Windows 11のキーボード関連設定は従来の「言語と地域」から新しい「Keyboard」セクションに移動しています。ただしこれは実験的機能で、Windows Insider ビルド 25300 以降で ViVeTool を使って有効化する必要があります。本記事では準備、実行手順、並び替え方法、トラブルシューティング、管理者・利用者向けチェックリストまで詳しく解説します。
概要
Windows 11は複数言語をサポートしており、キーボードレイアウトの追加や切替えが可能です。従来はこれらの設定が「言語と地域(Language & region)」の中にあり、キーボード設定を探しにくいケースがありました。Microsoftはこれを改善するため、キーボード関連の設定を「Keyboard」という新しいセクションにまとめるテストを行っています。本記事は、その有効化手順と活用方法、注意点をわかりやすく整理しています。
重要な定義(1行ずつ)
- Windows Insider Build:Windowsの開発版アップデートを受け取るプレビュー版。Devチャネル等がある。
- ViVeTool:Windowsの隠し機能(フラグ)を有効/無効にするサードパーティ製のコマンドラインツール。
- UUP Dump:Windowsのアップデートパッケージをダウンロードするツール。Insider登録なしで利用できることがある。
新セクション「Keyboard」がもたらす主な利点
- キーボード関連設定が一箇所に集約され、探しやすくなる。
- 設定画面でキーボードレイアウトの順序を直接編集できる(ドラッグ&ドロップ、移動ボタン)。
- タスクバーの言語メニューに反映され、実際の切替え順が直感的に管理できる。
注意
この機能は実験的です。Insiderビルドを使用するか、ビルドを取得してViVeToolで有効化する必要があります。製品版のWindows 11で一般公開される前に仕様が変わる可能性があります。
事前準備(要点)
- 対象ビルド:Windows Insider ビルド 25300 以降であること。
- 管理者権限:ViVeTool の使用には管理者権限が必要です。
- ViVeToolの入手:GitHubから最新のViVeToolをダウンロードして、分かりやすい場所に展開してください。
- ビルド入手方法:既にDevチャネルのInsiderであればWindows Updateでアップグレード可能。Insiderに登録したくない場合はUUP Dump等で該当ビルドを取得できます。
重要
UUP Dumpは公式ツールではありません。利用には自己責任が伴います。組織で導入する場合はポリシーとセキュリティ承認を得てください。
新しいキーボードセクションを有効化する手順(概要)
手順は大きく分けて「ビルド準備」「ViVeTool配置」「フラグの有効化」「確認」の4フェーズです。以下は、管理者権限のコマンドプロンプトで実行する具体的な手順です。
ステップ 1:最新の Windows 11 Insider ビルドを取得する
- Dev チャネルのWindows Insiderであれば、Windows Updateからビルド 25300 以降にアップグレードしてください。
- Insider登録したくない場合は、UUP Dump などで該当ビルドをダウンロードしてインストールします(自己責任)。
ステップ 2:ViVeTool を準備する
- GitHub から ViVeTool をダウンロードします。
- 分かりやすいフォルダ(例: C:\vivetool など)に展開してください。深いネストは避けると操作が楽です。
ステップ 3:管理者としてコマンドプロンプトを起動する
- Win + R を押して「ファイル名を指定して実行」を開きます。
- テキストボックスに cmd と入力し、Ctrl + Shift + Enter を押して管理者権限でコマンドプロンプトを起動します。
ステップ 4:ViVeTool のあるフォルダへ移動してフラグを有効化する
コマンド例(1行ずつ実行):
cd c:\
cd vivetool
vivetool /enable /id:34912776
- コマンドが実行されると「successfully set feature configuration(s)」のような成功メッセージが表示されます。
- 実行後、exit と入力してコマンドプロンプトを閉じてください。
- システムを再起動して変更を反映させます。
ロールバック(無効化)の例
同じ機能フラグを無効化するには、管理者コマンドプロンプトで次のように実行します(例):
cd c:\vivetool
vivetool /disable /id:34912776
(無効化コマンドはViVeToolの一般的な使い方に基づく例です。環境により出力は変わります。)
ステップ 5:設定アプリで確認する
- Win + I を押して設定アプリを起動します。
- 左メニューから「Time & language」を選択します。
- 従来の「Typing」の代わりに「Keyboard」という新しいオプションが表示されます。
重要なポイント
- フラグの有効化が成功しても、ビルドやロールアウト状態によっては表示や動作が微妙に異なる場合があります。
キーボードレイアウトの順序を変更する方法
新しい「Keyboard」セクションでは、キーボードレイアウトの並び順を直接編集できます。手順は以下の通りです。
- Win + I で設定を開く。
- 「Time & language」を選択。
- 「Keyboard」を選択。
- リスト内の各キーボードの横にある「三本線(︙)」やコンテキストメニューをクリックします。
- 「Move up」で上へ、「Move down」で下へ移動できます。または、アイテムをクリックしてドラッグ&ドロップして並び替えます。
変更後、タスクバーの入力切替メニューにも同じ順序で反映されます。Windows + D で言語メニューを開き、順序が設定通りか確認してください。
使い方と運用のヒント
- 頻繁に使うレイアウトを上位に置くと切替の回数が減ります。
- 複数ユーザーが同じ端末を使う場合は、ユーザーごとに優先順位を設定すると混乱が少ないです。
- 管理者はグループポリシーや配布スクリプトで標準構成を配布することを検討してください(企業の方針に従って)。
トラブルシューティング(よくある問題と対処)
問題:設定に「Keyboard」が表示されない
- 対策:ビルドが 25300 未満でないか確認する。ViVeTool の実行ログにエラーが出ていないか確認する。管理者権限で実行しているか確認する。
問題:コマンド実行後に成功メッセージが出ない
- 対策:ViVeTool のバージョンが古い可能性があります。最新版をダウンロードして再実行してください。コマンドのパスが正しいか(フォルダ位置)を確認する。
問題:順序変更がタスクバーに反映されない
- 対策:一度サインアウト/サインイン、または再起動してキャッシュをクリアしてください。
管理者と利用者向けチェックリスト
管理者チェックリスト
- 対象端末のビルドが 25300 以降であることを確認する
- ViVeTool の最新版をダウンロードして配布パッケージを作成する
- 管理者権限での実行手順書を用意する
- ロールバック手順(/disable)をドキュメント化する
- 影響範囲(ユーザーサポート、ポリシー)をチームに共有する
利用者チェックリスト
- 設定で「Keyboard」が表示されているか確認する
- よく使うレイアウトを上位に移動する
- 不要なレイアウトは削除してリストを整理する
テストケースと受け入れ基準(Критерии приёмки)
- ケース 1:ViVeTool を実行後、設定アプリに「Keyboard」が表示されること。
- ケース 2:レイアウトを「Move up / Move down」またはドラッグで並び替え後、タスクバーの言語メニューに同じ順序で反映されること。
- ケース 3:ロールバックコマンド実行後、従来の表示に戻ること。
受け入れ基準
- 上記のすべてのケースが正常に再現でき、ユーザー操作で問題が発生しないこと。
セキュリティとプライバシーの注意点
- ViVeTool はシステムレベルのフラグを変更します。管理者権限が必要であり、誤った操作は想定外の動作やシステム不安定性を招く可能性があります。
- UUP Dump や非公式ツールを使用する場合は、ソースの検証と組織の承認を必ず行ってください。
- 個人情報やキーストロークに関する挙動に変更が加わるわけではありませんが、実験的機能のため意図しない挙動が発生したときは直ちに無効化してください。
ロールバック手順(簡易ランブック)
- 管理者としてコマンドプロンプトを起動する
- ViVeTool のあるフォルダへ移動する(例: cd c:\vivetool)
- 次のコマンドを実行する:
vivetool /disable /id:34912776
- 実行結果を確認して、システムを再起動する
- 設定で「Keyboard」が消えて「Typing」など元の表示に戻っていることを確認する
代替アプローチ(実験機能を試す他の方法)
- 公式Insider登録:MicrosoftのInsiderプログラムに登録してDevチャネルで受信する方法。安全性とトラブルシューティングの面で利点がある。
- 仮想マシンでテスト:ホストOSを汚さないために、VM上でInsiderビルドを試すことを推奨。
意思決定フローチャート
flowchart TD
A[実験機能を試したい?] -->|はい| B{会社の承認はあるか}
B -->|はい| C[Insider登録かUUP Dumpでビルド取得]
B -->|いいえ| D[個人環境でのみテスト]
C --> E[ViVeToolを配置してフラグ有効化]
D --> E
E --> F[確認と並び替えテスト]
F --> G{問題あり?}
G -->|はい| H[ロールバックとログ収集]
G -->|いいえ| I[運用へ展開検討]
簡易用語集(1行)
- ViVeTool:Windowsの機能フラグを操作するコマンドラインツール。
- UUP Dump:Windowsの更新パッケージをダウンロードするためのツール群の総称。
- Insider Build:Microsoftが配布するプレリリース版のWindowsビルド。
まとめ
新しい「Keyboard」セクションは、キーボード設定の発見性と操作性を向上させます。実験的機能のため、有効化には最新のInsiderビルドと管理者権限、ViVeToolの使用が必要です。導入を検討する際は、事前にテストケースを用意し、ロールバック手順を確立してから社内展開してください。
重要
実験的機能のため、組織での展開前に十分な検証を行ってください。
エンドノート
この記事で紹介した手順は、執筆時点での挙動に基づきます。WindowsのアップデートやViVeToolの仕様変更により手順や挙動が変わる可能性があります。常に公式ドキュメントとツール配布元の情報を併せて確認してください。