このガイドで学べること
- Previewでできる基本操作(注釈、テキスト挿入、ページ管理)
- Adobe Acrobatやサードパーティ製アプリを使った高度な編集方法
- スキャンPDFや画像ベースのPDFを編集する際の注意点とOCRの扱い方
- 安全に編集・共有するためのSOP(手順書)と役割別チェックリスト
重要: まずは元ファイルのバックアップを作成してください。編集ミスで元データが上書きされるのを防げます。
Preview(プレビュー)でできること:概要
PreviewはほとんどのMacに標準搭載されているPDFビューア兼軽量編集ツールです。主に次の作業が可能です。
- 注釈(ハイライト、テキストボックス、図形)
- ページの並べ替え、削除、回転
- 簡易的なテキスト挿入(画像としてのテキストや注釈用)
- 簡単な画像の切り取り・リサイズ
ただし、既存PDF内の本文テキストを直接編集する(フォントや行間を保って修正する)機能は限定的または不可な場合があります。
Previewでの具体的な手順
PDFをPreviewで開く
- FinderでPDFを選択し、スペースキーでQuick Lookを使うか、ダブルクリックでPreviewを起動します。
- ツールバーが見当たらないときは「表示」→「ツールバーをカスタマイズ」を確認します。
注釈とテキストの挿入
- メニューから「表示」→「マークアップツールバーを表示」を選びます(またはツールバーのマークアップボタンをクリック)。
- ツールバーの「テキスト」アイコン(「A」や”T”で表現される場合あり)をクリックし、挿入したい場所をクリックして文字を入力します。
- テキストのフォント・サイズ・色はマークアップツール内で調整できますが、元の本文のフォントと完全一致しない場合があります。
注: Previewのテキスト挿入は“注釈レイヤー”として扱われるため、文書内の既存テキストを直接置き換える機能ではありません。
注釈(ハイライト・図形・ノート)
- テキストを選択してハイライトを適用するか、図形ツールで矢印や四角を追加します。
- ノート(注釈)を追加し、色をCtrlクリック(または右クリック)で変更できます。
- 注釈はドラッグで移動可能です。
ページの並べ替え・削除
- サイドバーに「サムネール」を表示します。
- サムネールをドラッグしてページ順を変更します。
- 削除する場合はサムネールを選択してDeleteキーを押すか、編集メニューから削除を選びます。
既存本文の直接編集が必要な場合(高度編集)
Previewで対応できないケース:
- PDFがテキストではなく画像(スキャン)として保存されている
- レイアウトやフォントを保ったまま本文の一部を直接修正したい
- 多数ページの大規模な文章修正やリンク編集が必要
このような場合は次のいずれかを検討してください。
Adobe Acrobatを使う
- Adobe Acrobat Proには「PDFを編集」機能があり、既存のテキストを直接編集したり、フォントや段落スタイルをある程度保ちながら修正できます。
- OCR(光学文字認識)機能も内蔵しているため、スキャンPDFを文字化して編集可能です。
インストール後は「ツール」→「PDFを編集」で編集モードに入ります。編集後は上書き保存か別名で保存してください。
サードパーティ製アプリ(例)
- PDF Expert(Readdle)、Foxit PDF Editorなど、Mac向けのPDF編集アプリが多数あります。
- これらはUIや価格、対応機能が異なるため、用途(OCR、注釈共有、フォーム編集)に合わせて選びます。
注意: サードパーティ製はプライバシーやセキュリティの観点で社内ポリシーに適合しているか確認してください。
スキャンPDF(画像ベース)を編集する方法
- OCRが必要か確認する(テキスト検索ができない場合は画像ベースの可能性が高い)。
- AcrobatやOCR専用ツールでテキスト認識を実行する。
- 認識後、確認・修正してから保存する。
OCR時のヒント:ページの解像度が低いと誤認識が増えるので、可能であれば元スキャンの解像度を上げるか、PDFをスキャンし直すことを検討してください。
オンラインエディタを使う利点と欠点
利点:
- インストール不要でブラウザから素早く編集可能。
- ページ分割や結合、簡単な注釈・テキスト追加が手軽。
欠点:
- 機密文書をアップロードする際はセキュリティとプライバシーポリシーを必ず確認する。
- 大容量ファイルや複雑なレイアウトの編集には向かない場合がある。
実務で使える「PDF編集のミニメソッド」
- 目的を定義する:軽微な注釈か、本文の大幅な修正か。
- 可編集性を確認する:テキストレイヤーがあるか、画像ベースかを確認。
- ツールを決定する:Preview(軽作業)/Acrobat(高度)/オンライン(即時)/Wordへ書き出し(大幅修正)。
- バックアップを作成する:元ファイルのコピーを保存。
- 編集→レビュー→最終保存(PDF/Aなどのフォーマット要件があればそれに準拠)。
安全な編集のためのSOP(標準作業手順) — 短縮版
- 元ファイルをコピーして「original_YYYYMMDD.pdf」のように保存。
- 編集ツールを選ぶ(社内で承認されたツールを使用)。
- 編集を実施し、変更点はコメントか差分リストで記録。
- 別名で保存してレビュー担当に渡す。
- 承認後、最終版を保存しアクセス権を設定して共有する。
重要: 法的効力がある文書(契約書等)は、電子署名の運用ルールを確認してから編集してください。
役割別チェックリスト
- 一般ユーザー:
- 元ファイルのバックアップを作成したか
- 注釈とテキスト追加で目的が達成できるか
- 機密データをオンラインサービスにアップロードしていないか
- ドキュメント管理者/編集者:
- 編集履歴と変更理由を記録したか
- フォントとレイアウトが崩れていないか確認
- IT管理者:
- 使用ソフトが社内ポリシーに準拠しているか
- ファイル共有設定とアクセス権を適切に構成したか
- 法務/コンプライアンス:
- 法的効力に影響しない編集か確認したか
- 電子署名/改ざん防止策の要否を評価したか
よくある失敗例(いつPreviewが向かないか)
- 元PDFがスキャン(画像)で、編集しても画像上に文字を重ねるだけになる場合。
- 複雑な表組や特殊フォントを含むPDFで、直接編集するとレイアウト崩れが生じる場合。
- DRMやパスワードで保護されたPDFを適切な権限なく編集しようとする場合。
代替案:PDFを一旦Wordに書き出して編集→再度PDF化、またはAcrobatでのOCR編集を検討してください。
互換性・移行の注意点
- ほとんどの現行macOSにはPreviewが搭載されていますが、古い環境や特殊なビルドではUIが異なることがあります。
- Adobe Acrobatの機能はPro版とReaderで差があるため、必要機能を満たすライセンスか確認してください。
- チームで運用する場合は、共通のワークフローを文書化しておくと混乱が少なくなります。
テンプレート:簡易編集チェックシート(例)
- 元ファイルのバックアップ作成済み
- 編集ツール選定済み(Preview / Acrobat / その他)
- 変更箇所をコメントで記録
- 関係者にレビュー依頼済み
- 最終版を安全に保存・共有
受け入れ基準(検収)
- レイアウト崩れがないこと(主要ページで目視確認)
- 変更箇所に誤字脱字がないこと
- 機密情報が意図せず公開されていないこと
- 必要な場合、電子署名の有効性が確保されていること
プライバシーとセキュリティの注意点
- 機密文書をオンラインサービスにアップロードする前に、サービス提供者のプライバシーポリシーと保存期間を確認する。
- 社内文書や個人情報を扱う場合は、暗号化とアクセス制御を設定する。
- 編集履歴や注釈に個人情報が残ることがあるため、配布前に不要な注釈を削除する。
FAQ(よくある質問)
PreviewでPDFの本文を直接書き換えられますか?
基本的にPreviewは注釈レイヤーでのテキスト挿入が中心です。既存の本文をフォントや段落構造を保ったまま直接修正する必要がある場合は、Adobe Acrobatや専用編集アプリの使用を検討してください。
スキャンしたPDFの文字修正はどうすればよいですか?
OCR機能のあるツール(Acrobatなど)で文字認識を行い、認識結果を確認・修正してから保存します。
オンライン編集サービスは安全ですか?
サービスによります。機密文書は原則として社内許可済みのツールで処理するか、アップロード先のセキュリティ情報を必ず確認してください。
まとめ
- Previewは軽作業や注釈追加に最適です。
- 本文の直接編集やOCRが必要な場合は、Adobe Acrobatや信頼できるサードパーティ製アプリを使いましょう。
- 編集前にバックアップを作成し、変更履歴と承認プロセスを回すことでトラブルを防げます。
短い推奨ワークフロー:目的を定義→可編集性を確認→ツール選定→バックアップ→編集→レビュー→最終保存。
よく使うメニュー名(英語UIの参照): “Show Markup Toolbar” は日本語環境では「マークアップツールバーを表示」と表記されることが多いです。