Ubuntu Serverに15分でBIKA LIMS Inkosiをインストールする方法
概要
このハウツーは、Ubuntu Server上でスタンドアロンのBIKA LIMS(Inkosi)を構築する手順をまとめたものです。基本のUbuntuをインストールした後、以降のコマンドのコピー&ペーストだけで約15分で動作する環境を作れます。重要な点は、BIKAは新しいPloneのバージョンでは動作しないため、動作確認済みの古いバージョンを使用することです。
重要: BIKAが新しいPloneで動作しない既知の問題があります。ここで示すバージョンをそのまま使うことを前提にしています。
主なターゲットと関連インテント
- 主な目的: Ubuntu ServerにBIKA LIMSをインストールする
- 関連バリアント: Plone 2.5のインストール、Zope 2.9のビルド、Ubuntu 8.04でのレガシー環境構築、Inkosi LIMSのデプロイ
前提条件
- 物理または仮想マシンにUbuntu 8.04 (Hardy Heron) をインストール済みであること。
- LIMSERVERというホスト名(本稿では例として使用)。独自のホスト名、ユーザ名、パスワードを用いてください。
- サーバがインターネットに接続されていること(パッケージやtarballをwgetで取得するため)。
- SSHクライアント(例: PuTTY)を使って別マシンからサーバに接続できること。
ダウンロード元(Ubuntu 8.04):
http://releases.ubuntu.com/releases/8.04/
注: 将来的にファイルの配置場所が変更される可能性があります。ここで指定するバージョンを揃えることが重要です。
準備: ローカルIPの確認とSSH接続
- Ubuntuインストール後、LIMSERVERにログインしてローカルIPを確認します:
ifconfig
inetの直後に表示される数値がローカルIPです(例: inet addr:192.168.2.8 → 192.168.2.8)。127.0.0.1はループバックです。
- 別PCからSSHクライアントでLIMSERVERのローカルIPに接続します(ポート22)。
推奨クライアント例(Windows):
http://www.chiark.greenend.org.uk/~sgtatham/putty/download.html
コピー&ペースト: SSHセッション内では Ctrl-C/Shift-Ins や右クリックで貼り付けできます。複数行をまとめて貼ると便利です。
ディレクトリ変数と環境
まず作業ディレクトリと変数を設定します。以降のコマンドはそのままコピーして使えます。
DOWNLOAD_DIR=~/temp
BUILDS_DIR=~/builddirs
MY_PRODUCTS_DIR=~/products
Zope用ディレクトリ:
ZOPE_TARBALLDIR=http://www.zope.org/Products/Zope/2.9.9
ZOPE_TARBALL=Zope-2.9.9-final.tgz
ZOPE_WGET_ADDRESS=$ZOPE_TARBALLDIR/$ZOPE_TARBALL
ZOPE_BUILDDIR=$BUILDS_DIR/Zope-2.9.9-final
Plone用ディレクトリ:
SOFTWARE_HOME=~/zope-2.9.9
# Plone software
PLONE_TARBALL_DIR=http://launchpad.net/plone/2.5/2.5.3/+download
PLONE_TARBALL=Plone-2.5.3-final.tar.gz
PLONE_VERSION=Plone-2.5.3-final
PLONE_WGET_ADDRESS=$PLONE_TARBALL_DIR/$PLONE_TARBALL
# What do you want your Zope instance to be called?
INSTANCE_HOME=$SOFTWARE_HOME/Plone
BIKA用ディレクトリと認証情報(例):
ROOT_LOGIN='admin'
ROOT_PASSWORD='PASSWORD'
BIKA_TARBALL_DIR=http://downloads.sourceforge.net/project/bika/bika/2.2.1
BIKA_TARBALL=bika-2_2_1_bundle.tar.gz
BIKA_VERSION=bika-2_2_1_bundle
BIKA_WGET_ADDRESS=$BIKA_TARBALL_DIR/$BIKA_TARBALL
REPORTLAB_TARBALL_DIR=http://www.reportlab.com/ftp/
REPORTLAB_TARBALL=ReportLab_2_4.tar.gz
REPORTLAB_VERSION=ReportLab_2_4
REPORTLAB_WGET_ADDRESS=$REPORTLAB_TARBALL_DIR/$REPORTLAB_TARBALL
BIKAFONTS_ZIPFILE_DIR=http://bioinf.scri.ac.uk/lp/downloads/programs/genomediagram/
BIKAFONTS_ZIPFILE=linfonts.zip
BIKAFONTS_DIR=linfonts
BIKAFONTS_WGET_ADDRESS=$BIKAFONTS_ZIPFILE_DIR/$BIKAFONTS_ZIPFILE
注: 今後URLやファイル名が変更される場合があります。指定バージョンを必ず揃えてください。
必要なコンパイラとパッケージのインストール
gccとg++をインストールします:
sudo apt-get install gcc
sudo apt-get install g++
作業用ディレクトリを作成します:
mkdir $BUILDS_DIR $DOWNLOAD_DIR $MY_PRODUCTS_DIR
古いPython(2.4系)をインストールします:
sudo apt-get install python2.4
sudo apt-get install python2.4-dev
sudo apt-get install python2.4-elementtree
これらはPlone 2.5 / Zope 2.9 と互換性のある環境を作るために必要です。
Zopeのダウンロードとインストール
Zopeをwgetでダウンロードして展開、コンパイルします:
sudo wget $ZOPE_WGET_ADDRESS -P $DOWNLOAD_DIR
sudo tar -xzf $DOWNLOAD_DIR/$ZOPE_TARBALL -C $BUILDS_DIR
cd $ZOPE_BUILDDIR
./configure --prefix=$SOFTWARE_HOME
./を使う理由の説明: http://www.linfo.org/dot_slash.html
コンパイルとインストール:
sudo apt-get install make
make
make install
Zopeインスタンスを準備します(ルートログイン情報を使います):
$SOFTWARE_HOME/bin/mkzopeinstance.py -d $INSTANCE_HOME -u $ROOT_LOGIN:$ROOT_PASSWORD
Ploneのダウンロードとインストール
PloneのtarballをダウンロードしてProductsに展開します:
sudo wget $PLONE_WGET_ADDRESS -P $DOWNLOAD_DIR
sudo tar -xzf $DOWNLOAD_DIR/$PLONE_TARBALL -C $MY_PRODUCTS_DIR
単一インスタンスとしてPloneを配置します:
for i in $MY_PRODUCTS_DIR/$PLONE_VERSION/*;
do echo $i;
ln -s $i $INSTANCE_HOME/Products/;
done
上記は4行を連続して実行するコマンドです。
不足モジュールがあるため、追加でplone-siteをaptで入れます:
sudo apt-get install plone-site
ここまでで、古いバージョン構成によるPloneサイトがZopeインスタンス内に構築されています。
BIKA拡張の配置と残作業(概要)
この時点でPloneが稼働していれば、BIKAのbundleを展開し、Productsフォルダへ配置、必要なReportLabやフォント類を導入します。上で示したBIKAの変数(BIKA_WGET_ADDRESS等)を使ってwgetで取得し、展開・配置してください。詳細な手順はBIKAバンドルのREADMEに従ってください。
トラブルシューティングとよくある失敗例
- wgetで取得できない: URLが変わっている可能性があります。公式ミラーや著名なアーカイブから同一バージョンを探してください。
- Pythonバージョンの不一致: Plone 2.5 / Zope 2.9はPython 2.4を前提に動作します。別バージョンを無理に当てないこと。
- ポートが開いていない: firewallやネットワークの制限を確認してください(SSH/HTTPポート)。
- ファイルのパーミッション問題: tar展開後の所有者・権限を確認して、必要であれば適切にchown/chmodしてください。
いつ失敗するかの例(カウンター):
- 新しいPloneを使うとBIKAが動作しない。代替: BIKAが公式にサポートするバージョンに合わせるか、コミュニティパッチを探す。
代替アプローチ
- コンテナ化: レガシー環境を隔離するためにDockerコンテナに古いUbuntuと必要なパッケージを入れる方法。ただしDockerイメージの作成とネットワーク設定が必要。
- 仮想マシン: 新しいホスト上にVMを用意してUbuntu 8.04を動かす(VMのスナップショットで迅速にロールバック可能)。
受け入れ基準
- Zope 2.9がビルドされ、指定したパス($SOFTWARE_HOME)にインストール済みである。
- Plone 2.5が$INSTANCE_HOME/Products に配置され、起動可能である。
- LIMS管理用のルートユーザ(ROOT_LOGIN)が設定され、管理画面にログインできる。
- BIKAの主要機能(サンプルデータの読み込み、基本的なLabワークフロー)が動作する。
役割別チェックリスト
- システム管理者:
- Ubuntu 8.04のインストールとネットワーク接続確認
- 必要パッケージ(gcc, g++, make, python2.4等)のインストール
- Zope/Ploneのビルドとインストール
- ラボ管理者:
- BIKAの設定(ロール、ユーザ、試験項目など)の準備
- 初期データのインポートと動作検証
- 開発/保守:
- バックアップスクリプトの準備
- アップデートポリシーの策定(レガシー依存のため慎重に)
セキュリティ注意点
- Ubuntu 8.04は既にEOL(サポート終了)です。可能であればネットワークを限定し、外部から不要なアクセスを遮断してください。
- 管理パスワードは必ず強力なものに変更してください。
まとめ
- 本手順は、BIKA LIMS InkosiをUbuntu 8.04上で短時間に稼働させるための「レガシー互換」手順です。
- 主要なポイントは、Zope 2.9、Plone 2.5、Python 2.4といった組み合わせに揃えることです。
- 将来的にモダンな構成で運用する場合は、BIKAの最新版とPloneの互換性を確認し、段階的に移行してください。
重要: このガイドは実行可能な手順を示しますが、運用環境で使う場合はセキュリティと保守性の観点からアップデート計画を検討してください。
要約と次のステップ:
- Ubuntu 8.04を準備する。
- 必要なパッケージとPython 2.4をインストールする。
- ZopeをビルドしてPloneを配置する。
- BIKAを展開して動作確認する。
もしURLやパッケージに変更があれば、同一バージョンを備えたミラーやアーカイブを探して置き換えてください。