Windows エラー「予期しない I/O エラーが発生しました (0xc00000e9)」の原因と修復手順

Windows を長年使っている方は、エラーの多くが起動後に起きることを知っています。しかし稀に、起動プロセス中やログイン直後に表示されるエラーも存在します。エラーメッセージ「an unexpected I/O error has occurred (0xc00000e9)」は、名前の通り I/O(入出力)デバイスに関連する問題を示します。キーボード、マウス、外付けドライブなどのハードウェア接続不良や、システムファイルの破損が原因になることが多いです。
この記事では、初心者でも試せる段階的な対処法と、システム管理者向けのチェックリスト、復旧プレイブック、テスト基準、よくある失敗パターン(逆効果になるケース)などを含め、実戦的に解決するための情報をまとめます。
重要: 重大な操作(内部ハードウェアの着脱、ブートセクタ修正、chkdsk の修復オプション実行)はデータ損失リスクを伴います。事前に可能な限りデータのバックアップを取ってください。
主要な原因のメンタルモデル
簡単な理解のための1行定義: 0xc00000e9 は「OS が起動時に必要な入出力デバイス/データに正常にアクセスできない状態」を示します。
原因の見立て方(ヒューリスティック):
- 物理的接続問題(ケーブル、ポート、外付け機器) → 最も発生頻度が高く、診断が容易。
- ドライバー問題(古い、壊れた、互換性のない更新) → 更新直後に発生しやすい。
- ファイルシステム/システムファイル破損 → chkdsk/SFC で検出される。
- ブートコードやブートローダーの不整合 → 起動前にエラーが出る場合に該当。
- マルウェアやセキュリティソフトの干渉 → 稀だが除外は必須。
次に、段階的な対処方法を説明します。
1. ハードウェアの確認
まず物理接続を点検します。多くの I/O エラーは単純な接触不良や破損が原因です。
手順:
- すべての周辺機器(マウス、キーボード、外付けHDD、USBハブ、プリンター、スピーカー、スキャナ等)を取り外します。
- 再起動してエラーが消えるか確認します。消えれば取り外したどれかが原因です。
- 外した機器を1つずつ接続し、どの機器でエラーが再現するか特定します。
- ケーブルやポートに目視や触診でダメージがないか確認します。必要に応じて別のケーブル/別ポートで試します。
- デスクトップで内部アクセスに慣れているなら、電源を切り、筐体を開けてメモリ、グラフィックカード、ストレージ(SSD/HDD)の接続を再装着(リスロット)してみます。接触不良が再現原因の場合があります。
- メーカー提供のキーボード/マウス向けユーティリティ(専用ドライバー・ソフト)がある場合は、そのソフトを一度アンインストールしてから試してください。専用ソフトが問題を引き起こすことがあります。
重要: 内部コンポーネントの取り扱いは静電気対策を行い、保証規定を確認してから行ってください。
2. システムドライバーの更新とロールバック
古い、または互換性のないドライバーは I/O の誤動作を引き起こします。ドライバーを最新にするか、逆に不具合が出た更新をロールバックします。
手順(デバイスマネージャー経由):
- Windows キー + R を押して「ファイル名を指定して実行」を開き、devmgmt.msc と入力して Enter。
- デバイスマネージャーで、I/O に関連ありそうなセクション(ヒューマンインターフェイスデバイス、ディスクドライブ、USB コントローラー、イーサネット、サウンドなど)を展開します。
- 対象デバイスを右クリックして「ドライバーの更新」を選びます。
- 「ドライバーソフトウェアの最新版を自動検索」を選んで更新を試みます。
更新後にエラーが発生した場合はロールバックを検討します。
ドライバーのロールバック手順
- devmgmt.msc を使ってデバイスマネージャーを開きます。
- 問題のデバイスを右クリックして「プロパティ」を開きます。
- 「ドライバー」タブを開き、「ドライバのロールバック」をクリックして指示に従います。
- ロールバック後、PC を再起動して状態を確認します。
注意: ロールバックがグレーアウトしている場合は前のバージョン情報が存在しないため、この操作はできません。
3. SFC と CHKDSK でシステムファイルとディスクを修復
システムファイルやファイルシステムの破損は、I/O エラーの典型的な原因です。Windows には SFC(System File Checker)と CHKDSK(Check Disk)という組み込みツールがあります。両方を順に実行してください。
SFC の実行手順
- スタートメニューの検索に「cmd」と入力し、表示された「コマンドプロンプト」を右クリックして「管理者として実行」。
- 管理者権限のコマンドプロンプトで次を実行します。
sfc /scannow
- スキャンが完了するまで待ちます。破損ファイルが見つかれば自動で修復を試みます。
CHKDSK の実行手順
- SFC と同様に管理者権限のコマンドプロンプトを開きます。
- 次のコマンドを実行して、修復オプション付きでディスクチェックを行います。
chkdsk c: /f /r /x
パラメータの意味:
- /f : 見つかったエラーを自動で修復
- /r : 不良セクタを検出し、読み取り可能なデータを回復
- /x : 必要であればボリュームを強制的にアンマウント
注意: システムドライブで chkdsk を実行すると次回の起動時にスキャンが予定されることがあります。作業中は電源を切らないでください。
4. ボリュームのブートコードを BOOTMGR にする
この手順は高度な操作で、エラーがブート直後(ログイン前)に表示される場合にのみ実施してください。ブートローダーやブートセクタが別のローダーに関連付いてしまった場合、Windows が期待する BOOTMGR が使われずエラーになります。
手順:
- Windows 回復環境(WinRE)で起動します。ログインできない場合は、電源ボタン長押し→再起動を製造元ロゴが出るまで繰り返すことで WinRE に入れることが多いです。
- WinRE の「トラブルシューティング」→「詳細オプション」→「コマンドプロンプト」を選びます。
- コマンドプロンプトで次を実行します。
bootsect nt60 /sys
- コマンド実行後、コマンドプロンプトを閉じて「今すぐ再起動」を選びます。
注意: bootsect コマンドはブートセクタを書き換えます。デュアルブート環境や特殊なブート構成がある場合は、事前に構成を控えておいてください。
5. マルウェアスキャン
十分に設定された Windows Defender や信頼できるサードパーティ製アンチウイルスを使っている場合、マルウェア感染の可能性は低いですが、他の手順で解決しないときは必須の確認項目です。
Windows Defender での手順:
- スタート → 設定 → 更新とセキュリティ → Windows セキュリティ を開きます。
- 「ウイルスと脅威の防止」を開き、「スキャン オプション」をクリック。
- 「フルスキャン」を選択し、「今すぐスキャン」を実行します。
- スキャン後、検出された脅威を隔離または削除し、PC を再起動して状況を確認します。
サードパーティ製ソフトを使う場合は、その製品のフルスキャンを実行してください。
代替アプローチと最終手段
- システムの復元ポイントがある場合は、問題が発生する前の復元ポイントに戻す。
- カスタムの復旧メディア(インストールメディア)を使って「スタートアップ修復」を試す。
- 必要に応じて、OS のクリーンインストールを行う(最終手段)。重要なデータは事前にバックアップ。
注意: クリーンインストール前に、データ復旧の観点で外部ツールやライブ Linux メディアを使ってデータを救出しておくと安全です。
いつこの方法で失敗するか(逆例)
- 内蔵ストレージ(SSD/HDD)が物理的に故障している場合: chkdsk や SFC では修復できません。SMART エラー、異音、検出不能なデバイスは交換が必要です。
- 誤ったブート修復を行い、デュアルブート構成を壊した場合: ブートメニューを復旧するための追加作業が必要です。
- ファームウェア(BIOS/UEFI)レベルの問題または互換性の問題は、これらのツールでは解決できないことがあります。
役割別チェックリスト
ホームユーザー:
- 外付け機器をすべて外す。
- 別の USB ポート/ケーブルで再試行。
- SFC と CHKDSK を実行。
- Windows Defender のフルスキャンを実施。
- 最後に、必要ならシステムの復元を検討。
システム管理者/IT 担当:
- イベントログ(イベントビューア)でエラーコードと前後のログを確認。
- デバイスドライバーの展開履歴と Windows Update 履歴を確認。
- SMART とストレージの詳細診断を実行(ベンダー提供ユーティリティ)。
- WinRE でブート修復コマンドを実行し、必要に応じてブート構成データ(BCD)のバックアップおよび修復。
復旧プレイブック(SOP)
- 最低限の外付け機器を取り外す。
- 起動を試み、エラーの再現を確認。
- 再現する場合はセーフモードまたは WinRE で起動。
- 管理者権限で SFC → CHKDSK を実行。
- デバイスドライバーの更新/ロールバックを行う。
- 必要なら bootsect / bootrec を使ってブート領域を修復。
- ウイルススキャンを実行。
- 効果が無ければデータをバックアップして OS 再インストールを検討。
このプレイブックは、再現性が高い順に実行することで復旧時間を短縮します。
テストケースと受け入れ基準
受け入れ基準:
- PC が通常通りログイン画面まで到達し、デスクトップを表示できること。
- 起動後 30 分間、クラッシュや同一エラーが発生しないこと。
- デバイスマネージャーに不明なデバイスやエクスクラメーション(!)が表示されていないこと。
基本テストケース:
- 周辺機器無しで通常起動できるか。
- 各デバイスを一つずつ接続し、どれでエラーが再現するか確認する。
- SFC と CHKDSK 実行後、問題が解決するか。
- bootsect 実行後、ブートが復旧するか(ログイン前のエラーが対象)。
リスクと軽減策
- データ損失リスク: 重要。可能な限り外部ドライブやネットワークにバックアップ。
- ブート修正ミス: 事前に BCD のバックアップを取る。修復手順は慎重に実行。
- ハードウェア交換の誤判断: SMART 情報やベンダー診断で物理故障を確認する。
用語集(一行定義)
- I/O: 入出力(Input/Output)デバイスや操作の総称。
- SFC: System File Checker。Windows のシステムファイル整合性チェックツール。
- CHKDSK: Check Disk。ファイルシステムとディスクの不良セクタ検査/修復ツール。
- BOOTMGR: Windows ブートマネージャー。Windows のブートプロセスを開始する実体。
まとめ
エラー 0xc00000e9 は物理接続、ドライバー、システムファイル、ブート設定、マルウェアのいずれか(または組み合わせ)によって発生します。まず周辺機器の切り離し、次にソフトウェア的な診断(ドライバー、SFC、CHKDSK)、最後にブート修復の順で進めると効率的です。重大なデータがある場合は、復旧作業前にバックアップまたはデータ救出を優先してください。
重要: 繰り返し同じエラーが出る場合は、ストレージの物理故障(寿命)を疑い、早めの交換とデータ移行をおすすめします。
決定支援図
以下は簡易的なトラブルシューティングのフローチャートです。
flowchart TD
A[起動時に 0xc00000e9 が出る?] -->|はい| B{外付け機器が接続されているか}
B -->|はい| C[すべて取り外して再起動]
C --> D{エラー消えたか}
B -->|いいえ| D
D -->|はい| E[原因特定: 個別機器を試す]
D -->|いいえ| F[セーフモード / WinRE で起動]
F --> G[SFC を実行]
G --> H[CHKDSK を実行]
H --> I{改善したか}
I -->|はい| E
I -->|いいえ| J[ドライバーのロールバック/更新]
J --> K{改善したか}
K -->|はい| E
K -->|いいえ| L[bootsect, bootrec を実行(WinRE)]
L --> M{改善したか}
M -->|はい| E
M -->|いいえ| N[データをバックアップして OS 再インストール]