重要: 作業前に電源を切り、コンセントを抜き、静電気対策(アース)を行ってください。作業に不安がある場合は専門技術者へ依頼してください。
概要(読みやすく)
CMOSとはマザーボード上でBIOS/UEFIの設定を保存するための小さなメモリ領域です。ここが破損すると起動時にBIOSエラーや設定リセット、時刻の狂いなどが発生します。原因は主に次の3つです:
- CMOSバッテリーの劣化(CR2032など、通常寿命は約3年)
- BIOS/UEFIのソフトウェア的な異常(誤ったフラッシュ、不適切なアップデート)
- マザーボードや電源ユニットのハードウェア故障
以下では、簡単な手順と注意点、代替案、役割別チェックリスト、診断フローなどを含めて詳しく説明します。
目次
- なぜCMOSは破損するのか(短い説明)
- シンプル手順:1→2→3→4(実践ガイド)
- 代替アプローチといつ効かないか(反例)
- ミニ診断メソッド(どう調べるか)
- 役割別チェックリスト(初心者・上級者・技術者)
- 事実ボックス(重要な数字)
- リスクと対策
- 決定フロー(Mermaid)
- まとめ
なぜCMOSは破損するのか(短い説明)
CMOSの破損は「保存されているデータが正しく読めない/チェックサムが合わない」状態を指します。多くはバッテリー低下で設定が維持できなくなる、あるいはBIOS更新時に不整合が生じることが原因です。マザーボード自体のハードウェア故障でも同様の症状が出ます。
1. BIOSを工場出荷時設定に戻す(最初に試す)
- Windowsで高速スタートアップが有効だとBIOS画面に入れない場合があります。次の手順でUEFI画面へ入ってください。
- Windowsキー + I を押して「設定」を開く。
- 「更新とセキュリティ」を選択。
- 左側で「回復」を選び、「高度なスタートアップ」から「今すぐ再起動」をクリックする。
- 画像:
ALT: Windowsの設定から高度なスタートアップを選ぶ画面(スクリーンショット)
- 「トラブルシューティング」→「詳細オプション」→「UEFIファームウェア設定」を選んで再起動。
- BIOS/UEFIが起動したら「Load Defaults」または「Restore Factory Defaults」を選び、保存して再起動。
効果: 設定のソフト的な破損や誤設定による不具合はこれで直ることがあります。
2. BIOSを再フラッシュする(更新/上書き)
説明: 間違ったバージョンや不完全なアップデートが原因でチェックサムエラー等が発生することがあります。メーカー提供の手順に従い、最新版へ再フラッシュします。
重要なルール:
- 作業中は必ず電源を安定させる(停電やシャットダウンでブリック化する危険)。
- マザーボードの正確なモデルと対応BIOSバージョンを二重に確認する。
実作業の流れ(一般的):
- マザーボードメーカーのサポートページで正しいBIOSファイルを入手。
- ツール(Windowsアプリ、USBブート、またはBIOS内アップデート機能)を使ってフラッシュ。
- フラッシュ完了後はCMOSクリア(次項)を行い、工場設定での再起動を推奨。
注記: 不慣れな場合、BIOSフラッシュはリスクが伴います。手順に従い、復旧手段(ブート・リカバリ手順)を確認してから進めてください。
3. CMOSをリセット(ジャンパーまたはバッテリー抜き)
手順:
- PCの電源を切り、ケーブルを抜きます。ノートPCも同様に電源オフ、バッテリー取り外し可能なら外す。
- ケース側面のねじを外し、マザーボードにアクセスします。静電気に注意。
- CMOS電池(通常はコイン型CR2032)付近に「CLR_CMOS」「RESET_CMOS」などのジャンパーピンがあります。マニュアルで位置を確認。
- ジャンパーがある場合は指定位置に移して約20秒待つ(メーカー指示に従う)。
- ジャンパーが見当たらない場合はバッテリーを慎重に抜き、約10分待ってから戻す(完全放電のため)。
- 元に戻して電源を入れ、BIOS画面で日付や設定を確認・保存する。
画像: ALT: マザーボード上のコイン電池とCMOSリセットジャンパーの位置が分かる写真
注意: バッテリーを無理に外すと金属クリップを破損する恐れがあります。丁寧に扱ってください。
4. バッテリーを交換する(最終手段の一つ)
- 多くのデスクトップPCや一部のノートPCはCR2032(リチウムコイン電池、定格約3V)を使用します。寿命は使用環境で異なりますが、一般的に約3年です。
- 新しい電池を用意し、極性に注意して装着してください。
- 交換後はBIOSで時刻と設定を確認し、必要なら再設定します。
効果: バッテリー電圧不足が原因で設定が保存されないケースではこれで解決します。
代替アプローチといつ効かないか(反例)
- BIOSをリセットしても直らない場合: マザーボードの不良やBIOSチップ自体の故障が考えられます。交換やリフローでは治らないこともあります。
- 再フラッシュで悪化する場合: 間違ったファイルでフラッシュした、または途中で電源断が起きた場合は「ブリック」状態になり、専用のプログラマやメーカーの復旧サービスが必要になります。
- バッテリー交換で直らない場合: CMOS管理回路や電源回路の不良、BIOS EEPROMの破損などハードウェア起因を疑ってください。
ミニ診断メソッド(短いチェックリスト)
- 起動時のエラーメッセージを記録する(例: CMOS checksum error, BIOS ID check failed)。
- BIOSに入れるか確認する。入れない場合は高速起動設定やキーボードショートカットの問題も考慮。
- バッテリー電圧をテスターで確認(約3Vが目安)。
- BIOSのバージョン確認。古い・不適合が疑われる場合はフラッシュ検討。
- 最終的にマザーボード交換が必要か判断する(同症状が継続、複数ハードウェアチェックで原因不明)。
役割別チェックリスト
初心者(自己作業可だが注意):
- 電源を落とし、コンセントを抜く。
- PCケースの取り外し方法を事前に確認。
- CMOSクリア(バッテリー抜き)を試す。
- バッテリー交換用のCR2032を購入する(電圧確認)。
- 不安があれば作業を止めて専門家へ。
上級ユーザー:
- BIOSの正確なバージョンとリリースノートを確認。
- セキュアブートや設定を記録してからリセット。
- フラッシュ前にブートメディアのバックアップを作成。
技術者/ショップ:
- EEPROMプログラマや専用ツールによるBIOSリカバリを準備。
- 部品交換(マザーボード、CMOSバッテリー、電源ユニット)で切り分け。
- 顧客に対してTCOと保証内容を説明。
事実ボックス:覚えておくべき数字
- CMOSバッテリー(CR2032): 定格約3V
- 一般的な寿命: 約3年(使用状況で短くなる)
- ジャンパーでのリセット目安: 約20秒
- バッテリー抜き待ち時間(放電): 10分程度推奨
リスクとその軽減策
- リスク: BIOSフラッシュ中の電源断 → 対策: 無停電電源装置(UPS)を使用
- リスク: 静電気で部品損傷 → 対策: アースストラップ使用、金属部品に触れて放電
- リスク: 誤ったBIOSを書き込み → 対策: マザーボード型番を二重確認、製造元の手順に従う
決定フロー(簡易診断)
flowchart TD
A[PCが起動しない or BIOSエラー] --> B{BIOSに入れるか?}
B -- はい --> C[BIOSを初期化]
C --> D{問題解決?}
D -- はい --> E[終了]
D -- いいえ --> F[BIOS再フラッシュ]
F --> G{問題解決?}
G -- はい --> E
G -- いいえ --> H[CMOSバッテリー確認]
H --> I{電圧低い?}
I -- はい --> J[バッテリー交換]
I -- いいえ --> K[マザーボード/電源のハード故障を疑う]
K --> L[専門技術者へ相談/部品交換]
いつ専門家へ依頼すべきか(簡潔)
- BIOSフラッシュ中に電源断が発生した
- ジャンパーやバッテリーを扱う物理的損傷の恐れがある
- マザーボードの電源回路やBIOSチップ自体の交換が必要な場合
よくある質問(1行定義)
- CMOSとは? → マザーボード上の小さな設定保持用メモリ領域。
- CR2032とは? → 直径20mmのリチウムボタン電池、約3Vの供給。
- BIOSリセットで何が起きる? → 設定は出荷時に戻り、手動で再設定が必要になる。
まとめ(短い)
まずはBIOSの初期化を行い、それで直らなければBIOS再フラッシュ、CMOSクリア(ジャンパー/バッテリー抜き)、バッテリー交換の順で進めます。どの手順でも電源管理と静電気対策を守ってください。最終的にハードウェア故障が原因であれば、マザーボードや電源ユニットの交換を検討してください。
ご自身で試した後、どの手順で直ったかコメントで教えていただけると助かります。
注意: 本記事は一般的なガイドラインを提供するものであり、すべての状況に必ず適合するわけではありません。メーカーの文書と保証ポリシーを優先してください。