Windows 11で「DNSサーバーが応答しない」エラーを解決する完全ガイド

DNS(Domain Name System、ドメインネームシステム)は、インターネット上のコンピュータやサーバー、他のリソースを名前で識別する分散システムです。簡単に言えば、DNSはウェブサイトの名前(例: example.com)を、その背後にあるIPアドレスに変換して、ブラウザやアプリが目的のサーバーへ通信できるようにします。
このガイドでは、Windows 11で発生する「DNSサーバーが応答しない」エラーの原因と段階的な解決方法を、初心者にも分かるように平易な言葉で解説します。各手順にあるコマンドの意味、失敗する場合の対処、代替手段、管理者向け注意点まで含めます。
なぜこのエラーが起きるか(短い定義)
- DNSサーバーが応答しない:PCが指定されたDNSサーバーへ問い合わせを送ったが、応答が返ってこない状態です。
- 一行説明:接続自体の問題、ローカルの設定不具合、サードパーティのソフトウェア干渉、あるいはDNSプロバイダー側の障害が原因になります。
重要: まず最初に有線/無線の物理接続やルーター、モデム、プロバイダー側の障害情報を確認してください。ネットワークそのものが落ちている場合、DNSの修復を行っても無駄です。
目次
- エラーの考えられる原因
- すぐに試す基本手順(順序付き)
- コマンドの意味と注意点
- DNSを切り替える方法(複数の無料プロバイダー紹介)
- ドライバーとWindowsの更新
- セーフモードでの切り分け
- 管理者・一般ユーザー別チェックリスト
- トラブルシューティング決定木(Mermaid)
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
エラーの考えられる主な原因
- ルーターやモデムの一時的な障害やインターネット回線の断絶。
- PCのDNSキャッシュやTCP/IPスタックの破損。
- サードパーティのセキュリティソフト(アンチウイルス、ファイアウォールなど)による通信のブロック。
- ネットワークアダプターのドライバーが古い、破損している。
- ISP(インターネットサービスプロバイダー)のDNSサーバーの不具合や該当DNSのフィルタリング。
- Windows側の設定ミス(手動で誤ったDNSが設定されている等)。
すぐに試す基本手順(推奨の実行順)
物理的接続とルーターの確認
- 有線ならケーブルが抜けていないか、別ポートや別ケーブルで試す。
- 無線なら別のWi-Fiに接続できるか試す(スマートフォンのテザリング等)。
- ルーターの簡易再起動(電源を切り、約30秒待って再投入)を行う。
インターネットサービスプロバイダー(ISP)側の障害確認
- 他の端末(スマホや別PC)も同様の問題が起きているか確認する。
- ISPのステータスページや障害情報を確認する。
Windowsでの基本診断
- 設定 > ネットワークとインターネット > 状態 から「ネットワークのトラブルシューティング」を実行する。ただしトラブルシューティングは原因特定の補助であり、すべてを解決するわけではありません。
ステップ: DNSキャッシュをフラッシュしてWinsockをリセットする(管理者権限が必要)
以下のコマンドを順に実行します。各コマンドはコマンドプロンプトに入力し、Enterキーで実行してください。
- 「ファイル名を指定して実行」でcmdを開く手順の例:
- コマンドプロンプトを管理者として開き、次を順に実行します(1行ずつ、Enter)。
ipconfig /flushdns
ipconfig /registerdns
ipconfig /release
ipconfig /renew
netsh winsock reset
これらは次のような意味があります:
- ipconfig /flushdns:ローカルのDNSキャッシュを削除します。古い名前解決情報が原因の場合に有効です。
- ipconfig /registerdns:コンピュータのDNS登録を再送信します(特に自ドメイン内の登録が必要な環境で有効)。
- ipconfig /release と ipconfig /renew:DHCPで取得したIP情報を一旦破棄して再取得します。
- netsh winsock reset:Winsockカタログをリセットし、ソケット層の設定を初期化します。ネットワーク通信ができない・名前解決が不安定な場合に有効です。
コマンド実行後はPCを再起動してください。再起動が解決策になることが多いです。
重要: 「ipconfig /release」を実行すると一時的にネットワーク接続が切れます。サーバーで実行する場合は業務影響を考慮してください。
DNSサーバーを手動で変更する(一般的な無料DNSプロバイダー)
プロバイダーのDNSが不安定な場合、GoogleやCloudflare、OpenDNSなどの公共DNSに切り替えることで問題が解消することがあります。代表的なDNS一覧:
- Google Public DNS:8.8.8.8 / 8.8.4.4
- Cloudflare:1.1.1.1 / 1.0.0.1
- OpenDNS Home:208.67.222.222 / 208.67.220.220
- Quad9:9.9.9.9 / 149.112.112.112
- AdGuard DNS:94.140.14.14 / 94.140.15.15
- AlternateDNS:76.76.19.19 / 76.223.122.150
どのDNSを使うかは、プライバシー、フィルタリング(広告やマルウェアブロック)、速度のどれを重視するかで選びます。たとえばプライバシー重視ならCloudflare、セキュリティフィルタを求めるならQuad9やAdGuardが適します。
Windows 11での変更手順(GUI)
- Windowsキー + I で「設定」を開く。
- 「ネットワークとインターネット」を選ぶ。
- 接続中のネットワーク(Wi-Fiやイーサネット)を選び、「プロパティ」または「ハードウェアのプロパティ」へ進む。
- DNSサーバーの割り当て(DNS server assignment)で「編集」をクリック。
- 「編集DNS設定」欄で「手動」を選択し、IPv4またはIPv6を有効にする。
- IPv4/IPv6のスイッチをオンにして、優先DNSと代替DNSを入力する。
- 暗号化(DNS over HTTPSやDNS over TLS)のオプションがあれば選択し、「保存」をクリック。
変更後、ブラウザのキャッシュをクリアするか、ブラウザ再起動をしてから接続を確認してください。
注意: 企業や教育機関のネットワークでは、内部DNSを使用する必要があるため、勝手に公共DNSへ変更しないでください。管理者に確認してください。
ドライバーとWindowsの更新
古いネットワークドライバーや未適用のWindowsアップデートがネットワーク問題を引き起こすことがあります。
- Windowsキー + I で設定を開く。
- 「Windows Update」へ移動して「更新プログラムのチェック」を実行する。
- 「デバイスマネージャー」からネットワークアダプターを開き、該当アダプターを右クリックして「ドライバーの更新」を選ぶ。自動検索か、メーカー提供の最新ドライバーをダウンロードして更新してください。
代替案: ドライバ更新ソフトを使うと手間は軽減できますが、信頼できるソフトを選んでください。会社システムではソフト導入ポリシーを必ず確認してください。
サードパーティのアンチウイルスを一時無効化またはアンインストール
サードパーティのセキュリティソフトがDNS問い合わせやネットワーク機能を遮断することがあります。トラブルを切り分けるために、一時的に無効化(可能ならアンインストール)して動作を確認してください。
重要: 無効化やアンインストールは自己責任で行い、インターネット接続時のセキュリティリスクに注意してください。代替としてMicrosoft Defenderを利用する方法があります。
セーフモードでの切り分け(ネットワークあり)
セーフモードでは最小限のドライバーとサービスだけが読み込まれ、サードパーティの干渉がない状態で接続を確認できます。
- スタートメニューの電源アイコンを開く。
- Shiftキーを押しながら「再起動」をクリック。
- 回復オプションで「トラブルシューティング」を選択。
- 「詳細オプション」→「スタートアップ設定」へ進み、再起動。
- 再起動後、キー 5 または F5 を押して「ネットワークを有効にしたセーフモード」で起動する。
セーフモードで問題が解消する場合は、常駐するサードパーティアプリやサービスが原因の可能性が高いです。インストール済みアプリを一つずつ無効化/アンインストールして原因を特定してください。
代替アプローチと高度な手段
- ルーターのDNSを変更する:家庭内のすべてのデバイスに反映されるため、個別設定より効果的な場合があります。
- ブラウザごとのDNSキャッシュ(ブラウザ名による)をクリアする。
- hostsファイルの設定を確認する(管理者権限が必要)。意図しない名前解決の上書きがないか確認。
- ネットワークプロファイルを削除して再作成する(設定>ネットワークとインターネット)。
- 企業ネットワークならグループポリシーやプロキシ設定の影響を確認。
いつこの方法では失敗するか(反例)
- ISP側の広域障害が原因である場合、ローカルでできる操作は限られます。ISPの対応を待つ必要があります。
- ルーターやモデム自体にハードウェア故障がある場合、端末側での設定変更だけでは直りません。
- ネットワーク上の高度なミドルボックス(企業のセキュリティ装置)によって特定のDNSが強制されている場合、個々の端末設定は無効化されることがあります。
管理者・一般ユーザー別チェックリスト
一般ユーザー(家庭用PC)チェックリスト:
- ルーター再起動を試したか
- 他端末も同様のエラーか確認したか
- DNSキャッシュをフラッシュしたか
- 一時的にアンチウイルスを無効化して確認したか
- 公共DNSに切り替えて試したか
IT管理者チェックリスト:
- DHCPとDNSサーバーの状態を確認したか
- DNSサーバーのログにエラーがないか確認したか
- ネットワークACLやFWルールでDNSポート(UDP/TCP 53)が遮断されていないか確認したか
- DHCPオプションで誤ったDNSが配布されていないか確認したか
- グループポリシーや構成管理(Intuneなど)でDNS設定が強制されていないか確認したか
トラブルシューティングの決定木(概略)
以下は簡略化した診断フローです。問題の切り分けに使ってください。
flowchart TD
A[インターネットに接続できない] --> B{他の端末はOKか}
B -- はい --> C[PCを対象に切り分け]
B -- いいえ --> D[ルーター・ISPの問題を疑う]
C --> E{セーフモードで接続できるか}
E -- はい --> F[常駐アプリ(アンチウイルス等)を疑う]
E -- いいえ --> G[ドライバー・DNS設定を疑う]
G --> H[DNSキャッシュをフラッシュとWinsockリセット]
H --> I{改善したか}
I -- はい --> J[監視]
I -- いいえ --> K[DNSを公共DNSに変更]
K --> L{改善したか}
L -- はい --> M[ISPのDNSに問題がある可能性]
L -- いいえ --> N[ハードウェア故障や高度なネットワーク調査]
簡易SOP(迅速対応手順) — 1分で試せる順
- ルーター電源を30秒切って再投入。
- 別端末で同じサイトにアクセスして確認。
- 管理者コマンド(1行ずつ)を実行:
ipconfig /flushdns
netsh winsock reset
- PC再起動。改善しなければDNSを1.1.1.1(Cloudflare)に切替え。
よくある質問(FAQ)
Q: ipconfig /flushdns を実行しても効果がない場合は?
A: ローカルキャッシュ以外に原因があるため、次はDNSサーバーの変更、Winsockリセット、セーフモードでの確認を試してください。
Q: 公共DNSに変えるとプライバシーはどうなる?
A: 各プロバイダーはログの保持や利用目的が異なります。プライバシー重視なら各サービスのプライバシーポリシーを確認してください(例:Cloudflareはログ保持を短期にする方針を掲げていますが、常に利用規約を確認すること)。
Q: 企業ネットワークでは勝手に変更していい?
A: いいえ。企業ネットワークでは内部DNSやプロキシが必要な場合があり、勝手な変更は業務に影響します。必ずIT管理者に相談してください。
Q: DNS over HTTPS(DoH)は有効にすべき?
A: DoHは名前解決の暗号化により盗聴を防ぐ利点がありますが、企業環境ではトラブルの原因になることもあります。利点と運用ポリシーを比較して決めてください。
まとめ
「DNSサーバーが応答しない」エラーは多くの場合、ネットワーク接続の基本チェックとDNSキャッシュのリフレッシュ、公共DNSへの切替えで解決します。セーフモードでの切り分けによりサードパーティソフトの影響を特定できることが多く、管理者側ではDHCP/DNSの配布設定やネットワーク機器のログ確認が重要です。
重要: 企業・業務環境では勝手な操作は避け、事前に影響範囲を確認してから実行してください。
要点まとめ:
- まず物理接続とISPの状態を確認する。
- 次にDNSキャッシュのフラッシュとWinsockリセットを試す。
- 公共DNSに一時的に切り替えて挙動を確認する。
- セーフモードで原因を切り分け、必要ならドライバーやソフトを見直す。
この記事のチェックリストや決定木を参考に、安全に順を追ってトラブルシュートしてください。問題が継続する場合は、ネットワーク管理者またはISPのサポートに連絡してください。