Windows 11/10での外付けドライブへのファイルコピーが途中で止まる問題を解決する

重要: どの手順でもデータを上書きまたは消去する操作(フォーマット、パーティション変更など)を行う前に必ずバックアップを取ってください。
問題の概要
多くのユーザーが、Windows 11/10で外付けドライブへファイルをコピーまたは移動する際に、Explorer のコピー処理が途中で停止(通常は進捗バーが半分付近でゼロバイト表示のまま固まる)する現象を報告しています。エラーメッセージが表示されず、何が原因か分かりにくい点が厄介です。本記事は、この現象の原因になり得る代表的な項目を順に検査し、再発を防ぐための実用的な対処法をまとめます。
目次
- チェックリストと事前準備
- ドライブの空き容量を確認する
- CHKDSK スキャンを実行する
- Windows Search(インデックス作成)を無効化する
- 外付けドライブの書き込みキャッシュを有効化する
- Remote Differential Compression を無効化する
- サードパーティ製ウイルス対策ソフトを一時無効化する
- ストレージドライバーを更新する
- クリーンブートで再現するか確認する
- ドライブを NTFS に再フォーマットする前の注意点
- トラブルシューティングの手順書(チェックリスト)
- 失敗例と代替手段
- リスクとマネジメント
- 1行用語集
- まとめ
チェックリストと事前準備
まず以下を行ってください:
- 重要データは別の場所にバックアップする(クラウド、別の外付けドライブなど)。
- コピー失敗時の挙動をメモする(進捗バーの位置、表示メッセージ、イベント発生時間)。
- 問題発生時に使ったケーブルやUSBポート、PCのモデル情報を控える。
Tips: コピー中にログを取りたい場合は、コピー開始時刻と失敗時刻を記録すると原因特定に役立ちます。
1. ドライブの空き容量を確認する
なにより最初に確認すべきは、コピー先ドライブの空き容量です。コピー対象の合計サイズがドライブの空き容量を超えていると当然コピーは失敗または途中で止まります。
手順:
- コピー先ドライブをPCのUSBスロットに接続します。
- Windowsキーを押しながら E を押してエクスプローラーを開きます。
- コピー先となる外付けドライブを右クリックし、プロパティを選択します。
- 「全般」タブの円グラフで容量と空き領域を確認します。
画像例:
画像の説明: 外付けドライブの全体容量と使用済み容量、空き容量を示す円グラフ。
空き容量が不足している場合は不要なファイルを削除するか、別のドライブを使ってください。注意: FAT32 の場合、単一ファイルは最大サイズが 4 ギガバイト(4GB)までという制約があります。4GB を超えるファイルを扱う必要があるなら NTFS を検討してください(後述)。
2. CHKDSK スキャンを実行する
症状: ディスクの不良セクタやファイルシステムの不整合があると、コピー中に読み取り/書き込みエラーが発生して処理が停止することがあります。CHKDSK(Check Disk)で不良セクタやファイルシステムエラーを確認・修復します。
手順(管理者権限が必要):
- 外付けドライブをPCに接続します。
- Win + S を押して検索を開きます。
- 検索ボックスに cmd と入力します。
- 検索結果の「コマンドプロンプト」を右クリックして「管理者として実行」を選択します。
- 管理者権限のコマンドプロンプトで次のコマンドを入力します(例: ドライブが E: の場合):
chkdsk E: /f /r /x
- /f: ファイルシステムのエラーを修復します。
- /r: 不良セクタを検出して読み取り可能な情報を回復します。
- /x: 必要ならボリュームを強制的にアンマウントします。
画像例:
CHKDSK 実行後、ログを確認してエラーが修復されたかを確認してください。修復不能の不良セクタが多数ある場合はハードウェア障害の可能性が高いため、ドライブ交換を検討します。
3. Windows Search のインデックス作成を無効化する
理由: インデックス作成(Windows Search)が多数ファイルの読み取りを並列で行うことでI/O競合が発生し、コピーが遅くなったり停止したりする場合があります。一時的にサービスを停止して再試行してください。
手順:
- Win + R を押して「ファイル名を指定して実行」を開きます。
- ボックスに services.msc と入力して OK をクリックします。
- サービス一覧で「Windows Search」を探してダブルクリックします。
- 「スタートアップの種類」を「無効」に変更します。
- 「停止」をクリックしてサービスを停止します。
- 「適用」→「OK」を押します。
画像例:
完了したら、エクスプローラーでコピーを再試行してください。問題が解消した場合は、インデックス作成が影響していたと判断できます。必要に応じて作業後にサービスを再有効化してください。
4. 外付けドライブの書き込みキャッシュを有効にする
背景: 書き込みキャッシュはドライブのパフォーマンスを改善しますが、電源断時にデータが失われるリスクが増す点に注意してください。書き込みキャッシュを有効にするとコピー処理が安定する場合があります。
手順:
- 外付けドライブを接続します。
- デバイスマネージャーを起動します(Win + X → デバイスマネージャー)。
- 「ディスクドライブ」を展開します。
- 対象の外付けドライブを右クリックして「プロパティ」を選択します。
- 「ポリシー」タブを開きます。
- 「パフォーマンスを優先する(Better performance)」または「デバイス上で書き込みキャッシュを有効にする」のチェックボックスを有効にします。
- OK を押して設定を保存します。
画像例:
注意: 書き込みキャッシュを有効にした場合、取り外す前に必ず「ハードウェアの安全な取り外し」を行ってください。
5. Remote Differential Compression を無効化する
概要: Remote Differential Compression(リモート差分圧縮)はネットワーク越しのデータ同期で差分だけを送る機能ですが、ローカルコピーやワイヤレス接続でレイテンシを生むことがあるため、無効化して症状が改善するか確認します。
手順:
- タスクバーの検索ボックスに “Windows の機能の有効化または無効化” と入力します。
- 検索結果から該当項目を開きます。
- リストから “Remote Differential Compression” のチェックを外します。
- OK を押して変更を適用し、PC を再起動します。
画像例:
再起動後にコピーを試してください。
6. サードパーティのウイルス対策ソフトを一時無効化する
説明: 一部のアンチウイルス製品はファイル書き込みを検査するため、コピー処理をブロックまたは遅延させることがあります。コピーを試す前にリアルタイム保護を一時的にオフにしてから再試行してください。
手順:
- タスクトレイのアンチウイルスアイコンを右クリックします。
- 表示されるメニューから「一時的に無効にする」や「リアルタイム保護をオフにする」等の項目を選びます。
- コピーが成功するか確認します。
注意: インターネット接続は切るか、信頼できるネットワーク設定の下で行い、終わったら必ず有効化してください。
7. ストレージドライバーを更新する
説明: 古いまたは壊れたドライバーが原因で通信エラーが発生することがあります。ドライバーの自動検索やメーカーサイトから手動で最新ドライバーを入手して更新してください。
手順:
- 外付けドライブをPCに接続します。
- デバイスマネージャーを開きます。
- 「ディスクドライブ」を展開し、対象のドライブを右クリックして「ドライバーの更新」を選びます。
- 「ドライバー ソフトウェアの最新版を自動検索」を選択します。
画像例:
自動で見つからない場合は、外付けドライブの製造元ウェブサイトから最新のドライバーをダウンロードしてインストールしてください。
8. クリーンブートで再現するか確認する
目的: クリーンブートによりサードパーティ製の常駐プログラムやサービスの干渉を排除できます。問題が消える場合は、起動時に有効化される何らかのプロセスが原因です。
概要手順:
- Win + R を押して msconfig と入力して起動します。
- 「サービス」タブで「Microsoft のサービスをすべて隠す」にチェックを入れ、「すべて無効」をクリックします。
- 「スタートアップ」タブで「タスクマネージャーを開く」をクリックし、タスクマネージャーで不要なスタートアップ項目を無効にします。
- PC を再起動して、問題が再現するか確認します。
画像例:
原因が特定できた場合は、スタートアップ項目やサービスを一つずつ戻して検証してください。
9. ドライブを NTFS に再フォーマットする前の注意点
背景: FAT32 は単一ファイルの最大サイズが 4GB に制限されています。大きなファイルをコピーする必要がある場合、NTFS へフォーマットすることでこの制限を取り除けます。ただし、フォーマットはドライブ内の全データを消去します。
手順:
- 重要なデータを別ドライブへ必ずバックアップします。
- エクスプローラーで該当ドライブを右クリックし「フォーマット」を選択します。
- 「ファイルシステム」から NTFS を選択します。
- 「開始」を押してフォーマットします。
画像例:
注意: exFAT は大容量ファイルに対応しますが、Windows固有のNTFSの方がセキュリティ/アクセス制御面で優れているため、Windows専用で使うなら NTFS を推奨します。
トラブルシューティングの手順書(チェックリスト)
基本フロー(短縮版):
- 空き容量確認 → 十分でないなら空き確保
- CHKDSK 実行
- Windows Search 停止
- 書き込みキャッシュON(必要に応じて)
- RDC 無効化
- サードパーティAV停止
- ドライバー更新
- クリーンブートで再現確認
- 必要なら NTFS にフォーマット
詳細チェックリスト(役割別):
エンドユーザー:
- ケーブルとポートの差し替えを行う
- 別PCで同じドライブをテストする
- バックアップを確実に取る
IT 管理者:
- デバイスドライバーの最新版を配布する
- グループポリシーやウイルス定義の設定を検証する
- ハードウェア診断ツールで SMART をチェックする
技術サポート:
- 再現手順を記録する
- チェック済み項目をリスト化して顧客へ共有する
失敗例と代替手段
失敗例:
- CHKDSK が多数の不良セクタを報告し修復不能: ハードウェア故障が疑われます。データ救出専門サービスか新しいドライブへの移行を検討してください。
- フォーマットしてもコピーが途中で固まる: ケーブル、ハブ、USBポート、PCのコントローラ(チップセット)に問題がある可能性があります。別のPCで試すか、USB-SATA変換アダプターを交換して検証してください。
代替手段:
- Robocopy や Teracopy など信頼性の高いファイルコピー用ユーティリティを使用する。Robocopy は再試行やログ出力に優れます。
Robocopy の簡単な例:
robocopy "C:\path\to\source" "E:\path\to\dest" /MIR /R:3 /W:5 /V /LOG:C:\copy_log.txt
- /MIR: ミラーリング(ソースと同じにする)
- /R:3: 再試行回数 3 回
- /W:5: 再試行間の待機 5 秒
Robocopy は一時的なネットワーク/デバイスエラーへの耐性が高く、進捗や失敗したファイルのログを残します。
リスクとマネジメント
主なリスク:
- データ損失(フォーマット、パーティション操作)
- 書き込みキャッシュ使用時の電源断によるデータ未書き込み
- サードパーティ製ソフトの無効化中のセキュリティリスク
緩和策:
- 常にバックアップを保持する
- 書き込みキャッシュを有効化した場合は安全な取り外しを徹底する
- ウイルス対策無効化は切断されたネットワークまたは安全な環境で短時間だけ行う
1行用語集
- CHKDSK: Windows 標準のディスクチェックツール
- NTFS: Windows の高機能ファイルシステム
- FAT32: 古いファイルシステム。単一ファイルは 4GB 制限
- RDC: Remote Differential Compression(リモート差分圧縮)
- Robocopy: 高信頼なコマンドラインファイルコピー
決定フローチャート
以下は問題発生時の高速判断用フロー(Mermaid 形式):
flowchart TD
A[コピーが途中で止まる] --> B{空き容量は十分か}
B -- いいえ --> C[不要ファイルを削除または別ドライブへ移す]
B -- はい --> D[CHKDSK を実行する]
D --> E{エラーが修復されたか}
E -- はい --> F[コピーを再試行]
E -- いいえ --> G[別PCでテスト/ドライブ交換を検討]
F --> H{改善したか}
H -- はい --> I[原因は一時的な不整合]
H -- いいえ --> J[Windows Search 停止、AV 無効化、RDC 無効化]
J --> K[ドライバー更新とクリーンブート]
K --> L{改善したか}
L -- はい --> M[原因プロセスを特定して対処]
L -- いいえ --> N[バックアップ後に NTFS フォーマットを検討]
テストケースと受け入れ基準
テストケース:
- 小さなファイル群(合計 < 1GB)をコピーして問題が出るか確認
- 単一の大きなファイル(例: 10GB)をコピーして FAT32 制限を確認
- 別PC、別ケーブルで同じ操作を試す
受け入れ基準:
- 同じファイルを 3 回連続でコピーして完了する
- コピー中の進捗が最後まで動作し、エラーはログに残らない
いつ再フォーマットすべきでないか(逆説的チェック)
- ドライブに唯一のコピーがあるとき
- CHKDSK が修復可能なエラーを示しているとき(まず修復)
- データのバックアップが確保できないとき
これらの場合はまずデータ救出やバックアップを優先してください。
簡潔な実行プレイブック(SOP)
- 重要ファイルをバックアップする
- ドライブ空き容量を確認する
- CHKDSK を実行してエラーを修復する
- Windows Search を停止し、AV をオフにして再試行する
- 書き込みキャッシュを設定してパフォーマンスを改善する
- ドライバー更新とクリーンブートを試す
- それでも改善しない場合はバックアップ後に NTFS フォーマット
まとめ
Explorer のファイルコピーが途中で止まる問題は、単純な空き容量不足からハードウェア故障まで複数の原因が考えられます。本記事で示した順序で検証すれば、最も頻度の高い原因は短時間で切り分けられます。最終的にドライブが物理的に劣化している場合は交換を検討してください。
重要: フォーマットやパーティション操作など、データを消去する手順を行う前には必ずバックアップを取ってください。
追加リソースと参考作業
- Robocopy のログを用いた失敗ファイルの解析
- ドライブ製造元が提供する診断ツールの利用
- データ復旧サービスに依頼する場合の準備(ログ、シリアル番号、発生状況の記録)