CentOS 7 に Plex メディアサーバーをインストールして構成する

概要
Plex はクライアント・サーバー型のメディアソフトウェアスイートで、主に Plex Media Server(サーバー)と Plex Player(再生クライアント)から構成されます。Plex Media Server はビデオ、オーディオ、写真やオンラインソースのメディアを整理し、ローカルネットワークやインターネット経由でストリーミングするアプリケーションです。Windows、macOS、Linux、FreeBSD などにインストール可能です。Plex Player はサーバー上のメディアを再生するフロントエンドです。
このチュートリアルでは CentOS 7 に Plex Media Server をインストールし、firewalld の設定と Web アプリでの初期構成を行う手順を示します。
前提条件
- CentOS 7 システム
- root 権限または sudo 権限
ここで行うこと
- Plex リポジトリを CentOS 7 に追加する
- Plex Media Server をインストールする
- firewalld のルールを構成する
- Web で Plex をセットアップして動作確認する
ステップ 1 - Plex リポジトリを追加する
最初に公式リポジトリを追加します。/etc/yum.repos.d ディレクトリに plex.repo を作成します。
cd /etc/yum.repos.d/
vim plex.repo
以下のリポジトリ設定を貼り付けて保存します。
# Plex.repo file will allow dynamic install/update of plexmediaserver.
[PlexRepo]
name=PlexRepo
baseurl=https://downloads.plex.tv/repo/rpm/$basearch/
enabled=1
gpgkey=https://downloads.plex.tv/plex-keys/PlexSign.key
gpgcheck=1
保存して終了してください。これで Plex リポジトリがシステムに追加されました。
重要: ネットワーク経路で https://downloads.plex.tv にアクセスできることを確認してください。プロキシ環境ではプロキシ設定が必要です。
ステップ 2 - CentOS 7 に Plex Media Server をインストールする
Plex を yum からインストールします。
sudo yum -y install plexmediaserver
インストール後、サービスを起動して自動起動を有効にします。
systemctl start plexmediaserver
systemctl enable plexmediaserver
ステータスを確認してサービスが動作していることを確認します。
systemctl status plexmediaserver
出力に “active (running)” が表示されれば Plex Media Server は稼働中です。
ステップ 3 - firewalld のルールを構成する
Plex は複数のポートを使用するため、firewalld に専用サービスを追加して許可します。firewalld が未インストールなら以下で追加します。
sudo yum -y install firewalld
サービスを起動して自動起動を有効にします。
systemctl start firewalld
systemctl enable firewalld
次に firewalld のサービス定義を作成します。
cd /etc/firewalld/services/
vim plexmediaserver.xml
以下を貼り付けて保存します。
plexmediaserver
Ports required by plexmediaserver.
保存して終了します。
サービスを追加して設定をリロードします。
sudo firewall-cmd --add-service=plexmediaserver --permanent
sudo firewall-cmd --reload
設定が反映されたら、現在のゾーンとサービスを確認します。
firewall-cmd --list-all
出力に “plexmediaserver” がサービス一覧に含まれているはずです。
重要: サーバーをインターネットに公開する場合、必要最小限のポートのみ開放し、可能ならリバースプロキシや VPN 経由でのアクセスを検討してください。
ステップ 4 - Plex Media Server の初期設定
Plex のアカウントがまだなら https://app.plex.tv/ で登録してください。登録後、ブラウザでサーバーの Web インターフェイスにアクセスします。
例: http://192.168.33.10:32400/web/
アクセスすると Plex のサインイン画面にリダイレクトされます。
「SIGN IN」をクリックして Plex アカウントでログインします。ログイン後、Plex の基本動作説明が表示されます。画面の指示に従ってセットアップを進めてください。
サーバー名を入力して次へ進み、ライブラリを追加します。
ライブラリの種類やフォルダを指定して完了させます。
セットアップ完了後、ダッシュボードが表示されます。
ライブラリにメディアを追加すると、Plex が自動的に情報を取得してライブラリを整理します。
これで CentOS 7 上の Plex Media Server のインストールと初期設定は完了です。
追加情報とベストプラクティス
ポートとその役割の概要
- 32400/tcp: Web UI とリモートアクセス(Plex のメインポート)
- 1900/udp: DLNA(UPnP)向けの SSDP
- 3005/tcp: リモートコントロール
- 5353/udp: mDNS(Bonjour)
- 8324/tcp: アプリとの連携
- 32410-32414/udp: GDM(LAN メディア検出)
- 32469/tcp: DLNA ファイル転送
事実ボックス: これらのポートは LAN 内検出やリモート通信で一般的に使われます。外部公開は最小限に留め、必要ならポート制限や VPN を利用してください。
セキュリティとハードニング
- Plex を公開する場合は必ず Plex の「リモートアクセス」を設定し、可能であれば認証と TLS を使用する。Plex のクラウド経由の認証は利便性が高い。
- OS レベルでは不要なサービスを無効化し、SELinux を有効にしてログを監視する。必要に応じて fail2ban のようなツールでログイン試行を制限する。
- メディアディレクトリには最小限の権限を付与し、Plex の実行ユーザー以外が不要にアクセスできないようにする。
代替アプローチ
- DEB/RPM パッケージを直接ダウンロードして手動でインストールする方法(リポジトリ追加を避ける)
- コンテナ化: Docker イメージを利用して Plex をコンテナで運用する(アップデートと依存分離が容易)
- 他のメディアサーバー(Emby、Jellyfin)を検討する(オープンソースやライセンス要件によって選択)
よくある問題とトラブルシューティング
- Web UI にアクセスできない: plexmediaserver が起動しているか systemctl status で確認。ファイアウォールで 32400/tcp が開いているかチェック。
- ライブラリが更新されない: メディアフォルダのパーミッションを確認。Plex のスキャンが動作しているかログを確認。
- リモートアクセスが不安定: ルーターのポートフォワーディング設定、ISP の CGNAT(キャリアグレード NAT)を確認。CGNAT 下では直接公開が難しい。
チェックリスト(導入時)
- Plex リポジトリを追加した
- plexmediaserver をインストールした
- plexmediaserver を起動し自動起動を有効にした
- firewalld に plexmediaserver サービスを追加した
- Web UI にログインして初期セットアップを完了した
- メディアライブラリを追加し、サムネイル等が取得されることを確認した
簡易プレイブック(運用ハンドブック)
- 毎週: systemctl status plexmediaserver を確認
- 毎月: yum update を実行してパッケージを更新(事前にスナップショットやバックアップを取る)
- 問題発生時: /var/lib/plexmediaserver/Library/Application Support/Plex Media Server/Logs を確認して原因を特定
1行用語集
- Plex: クライアント・サーバー型のメディア管理・配信ソフトウェア
- Plex Media Server: メディアの整理と配信を行うサーバーアプリケーション
- firewalld: 動的にゾーンとルールを管理する Linux のファイアウォール
まとめ
CentOS 7 に Plex Media Server を導入する手順は、公式リポジトリの追加、パッケージのインストール、firewalld のサービス定義作成、そして Web での初期設定という流れです。運用時はセキュリティ(最小権限・必要最小限のポート開放)とログ監視を心がけてください。
重要: 公開設定や外部アクセスを行う際は、必ずアクセス制御と暗号化を検討してください。