Chromebookに任意のLinuxディストリビューションをインストールする完全ガイド

目次
- 概要
- 準備と要件
- 開発者モードを有効にしてUSBブートを許可する手順
- Live USBから起動してLinuxをインストールする手順
- デュアルブートと上書きインストールの比較
- トラブルシューティングとよくある失敗パターン
- 代替アプローチと推奨ケース
- 決定木(どの方法を選ぶべきか)
- 役割別チェックリスト
- 要点まとめ
概要
ChromebookはChrome OSを搭載した軽量端末ですが、アプリやゲームの制限やオフライン利用の制約から別のLinuxディストリビューションへの移行を考える人が増えています。本稿はChromebook上で任意のLinuxディストリビューション(ここでは例としてSolusを挙げます)をUSBブートからインストールする手順を、初心者にも分かりやすくまとめたガイドです。
用語定義(1行)
- Live ISO: ライブセッションで起動できるISOイメージ。インストール前にデスクトップ環境を試せます。
重要な前提
- 対象は主にIntelベースのChromebookです。ARM機は互換性やドライバの問題が多く、本ガイドの手順は当てはまらない可能性があります。
- 開発者モードへの切替はローカルデータを初期化します。必ずバックアップしてください。
重要: 開発者モードを有効にすると端末のセキュリティ設定が緩和されます。自己責任で行ってください。
準備と要件
ハードウェア要件
- Intel x86/x64 CPUを搭載したChromebook(ARMは非推奨)。
- 空のUSBメモリ(8GB以上を推奨)。
- 安定したインターネット接続(インストール中のパッケージ取得用)。
ソフトウェアとイメージ
- 利用するLinuxディストリ(例: Solus、Ubuntu、Fedoraなど)のLive ISO。必ず「Live ISOでグラフィカルデスクトップが起動する」ものを選ぶ。
- USB書き込みツール(Etcher、Rufus、ddなど)。
データのバックアップ
- Chrome OS上のローカルデータは開発者モードで消去されます。Googleアカウント同期だけでなく、ローカルファイルは外部にバックアップしてください。
事前確認チェックリスト
- Chromebookモデル名とCPUアーキテクチャを確認
- BIOS/SeaBIOSの有無とサポート状況を確認(モデルによってはSeaBIOSが見えないことがあります)
開発者モードを有効にしてUSBブートを許可する手順
手順の要点: 開発者モードを有効にし、dev_boot_usbとdev_boot_legacyを有効化します。これによりUSBからの起動が可能になります。
USBメモリにLive ISOを書き込む
- EtcherやRufus、LinuxのddコマンドなどでISOをUSBに書き込む。
Chromebookをシャットダウン
リカバリーモード画面へ
- Chromebookの電源を入れる際、EscキーとRefreshキー(Cirular矢印)を押し続け、Powerを押して警告画面を表示させます。
開発者モードの有効化
- 警告画面が表示されたらすぐにCtrl+Dを押します。これで開発者モードへの切替が始まります。初回は数分かかります。
- 開発者モード有効化によりローカルストレージが初期化される旨の確認が表示されます。
Chrome OSのターミナルを開く
- 開発者モードで起動したら、Ctrl+Alt+T を押してCrosh(Chrome OSのシェル)を開きます。
- croshが開いたら以下を入力してシェルに入ります:
shell
- USBブートを許可するクロスシステム設定
sudo crossystem dev_boot_usb=1 dev_boot_legacy=1
- USBを挿したままシャットダウンして再起動
- 再起動時、警告画面が表示されたら素早くCtrl+Lを押してLegacy BIOS(SeaBIOS)またはUSBブートに切り替えます。
注記
- 一部のChromebookではSeaBIOSが見えない、またはLegacyブートがサポートされない場合があります。Acer C740など一部機種でテストされた例ではSeaBIOSメニューが表示されないことが確認されています。
- Ctrl+Lは以後、Linuxへブートする際のキーボードショートカットになります(モデルによっては挙動が異なる場合があります)。
Live USBから起動してLinuxをインストールする手順
Liveセッションの起動
- USBを挿した状態でCtrl+Lを押し、USBから起動します。Liveセッションが立ち上がるまで1〜2分かかります。
インストール前の操作
- Liveデスクトップ上でネットワークに接続し、ハードウェア(Wi-Fi、タッチパッド、ディスプレイ)の動作確認をします。
- 必要ならば追加のファームウェアやドライバの有無を確認してください(特にWi-Fiやオーディオ)。
インストーラを実行
- ディストリビューションのインストーラを起動し、画面の指示に従ってインストールを進めます。
- パーティションについては以下の選択肢があります:
- ディスク全体を上書きしてLinuxのみをインストール(Chrome OSは消去されます)。
- 手動パーティション(root, swap, /homeを分けるなど)。
- デュアルブート(Chrome OSを残す) — この方法はモデル依存で難易度が上がる場合があります。
サンプルのパーティション例(フルインストール向け)
- / (root): ext4 20〜30GB以上推奨
- swap: RAM容量に応じて(0〜RAMと同程度)
- /home: 残り容量を割当
- インストール完了後
- インストールが終了したらシャットダウンし、USBを取り外します。
- 端末を起動し、素早くCtrl+Lを押してインストール先からのブートを確認します。
受け入れ基準
- OSが起動してログイン画面が表示されること
- ネットワーク接続(少なくともEthernetまたはWi-Fi)が機能すること
- キーボード、タッチパッド、ディスプレイの基本操作が可能であること
デュアルブートと上書きインストールの比較
デュアルブート
- 長所: Chrome OSの機能を保持しつつLinuxを利用できる
- 短所: ブート設定やパーティション操作が難しく、Chromebookモデルによっては非推奨
上書きインストール
- 長所: システムがシンプルで互換性の問題が少ない
- 短所: Chrome OSを消すため、元に戻すにはChrome OSリカバリーが必要
トラブルシューティングとよくある失敗パターン
USBから起動しない
- 対処: crossystemの設定を再確認。USBの書き込み形式(UEFI/Legacy)を確認して再作成。
SeaBIOSやLegacyメニューが表示されない
- 理由: Chromebookの機種によってはSeaBIOSが非表示、またはブートを許可していない。
- 対処: 別の方法(chrx, Crouton, Crostini)を検討する。
Wi-Fiやタッチパッドが動作しない
- 理由: 専用のファームウェアやドライバが必要な場合があります。
- 対処: Ethernetで接続して追加ドライバを取得するか、別ディストロを試す。
データ消失
- 常に事前にバックアップを取っておくこと。Chrome OSのリカバリーユーティリティで復旧可能ですが、手順を誤るとデバイスを一時的に使えなくなることがあります。
代替アプローチと推奨ケース
Crostini(Chrome OS上の公式Linuxコンテナ)
- 軽度のLinuxアプリ利用に最適。開発者モード不要で安全。
Crouton(chrootベースの同居)
- Chrome OSを残しつつDebian/Ubuntu系の環境を同時実行できる。主に開発者向け。
chrx(デュアルブート補助ツール)
- デュアルブートを簡略化するサードパーティツール。使用は自己責任。
おすすめ選択ガイド
- 日常利用で軽いLinuxアプリを試したい: Crostini
- フル機能のLinuxデスクトップが必要: Live USBからのインストール(本ガイド)
- デュアルブートを簡単にしたい: chrxを検討
決定木
以下は簡易的な意思決定フローです。
flowchart TD
A[ChromebookをLinux化したい?] --> B{Intel搭載?}
B -- いいえ --> C[ARMは非推奨。別の方法を検討]
B -- はい --> D{少しだけ使う?}
D -- はい --> E[Crostiniを試す]
D -- いいえ --> F{Chrome OSは残したい?}
F -- はい --> G[chrxまたはCrouton]
F -- いいえ --> H[本ガイドのUSBインストール]
役割別チェックリスト
開発者
- バックアップ完了
- SSH/開発ツールのインストール手順を用意
- カーネルモジュールやビルド環境を確認
学生 / 一般ユーザー
- 必要なアプリ(ブラウザ、オフィス、メディア)の一覧作成
- Wi-Fiやプリンタの互換性を確認
管理者 / IT担当
- リカバリープロセスを検証
- セキュリティとアップデート手順を整備
要点まとめ
- ChromebookをLinux化する方法は複数あり、目的と機種で最適解が変わります。
- Intel機であればLive USBからのインストールが最も直接的ですが、開発者モードでローカルデータが消える点に注意してください。
- 問題が起きた場合は、USBの書き直し、crossystem設定の確認、または別のディストリを試すことが有効です。
補足: Chrome OSの復元はGoogleのリカバリーツールを使用して可能です。復元メディアは別途作成してください。
要約
- 手順を守ればChromebookでフル機能のLinuxが動きます。
- 常にバックアップを取り、機種特有の互換性問題に備えてください。