
7. Microsoft Store を再登録(再インストール相当)
要約: 上記の方法で改善しない場合、Microsoft Store を PowerShell から再登録すると効果的です。管理者として PowerShell を実行してください。
手順:
- スタートの検索で「PowerShell」と入力する。
- 「Windows PowerShell」を右クリックして「管理者として実行」を選ぶ。
- 以下のコマンドを入力して Enter を押す:
Get-AppXPackage *Microsoft.WindowsStore* | Foreach {Add-AppxPackage -DisableDevelopmentMode -Register "$($_.InstallLocation)\AppXManifest.xml"}
- コマンド実行後、PC を再起動して動作を確認する。
注意事項: この操作はストアの再登録を行いますが、インストール済みアプリの状態を完全にリセットするものではありません。エラーが継続する場合はログに表示されるエラーメッセージを記録してください。
代替のアプローチと追加のヒント
- プロキシ/ファイアウォール: 企業ネットワークやサードパーティのセキュリティ製品が Microsoft Store の通信を遮断している場合があります。ネットワーク管理者に一時的にフィルタを外してもらいテストするか、他のネットワーク(モバイルホットスポット等)で試してみてください。
- Windows Update の整合性: Windows Update 関連の不整合がストアに影響することがあります。Windows Update を最新にし、必要であれば Windows Update のトラブルシューティングも実行します。
- 別のユーザー プロファイル: 新しいローカルユーザーまたは別の Microsoft アカウントでサインインして同じ操作を試し、ユーザー プロファイル固有の問題かを切り分けます。
- セーフモード: セーフモード(ネットワーク有り)で試して、最小構成でダウンロード可能か確認します。
いつこの手順で失敗するか(反例)
- ストア サービス自体が Microsoft サーバー側で障害を起こしている場合。ユーザー側の対処では解決できない。
- アカウントに課金/購入の問題がある(支払い情報の不備や地域制限)。この場合は Microsoft アカウントの購入履歴や支払い情報を確認する。
- ディスクの損傷やシステムファイル破損が深刻で、sfc /scannow や DISM の実行が必要なケース。
役割別チェックリスト
エンドユーザー:
- Microsoft アカウントでサインイン済みか確認
- wsreset を実行した
- PC を再起動した
IT 管理者:
- Microsoft Store Install Service の自動起動を設定した
- クリーンブートで競合を切り分けた
- ネットワーク(プロキシ/ファイアウォール)をチェックした
サポート担当:
- 実行したコマンドやトラブルシューティング結果をログとして取得した
- 再現手順を明確にした(どのアプリで、いつ、どのアカウントか)
- 必要ならユーザーのプロファイルを別アカウントで再現テストした
SOP(簡易プレイブック)
- ユーザーにエラーコードのスクリーンショットと再現手順を提出してもらう。
- トラブルシューティングツールを実行 → サインイン確認 → wsreset の順に実施。
- それでも解決しない場合は AUInstallAgent の再作成、サービス確認を実施。
- 管理者権限で PowerShell 再登録を実施し、最後にクリーンブートで切り分け。
- すべて失敗する場合は Microsoft サポートへエスカレーション(チケットにログと手順を添付)。
ロールバック: PowerShell 再登録やフォルダー作成は比較的安全ですが、変更前の状態を戻したい場合は作業前にシステムの復元ポイントを作成しておくと安全です。
テストケースと受け入れ基準
テストケース:
- ケース A: 新規アプリを Microsoft Store からダウンロード → 正常にダウンロードとインストールまで完了
- ケース B: Sea of Thieves のような大容量アプリをダウンロード → 中断なく展開まで完了
- ケース C: 別ユーザーでサインインして同一アプリをダウンロード → 成功/失敗の切り分け
受け入れ基準:
- Microsoft Store でアプリがダウンロードされ、インストールが完了すること
- 再起動後も同じ操作で障害が再現しないこと
- サポート担当が再現手順を持っていること
簡易フローチャート(問題切り分け)
flowchart TD
A[エラー 0x87E10BD0 発生] --> B{Microsoft アカウントでサインイン済み?}
B -- いいえ --> C[サインインして再試行]
B -- はい --> D[wsreset を実行]
D --> E{解決したか?}
E -- はい --> Z[完了]
E -- いいえ --> F[AUInstallAgent 削除/再作成]
F --> G[Microsoft Store Install Service を確認]
G --> H{サービス起動中?}
H -- いいえ --> I[自動に設定して開始]
H -- はい --> J[クリーンブートで競合を切り分け]
J --> K{解決したか?}
K -- はい --> Z
K -- いいえ --> L[PowerShell で再登録]
L --> Z2[エスカレーションまたはサーバ側障害の確認]
プライバシー注意(企業環境)
- 作業で管理者権限やアカウントパスワードを扱う場合、認証情報の取り扱いポリシーに従ってください。
- サポートでログを収集する際は個人情報(メール本文、支払い情報など)をマスクするか最小限にすることを推奨します。
まとめ
- 多くの場合、wsreset、トラブルシューティング ツール、アカウントの再サインイン、AUInstallAgent の再作成、サービスの自動化、クリーンブート、PowerShell 再登録の順で対応すると解決します。
- 何を実行したか、どのタイミングでエラーが出たかを記録しておくと、原因特定とエスカレーションがスムーズになります。
重要: サーバ側の障害やアカウントの支払い問題が原因の場合、ユーザー側の修正では解決できないため Microsoft サポートに連絡する必要があります。
用語集(1 行ずつ)
- Microsoft Store: Windows 向けアプリの公式配布プラットフォーム。
- wsreset: Microsoft Store のキャッシュをリセットする Windows 内蔵コマンド。
- AUInstallAgent: 一部のインストール処理で使われる Windows フォルダー名。