Windows Serverで部門別共有ドライブを作成する方法

Windows Serverで中央管理された共有ドライブを作成すると、個々のPCに頼らずに重要なドキュメントを一元管理できます。本ガイドでは、SMB共有を使って部門別の共有フォルダを作成し、アクセスベース列挙と最小特権の考えを反映した権限設定を適用する手順を詳しく解説します。
主要語彙(1行定義)
- SMB: Windowsで一般的に使われるファイル共有プロトコル。
- アクセスベース列挙: 利用者がアクセス権のあるファイルやフォルダのみを一覧表示する仕組み。
- 最小特権: ユーザーに必要最低限の権限だけを付与する原則。
ステップ1: Server Managerで共有フォルダを作成する
手順(管理者アカウントで実行):
- サーバーにログオンし、Server Managerを開きます。
- File and Storage Services > Shares に移動します。
- 右上の Tasks をクリックして New Share を選択します。
- 共有の種類で SMB Share – Quick を選びます(SMBはWindows環境の標準プロトコルです)。
- 共有を作成するサーバーを選択します。
- 共有名をわかりやすく設定します(例: Sales、HR、Finance)。
- オプションで「アクセスベース列挙を有効にする(Enable access-based enumeration)」をチェックすると、利用者が権限のないファイルやフォルダを表示できなくなります。
重要: 共有名やパスは後で運用上の混乱を避けるために命名規則(例: 部門名_共有)を決めておくと便利です。
ステップ2: 最小特権で権限を構成する
安全な共有を作るには、以下の権限設定フローを実践してください。
- 共有作成ウィザード内の Permissions(権限)画面で Customize permissions を選択します。
- 「継承された権限を明示的な権限に変換する(Convert inherited permissions into explicit permissions)」を実行します。
- デフォルトで存在するユーザーをすべて削除し、残すのは SYSTEM、Administrator、CREATOR OWNER のみにします。
- 部門用のセキュリティグループ(例: Sales_Users)を追加します。グループはActive Directoryで事前に作成しておきます。
- 追加したグループに対して「適用先: このフォルダーのみ(Applies to: This folder only)」を設定し、サブフォルダやファイルへの継承は必要に応じて別途設定します。
- 「詳細なアクセス許可(Advanced permissions)」で Traverse folder/execute file を外し、Create folders/append data を有効にするなど、必要最小限に留めます。
注: 権限はグループ単位で管理するとユーザー追加/削除が容易になります。個別ユーザーへ直接権限を付与するのは避けてください。
ステップ3: 共有を確定して繰り返す
- 設定を適用して Next を押します。
- 最後に Create をクリックしてウィザードを完了します。
- 各部門ごとにこの手順を繰り返し、部門ごとの専用共有を作成します。
効果: 各部門のメンバーだけが自分のフォルダにアクセスでき、他部門のデータ露出を防げます。
管理者向けチェックリスト(導入前/導入後)
導入前:
- 部門別の命名規則を定義したか
- Active Directoryに部門用セキュリティグループを作成したか
- バックアップポリシー(スナップショット/ファイルサーバーバックアップ)を決めたか
導入後:
- 代表ユーザーでアクセス検証を行ったか
- アクセスベース列挙が期待通りに機能しているか確認したか
- バックアップからの復元テストを実施したか
権限設定の受入基準
- 部門Aのユーザーは部門A共有へ読み書き可能で、他部門の共有へはアクセス不可。
- 管理者はすべての共有にフルコントロールを持つ。
- 監査ログでアクセス試行が記録される。
リスクと緩和策(簡易マトリクス)
- 誤った権限設定 → 変更前にテストアカウントで検証、変更は作業時間を限定
- バックアップ不足 → 定期的なバックアップと復元テストを実施
- グループメンバー管理不備 → 人事連携で定期的にグループを見直す
代替アプローチと選び方のヒューリスティック
- 複数部門で頻繁にファイル共有するなら、1つの共有にフォルダ分けしてACLで管理するよりも、部門ごとに分けた方が誤設定リスクは低い。
- Linux主体の環境ではNFSを検討する。Windows主体ならSMB優先。
運用用ミニSOP(実務手順)
- ADで新規ユーザーの入社処理を行う。
- 部門グループへ追加する(ADで変更)。
- 10分以内にファイル共有権限を確認する(テストユーザーでログイン)。
- 月次で共有のアクセス一覧とバックアップ状況を確認する。
マッピング(利用者向け)
- 管理者はグループポリシー(GPO)を使ってネットワークドライブを自動マップすることを推奨します。これによりエンドユーザーは手動設定不要で共有にアクセスできます。
FAQ
共有ドライブをユーザーにマップするには? Group Policyを使ってログオン時にネットワークドライブを自動マップすれば、ユーザーの手動操作を減らせます。
複数部門で同じ共有を使えますか? 技術的には可能ですが、権限管理と監査の観点から部門ごとに共有を分ける方がトラブルを減らせます。
SMBとNFSの違いは? SMBはWindows向けの標準プロトコル、NFSはLinux/UNIXでよく使われます。環境に応じて選択してください。
アクセスベース列挙は必須ですか? 推奨されます。権限のないフォルダを一覧に表示しないため、情報漏えいの抑止に有効です。
まとめ
Windows ServerでSMB共有を用いて部門別の共有ドライブを作ると、バックアップの一元化、アクセス制御の明確化、誤操作によるデータ露出の軽減が実現できます。運用では「アクセスベース列挙」と「最小特権」を基本方針にし、ADグループ管理と定期的なテストで安全性を保ってください。
重要: 本手順は一般的な運用ガイドです。実稼働環境では組織のセキュリティポリシーに従い、必要に応じて監査・ログ収集・暗号化などを追加してください。