要約
安いメモリーカードは魅力的です。割引価格で追加ストレージを確保できると嬉しいものです。しかし、格安のmicroSDカードの中には偽造品が多く含まれています。しかもそれらはAmazon、eBay、Temu、Wishなどの大手プラットフォームにも出回っています。安全だと思っている場所でも安心できない場合があります。
本記事では、購入前に偽物を見分けるチェックポイントと、既に購入してしまったカードを検証する具体的な手順を分かりやすく説明します。
重要用語: microSD - 小型の半導体記憶媒体。容量と速度クラスが主な仕様。
どのように購入前に偽造カードを見分けるか
偽造にもレベルがある
偽物のmicroSDカードにも簡単に見破れるものから、プロ仕様で主要販売サイトに紛れ込んでいるものまで様々なレベルがあります。次のチェックリストを順に確認すれば、本物かどうかの確度を上げられます。
パッケージとブランド表記を確認する
- 正規ブランドでもラインナップに存在しない容量表記があるか確認する。多くのメーカーは仕様ページで出している容量・型番を公開しています。公式サイトと照合しましょう。
- ブランドロゴのフォントや色、ラベルの印刷品質に注目。ずれやにじみ、明らかな印刷揺れは偽造の赤旗です。
- 梱包に付属のステッカーやシール、保証書の有無と内容をチェック。正規品は保証情報が一貫しています。
よくある偽造パターンの例
「Xiaomi」512GB microSD
表面上はXiaomiブランドが入っているように見えますが、実際にはXiaomiがmicroSDを製造していないことがあります。つまり、無名メーカーの製品にブランド名だけを付けて販売されている可能性が高いです。
無名ブランド/怪しい型番
無名ブランドや聞いたことのないブランドで、大容量を安く売っている商品は要注意です。パッケージの型番が公式ラインナップと一致しない場合、容量が偽装されている可能性があります。
表示・仕様が矛盾しているもの
メーカーの正規カタログにない型番や、同じブランドで別のサイトに出ている型番と仕様が合わないケースがあります。販売ページに掲載されている写真と商品の実物が一致しないこともあります。
注: Amazonは完璧ではありませんが、出品者の評価や返品ポリシーが整備されている分、TemuやWishよりは安心度が高い場合が多いです。
購入後にカードを検査する方法
なぜ検査するか
見た目だけでは確実に判別できません。偽装されたカードは実容量がごく小さいにもかかわらず大容量と表示されるため、書き込みが上書きされてデータが失われます。重要な写真やデータを保存する前に検査することが最も安全です。
検査の基本原理(ワンライン定義)
容量検証ツールは、ドライブの「空き領域」に実データを書き込み、それを読み戻して矛盾がないかを確認します。矛盾があれば偽造または不良です。
推奨ツールと使い方の概要
以下のツールは代表的で、OS環境に応じて使い分けます。
FakeFlashTest (Windows)
- 機能: クイックサイズテスト(ランダム位置へ512バイトの書き込み・読み取り)と、空き領域全体のテストが可能。
- 長所: 無料で高速、偽造容量の検出に優れる。
- 短所: GUIベースでWindows専用。非常に大きなドライブでは時間がかかる場合がある。
FakeFlashTest 要点
- OS: Windows
- 開発者: RMPrepUSB
- 価格: 無料
使用の手順(概略):
- カードをPCに接続してドライブ文字を確認する。
- FakeFlashTestで対象ドライブを選ぶ。
- まずはQuick Size Testを実行。異常ログが出たら完全検査に進む。
- Test Empty Spaceで全領域を検査し、結果ログを保存する。
H2testw (Windows)
- 機能: 空き領域へファイルを書き込み、読み取りで整合性をチェックする古典的ツール。
- 長所: シンプルで広く使われている。小容量のカードには短時間で済む。
- 短所: 大容量カードでは非常に時間がかかる。
H2testw 要点
- OS: Windows
- 開発者: How to Recover
- 価格: 無料
使用の手順(概略):
- ドライブを選択してWrite+Verifyを実行。
- 全データを書き込み・読み込みするため時間がかかるが結果は分かりやすい。
- エラーや書き込み不能セクタがあれば偽造/不良の可能性。
Fight Flash Fraud (F3) (Linux / macOS)
F3はコマンドラインツールで、LinuxやmacOSで動作します。GUIが苦手な人向けにはF3X(macOS GUI)やF3-qt(Linux GUI)があります。動作原理は上記ツールと同じです。
使用の手順(概略):
- f3write / f3read の組み合わせでテストを行う。
- f3writeはドライブに複数ファイルを書き込み、f3readで読み戻して検証する。
- 速度やログを確認して正常性を判断する。
検査時の注意点
- 検査前にドライブ内のデータはすべて消去されます。重要データがある場合は事前にバックアップを取ってください。
- 検査は時間がかかることがあります。空き容量が大きいほど全領域テストには時間を要します。
- 読み書きエラーが複数出る場合は「不良品」と判断して使わない方が無難です。
実践チェックリスト(購入前と購入後)
購入前チェック(購入画面・商品ページで行えること):
- ブランドの公式サイトで該当型番と容量を確認したか
- 出品者の評価と返品ポリシーを確認したか
- 商品写真と説明が一致しているか
- 極端に安すぎないか(相場を調べる)
購入後チェック(受け取ったらすぐに):
- パッケージと本体に不一致がないか確認
- FakeFlashTest/H2testw/F3で容量検査を実行
- ベンチマークで速度が公称値に近いか確認(必要なら)
役割別チェックリスト:
- 購入者(一般): 見た目・型番・価格・返品可否を確認。最初に小さなファイルを保存してみる。
- 写真家/プロユーザー: 高信頼のブランドを選択。大容量を外付けに使う前にフルテストを必ず実施。
- リセラー/小売店: 仕入れロットをランダム抽出で検査し、不良が多ければ取引先に問い合わせる。
使い方のソップ(簡易)
- カードをカードリーダーを通してPCに接続する。
- 重要データが入っていないことを確認し、必要ならバックアップを取る。
- FakeFlashTestのQuick Size Testを実行。まずは短時間で概況を把握。
- 異常がある場合、Test Empty SpaceやH2testwでフル検査を行う。
- エラーが出たら速やかに返品/返金手続きを行うか、代替利用(テスト用、非重要データ用)に回す。
代替活用法(偽造カードが出た場合の再利用アイデア)
データ保存用途に使うのは避けましょう。ただし、完全に無駄になるわけではありません。
- 一時的なバックアップや大きな読み込み作業のテンポラリーストレージ
- 撮影のダミーカードや実験用(性能検証のテストピース)
- ファームウェアテスト用の媒体(重要データは保存しない)
いつ検査ツールでも見抜けないケース(失敗の例)
- 初期状態では偽造品が一見正常に見えるが、長時間運用でログが破損するケース。
- 高度な偽装で不良ブロック管理(FATエミュレーション)を行い、一時的には正常値を返す製品。 このようなケースを完全に回避するには、信頼できるブランドを選び、長期的に運用実績があるかを基準にするのが最も安全です。
リスクと緩和策
- リスク: データ損失 緩和策: 重要データは常に複数箇所にバックアップを取る。クラウド保存を併用する。
- リスク: 金銭的損失 緩和策: 評判の良い販売者・公式ストアで購入、購入記録を保存し返品期間を確認する。
意思決定フロー(簡易)
次の簡易フローチャートを基に、購入または検査の判断を行ってください。
flowchart TD
A[商品ページを確認] --> B{ブランドは信頼できるか}
B -- はい --> C{価格は相場内か}
B -- いいえ --> E[慎重に検討または回避]
C -- はい --> F[購入]
C -- いいえ --> E
F --> G[受領後すぐに検査]
G --> H{検査結果は正常か}
H -- はい --> I[通常使用]
H -- いいえ --> J[返品・返金・代替活用]
短いまとめ
格安microSDカードには偽造品が多く混在します。購入前の目視チェックと、購入後のソフトウェア検査(FakeFlashTest、H2testw、F3など)を組み合わせることで、偽造や不良を高確度で見分けられます。重要なデータを扱う場合は信頼できるブランドを使い、常にバックアップを取ってください。
重要: 検査はカード内のデータを消去します。検査前に必ずバックアップを取ってください。
まとめの要点:
- 見た目とブランド情報を必ず確認する。
- 購入後はFakeFlashTest/H2testw/F3で必ず検査する。
- 読み書きエラーが出たら使用を中止し、返品や代替用途を検討する。
追加参考: 偽造カードは単に容量表示を偽るだけでなく、速度や耐久性でも問題を起こします。重要データの保管には信頼できる製品を推奨します。