Photoshopで「プログラムエラーのため要求を完了できません」を解決する方法

Adobe Photoshopは豊富な機能を持つ強力な画像編集ソフトです。しかし作業中に「Could not complete your request because of a program error(プログラムエラーのため要求を完了できません)」というメッセージが表示され、正常にファイルを開けないことがあります。本記事では、このエラーの代表的な原因と順序だった対処手順、運用向けチェックリスト、よくある落とし穴をまとめています。
注意: この記事の手順は一般的なトラブルシューティングに基づくもので、環境やPhotoshopのビルドによって挙動が異なる場合があります。
問題の全体像(何が起きているか)
このエラーは「内部処理が失敗した」「設定や外部プラグイン、GPUまたはファイル自体に問題がある」など原因が多岐にわたります。典型的には次の領域を順に切り分けることで原因を発見できます。
- Photoshop本体の設定(Preferences)
- プラグイン(特にGenerator)
- GPU(グラフィックスハードウェア)やドライバー
- ファイル自体(破損・拡張子の不一致)
- OS側の権限やライブラリフォルダのロック(macOS)
以下では、推奨する順序で手順と解説を示します。手順は基本的に簡単な方から試し、効果がなければ次へ進むやり方です。
目次
- システム要件を確認する
- Generatorプラグインを無効にする
- Photoshopを初期設定にリセットする
- Photoshopを最新バージョンに更新する
- GPUアクセラレーションを無効にする
- GPUドライバーを更新する
- 前バージョンに戻す(ロールバック)
- その他の可能性(ファイル拡張子、macOSのLibraryロック)
- 運用チェックリストとSOP(手順書)
- トラブル判断フロー(Mermaid)
- 役割別チェックリスト
- 受け入れ基準(KR)とテストケース
- 1行用語集とまとめ
1. システム要件を確認する
まず基本として、使用しているマシンがPhotoshopの最小動作環境を満たしているか確認してください。アプリの更新に伴い必要なスペックは上がることがあります。以下は例として2020年10月(v22.0)リリース時の最小要件です。最新の要件はAdobe公式ページで常に確認してください。
Windows:
- 64ビットのAMDまたはIntel CPU、2.0 GHz以上(SSE 4.2以降をサポート)
- Windows 10 バージョン1809以降
- RAM 8GB以上(実務では16GBを推奨)
- 内部HDD空き領域 4〜8GB
- DirectX 12対応GPU、GPUメモリ2GB以上
macOS:
- 64ビットIntelプロセッサ、2.0 GHz以上(SSE 4.2以降をサポート)
- macOS Mojave(10.14)以降
- RAM 8GB以上
- 内部HDD空き領域 4〜8GB
- Metal対応GPU、GPUメモリ2GB以上
重要: 実際の作業ではレイヤー数や画像解像度、使用するフィルターによって必要なメモリやGPU性能は増加します。特にAIベースやリアルタイムプレビューを多用する場合は、推奨スペックの上を目指してください。
2. Generatorプラグインを無効にする
一部のケースでは、Adobe PhotoshopのGeneratorプラグインが原因で内部エラーが発生します。Generatorは外部プロセスやアセットの自動生成に関わる機能です。無効化して問題が消えるか確認します。
手順(Windows / macOS共通のUI操作):
- Photoshopを起動している場合は一度作業を保存し、状態を記録しておく。
- 上部メニューで「Edit(編集)」をクリック(macOSではPhotoshopメニューからアクセスする項目もあります)。
- サイドバーから「Preferences(環境設定)」を選択。
- 表示されたダイアログで「Plugins(プラグイン)」を選ぶ。
- 「Enable Generator(Generatorを有効にする)」のチェックボックスをオフにする。
- Photoshopを再起動して、問題のファイルを再度開いて確認する。
効果: Generatorが原因であれば、この無効化でエラーが再現しなくなります。再現しない場合は、Generator機能を常時オフにするか、必要な機能だけ個別に検討してください。
3. Photoshopを初期設定にリセットする
設定(Preferences)が破損していると、様々な不可解な挙動を引き起こします。環境設定を初期化すると多くのケースで改善します。ただし、カスタム設定は消えるため、必要ならバックアップを取ってください。
手順:
- Photoshopを終了する。
- 次にPhotoshopを起動する際に、Windowsでは「Ctrl + Alt + Shift」を、macOSでは「Command + Option + Shift」を押し続ける。
- 起動中に「Delete the Adobe Photoshop Settings file?(Adobe Photoshopの設定ファイルを削除しますか?)」と表示されたら「Yes(はい)」を選択。
- Photoshopは既定の設定で起動するので、問題が解消されたか確認する。
注意: 設定リセット後はワークスペースやショートカットなどが初期化されます。必要なら事前に設定ファイルのバックアップを取りましょう(次章のロールバック保存手順も参照)。
4. Adobe Photoshopを最新リリースに更新する
Adobeは頻繁にバグ修正をリリースします。発生している不具合は既に修正済みであることがあるため、まず最新版かどうかを確認します。
手順:
- Photoshopを起動する。
- 上部メニューから「Help(ヘルプ)」をクリック。
- 「About Photoshop(Photoshopについて)」を選択して現在のバージョンを確認(macOSではPhotoshop > About Photoshop)。
- Creative Cloudデスクトップアプリを開き、Photoshopの「更新」ボタンがあれば適用する。
更新で解消されない場合は、次の手順(GPUやドライバー関連)に進みます。
5. GPU(グラフィックスプロセッサ)アクセラレーションを無効にする
GPU関連の不整合が原因で処理が失敗することがあります。GPUを一時的に無効化して挙動を確認してください。
手順:
- 上部メニューで「Edit(編集)」→「Preferences(環境設定)」を開く。
- 「Performance(パフォーマンス)」を選択する。
- 「Use Graphics Processor(グラフィックスプロセッサを使用)」のチェックを外す。
- Photoshopを再起動し、問題のファイルを開いて確認する。
効果: GPU無効で問題が解決する場合、GPUドライバーやGPU機能に原因がある可能性が高いです。以降はGPUドライバー更新や設定の見直しを行います。
6. グラフィックアダプタ(GPU)ドライバーを更新する
GPUが原因の場合、最新のドライバーで既知の不具合が解消されていることがあります。ドライバー更新はOSやGPUメーカーに応じて行ってください。
Windows上の代表的な手順(メーカー別):
- NVIDIA: NVIDIAのダウンロードセンターまたはGeForce Experienceから最新ドライバーを確認・適用
- Intel: Intelのダウンロードセンターを参照して最新の統合グラフィックスドライバーを適用
- AMD: AMDのダウンロードページから該当GPUのドライバーを取得してインストール
macOS:
- macOSはOSアップデートを通じてGPUドライバーが提供されます。システム環境設定 > ソフトウェア・アップデートで最新のmacOSを適用してください。
注意:
- ドライバーを更新する前に、現在のドライバーを復旧できるようシステムの復元ポイントやドライバーバックアップを検討してください(特にWindows環境)。
- ノートPCの複数GPU(内蔵+外部)を持つ場合、使用しているGPUがどちらかを明確にし、該当ドライバーを適用してください。
7. Photoshopを前のバージョンに戻す(ロールバック)
最新バージョンで発生する新たな不具合は、前バージョンに戻すことで回避できる場合があります。ロールバック前に現在の設定を必ずバックアップしてください。
設定ファイルの保存場所(例):
Windows 7/8/10:
- C:/Users/[ユーザー名]/AppData/Roaming/Adobe/Adobe Photoshop[バージョン]/Adobe Photoshop[バージョン] Settings
macOS:
- /Users/[ユーザー名]/Library/Preferences/Adobe Photoshop[バージョン] Settings
ロールバック手順(Creative Cloudを利用):
- Creative Cloudデスクトップアプリを起動する。
- Photoshopの項目を見つけ、右側の「・・・(その他)」をクリック。
- 「Other Versions(以前のバージョン)」を選択して、インストールしたいバージョンを選ぶ。
- インストール後、事前に保存した設定を復元して挙動を確認する。
その他に考えられる原因
画像ファイルの拡張子やフォーマットの不一致
- ファイルが正しい拡張子を持っていない、あるいは拡張子の割に中身が別形式になっている場合、Photoshopが処理で失敗することがあります。別のビューアや他アプリで開けるか確認し、問題がある場合は別途変換ツールで再保存してみてください。
macOSのLibraryフォルダがロックされている
- macOSではPhotoshopの環境設定やライブラリデータが ~/Library に格納されています。このフォルダやその下のファイルがロック(アクセス権が不足)されていると設定読み込みで失敗する可能性があります。Finderで該当フォルダのアクセス権を確認し、必要なら権限を修正してください。
運用向けチェックリスト(SOP: 短縮版)
- 再現確認: エラー発生手順を再現できるかスクリーンショット/ログを取得する。
- 簡易対処: Generator無効→設定初期化→GPU無効の順に試す。
- 更新確認: Photoshop本体とGPUドライバーを最新版へ更新。
- ロールバック: 最新版で改善しない場合は直近の安定版に戻す。
- 保存とバックアップ: 設定ファイルやプリセットは必ずバックアップ。
- 通知: チームで共有し、再発時の報告フォーマットを確立する。
このSOPは日常的な対応手順として、デザインチームまたはITサポートが共通で使えるようにしてください。
トラブル判断フロー(視覚化)
次のフローは素早い切り分けに使えます(Mermaid記法)。
flowchart TD
A[エラー発生] --> B{特定のファイルのみか?}
B -- はい --> C[拡張子とファイル破損確認]
B -- いいえ --> D[Generatorを無効化]
D --> E{改善したか}
E -- はい --> F[原因: Generator]
E -- いいえ --> G[設定を初期化]
G --> H{改善したか}
H -- はい --> I[原因: 設定ファイル]
H -- いいえ --> J[GPUを無効化]
J --> K{改善したか}
K -- はい --> L[原因: GPU/ドライバー]
K -- いいえ --> M[Photoshopを更新/ロールバック]
M --> N[改善しなければ詳細ログ取得・サポートへ連絡]
役割別チェックリスト(短縮)
デザイナー
- 該当ファイルだけか確認する
- 短期回避として画像を別形式で保存して作業を続行
- 重要な環境設定のスクリーンショットを残す
IT管理者
- GPUドライバーとOSのアップデートを確認
- ネットワークドライブや共有フォルダの権限を確認
- 影響範囲が大きい場合は全ユーザーへ一斉通知
プロダクトマネージャー/チームリーダー
- 問題の再現手順と時刻、影響範囲を把握
- 必要ならAdobeサポート問い合わせを行う
受け入れ基準(Критерии приёмки)とテストケース
受け入れ基準:
- 問題の再現手順が再現できないこと(同じファイル/同じ環境で3回連続で成功する)
- 主要ワークフロー(ファイルの開閉、保存、レイヤーマネジメント)が正常に動作すること
テストケース例:
- 問題の出たPSDを開く(期待: 正常に開く)
- 大容量PSD(複数スマートオブジェクト/多数レイヤー)を開く
- GPU処理を伴うフィルターを適用して挙動を確認
これらを通過すれば、修正は受け入れ可能と判断できます。
1行用語集
- Generator: Photoshopのプラグイン機能の一つで、アセット自動生成などを行うプロセス。
- GPU: グラフィックス処理を担当するハードウェア。高速化機能のためにPhotoshopで利用される。
- ロールバック: アプリを以前のバージョンに戻す操作。
いつ失敗するか/代替アプローチ
- 失敗しやすい状況: 大容量ファイル、古いGPUドライバー、サードパーティプラグイン混在環境、ネットワーク越しのファイル(遅延や権限問題)。
- 代替手段: 別PCで開く、Photoshop以外の画像編集ソフトで一時的に編集して必要な形式で再保存する、あるいはファイルを分割して作業する。
よくある誤解と回避策
- 「最新版にすれば必ず直る」: 多くは改善しますが、最新版で新たな不具合が入ることもあります。更新前に安定版の情報を確認し、必要ならロールバックプランを用意してください。
- 「初期化するとすべてが元通り」: 初期化で設定依存の問題は解決しますが、カスタムプラグインや外部連携の問題は残ることがあります。
まとめと次のステップ
重要なポイント:
- 簡単な順序で切り分ける(Generator無効 → 設定リセット → GPU無効 → ドライバー更新 → ロールバック)。
- 設定は削除前にバックアップを必ず取る。
- 影響が大きい場合は、デザインチームとITが協力して再発防止策(共通設定、バージョン管理、アップデートスケジュール)を整備する。
重要: 問題が解消せず業務に支障が出る場合は、Adobeサポートへ再現手順とログを添えて連絡してください。
まとめ(短く):
本記事で紹介した手順を順に実行すれば、多くの「プログラムエラー」は解決できます。まずは最小の手間で済む方法から試し、段階的に原因を切り分けてください。
重要: 作業前に必ずファイルとカスタム設定のバックアップをとってください。再発時は本SOPを用いてチーム内で情報を共有してください。