Pixel 7 / 7 ProでDM Verityを無効化する方法

重要: ブートローダーのロック解除やDM Verityの無効化は端末の全データを消去し、メーカー保証が無効になる可能性があります。自己責任で行ってください。
この記事の目的と対象読者
この記事は、Google Pixel 7 / 7 ProでDM Verity(デバイスマッパの整合性保護)を無効化する具体的な手順を、初心者にも分かるように平易な日本語で解説します。対象は以下のような方です。
- カスタムROMを導入したい中級〜上級Androidユーザー
- 端末をルート化したい開発者やモッダー
- fastboot / ADBの基本操作を学びたい人
定義(1行): DM Verityは、ブート時にシステムイメージの整合性を検証するカーネル機能で、不正な変更や改ざんを検出します。
目次
- 前提条件
- 手順の概要
- ステップ詳細
- プラットフォームツールの準備
- 開発者向けオプションの有効化
- ブートローダーのロック解除
- ファクトリーイメージの取得とvbmetaの準備
- vbmetaのフラッシュでDM Verityを無効化
- 検証とトラブルシューティング
- ロールバックとリカバリ(元に戻す方法)
- リスク・セキュリティの注意点
- よくある質問(FAQ)
- 用語集(1行)
前提条件
- Pixel 7 または Pixel 7 Pro を所有していること
- Windows / macOS / LinuxのいずれかのPC
- USBケーブル(データ転送対応)
- 重要データの事前バックアップ
- 端末のバッテリーが十分にあること(推奨 50%以上)
手順の概要
- Android SDK Platform Tools(ADB / fastboot)をPCに準備
- 端末で「開発者向けオプション」を有効にし、USBデバッグとOEMロック解除をオン
- ブートローダーをアンロック(この操作で端末内データは消去されます)
- Pixelに合わせたファクトリーイメージをダウンロードし、vbmeta.imgを用意
- fastbootでvbmeta.imgをフラッシュし、dm-verityと検証を無効化
ステップ詳細
1. Android SDK Platform Toolsの準備
- 公式のPlatform ToolsをダウンロードしてPCに展開してください。
- 展開したフォルダを以後の操作で使用します(以下では「SDKフォルダ」と呼びます)。
注意: Android Studioのフルインストールは不要です。Platform Toolsのみで十分です。
2. 開発者向けオプションの有効化
手順:
- 設定アプリを開く
- 「端末情報」をタップ
- 「ビルド番号」を7回連続でタップして開発者モードを有効化
- 設定 > システム > 開発者向けオプションに移動
- 「USBデバッグ」と「OEMロック解除」をONにする
3. ブートローダーのロック解除(アンロック)
注意: この操作は端末の全データを消去します。必ずバックアップを取ってください。
PCと端末をUSBで接続したら、SDKフォルダでコマンドプロンプト(またはターミナル)を開きます。
コマンド例:
adb reboot bootloader
fastboot devices
fastboot flashing unlock
- fastboot devicesが端末IDを返すことを確認
- ブートローダーのアンロック確認プロンプトが端末に表示されたら、音量キーで「Unlock Bootloader」を選択し、電源キーで確定
- アンロック後、端末は自動で再起動またはワイプされます
4. ファクトリーイメージの取得とvbmetaの準備
Googleの公式ページから、端末にインストールされているビルドバージョンと完全に一致するファクトリーイメージをダウンロードしてください。
- バージョンが一致しないとブートに失敗するリスクがあります。
ダウンロードしたファイルを展開し、フォルダ内にあるvbmeta.imgを特定します。
vbmeta.imgをSDKフォルダ(またはアクセスしやすい場所)に移動してください。
確認方法(端末のビルド番号):
- 設定 > 端末情報 > ビルド番号
5. vbmeta.imgをフラッシュしてDM Verityを無効化
下のコマンドを使用して、dm-verityと検証(verification)を無効化したvbmetaをフラッシュします。
fastboot flash vbmeta --disable-verity --disable-verification vbmeta.img
コマンド実行後、端末をリブートします:
fastboot reboot
成功すると、ブート時に検証による止まり(verification failed)などのエラーが出にくくなり、カスタムイメージ書き込みやroot化の操作が可能になります。
検証とトラブルシューティング
- ブート後に端末が正常に起動するか確認してください。
- 「システムが改ざんされました」等の警告が出る場合は、再度fastboot接続を確認し、正しいvbmeta.imgを使用しているかチェック。
- ブートループが発生した場合は、リカバリモードからFactory Imageで復旧するか、あるいはブートローダーを再ロックして(ロールバック)初期状態に戻す必要があります。
トラブルシューティングのヒント:
- fastbootがデバイスを認識しない: USBケーブルを交換、USBポートを変える、ドライバ再インストール
- コマンドの権限エラー: 管理者権限(Windows)またはsudo(macOS/Linux)で実行
ロールバックとリカバリ(元に戻す方法)
- 元の状態に戻すには、対応するファクトリーイメージを公式から再ダウンロードしてフラッシュしてください。
- ブートローダーを再ロックするには(端末を出荷時状態に戻すことを想定):
fastboot flashing lock
- 再ロックすると、再びデータ消去が発生する可能性があります。手順前にバックアップが極めて重要です。
代替アプローチと注意点
- 一部の作業はMagiskやカスタムリカバリ(TWRP)を使うことで回避できますが、やはりvbmetaの扱いは重要です。
- 端末やOSビルドが変わると手順が変化するため、作業前に最新の情報と公式リリースノートを確認してください。
リスクマトリクス(主なリスクと対策)
- データ消失: 影響大 → 対策: フルバックアップ
- ブートループ: 影響中 → 対策: 正しいファクトリーイメージを用意、リカバリ手順を準備
- 保証無効化: 影響大 → 対策: 事前確認、必要なら専門店に依頼
- セキュリティ低下: 影響中 → 対策: 不要になったら再ロック、信頼できるアプリのみ使用
テストケース/受け入れ基準
- 端末が正常に起動する
- カスタムROMのフラッシュがエラーなく完了する
- root取得後に主要な機能(電話、Wi-Fi、センサー等)が動作する
役割別チェックリスト
- ユーザー(実行者): バックアップを完了、SDK Toolsを準備、画像が一致するか確認
- 管理者(PC側): USBドライバを準備、管理者権限でコマンド実行
- サポート(問題発生時): リカバリイメージ、ログ取得、再現手順のメモ
セキュリティとプライバシーの注意
- DM Verityを無効にすると改ざん検出が無効になり、悪意あるコードが実行されるリスクが高まります。
- 重要な銀行アプリや決済アプリの利用は、作業前後で正常に動作するか必ず確認してください。
フローチャート(判断の流れ)
flowchart TD
A[開始] --> B{開発者向け有効か}
B -- いいえ --> C[開発者向けを有効にする]
B -- はい --> D{ブートローダーがアンロックされているか}
D -- いいえ --> E[アンロックする(データ消去)]
D -- はい --> F{正しいvbmetaを用意しているか}
F -- いいえ --> G[正しいファクトリーイメージを取得]
F -- はい --> H[fastbootでvbmetaをフラッシュ]
H --> I[再起動して動作確認]
I --> J[完了]
よくある質問
Q: DM Verityを無効にすると何が失われますか?
A: 端末の改ざん検出機能と一部のシステム保護が弱まり、メーカー保証が無効化される可能性があります。また、メーカーのセキュリティ更新や安全機能が期待通りに働かなくなる場合があります。
Q: 元に戻せますか?
A: はい。公式のファクトリーイメージで再フラッシュし、ブートローダーを再ロックすることで出荷時状態に戻せますが、プロセス中にデータは消える可能性があります。
Q: Pixel 7以外のモデルでも同じ手順ですか?
A: 基本的な流れは似ていますが、ファクトリーイメージやコマンドの細部はモデルやビルドにより異なるため、該当モデルの情報を必ず確認してください。
用語集(1行)
- ADB: Android Debug Bridge。端末とPCを接続してコマンドを送るツール。
- fastboot: ブートローダーレベルで端末にイメージを書き込むツール。
- vbmeta: Verified Bootのメタデータを格納するイメージ。dm-verityの検証に関連する。
まとめ: Pixel 7 / 7 ProでDM Verityを無効化する流れは、準備(SDK、開発者オプション)、ブートローダーのアンロック、正しいvbmeta.imgのフラッシュという順序です。各ステップでリスクを理解し、バックアップとリカバリ計画を必ず用意してください。
ご不明点や実行時のエラーがあれば下のコメント欄に書いてください。また、動画で手順を確認したい場合はDigitBinのYouTubeチャンネルを参照すると実演が見られます。チュートリアルが役に立ったらチャンネル登録をお願いします。