概要 — Wi‑Fiレポートとは何か
WindowsのWi‑Fiレポート(WLANレポート)は、PCで発生した無線ネットワーク関連のイベントを時系列で記録したHTMLドキュメントです。接続先SSID、接続継続時間、切断の理由、発生したエラー、使用した物理および仮想アダプタの情報などが含まれます。一目で過去数日にわたる全セッションを確認できるため、断続的な切断や接続不能の原因追究に役立ちます。
補足(1行定義): WLANレポート = Windowsの無線ネットワークイベントログを見やすくHTMLでまとめたレポート。
いつ使うべきか
- 自宅や職場で断続的にWi‑Fiが切れるとき
- 新しいルーターやアダプタを導入した後の動作確認
- ITサポートに状況を伝えるための客観的なログが欲しいとき
重要: レポートは過去72時間程度のセッション履歴を中心に表示します。長期の傾向は別途ログ収集が必要です。
レポートの作成手順(ステップバイステップ)
- Windows検索を開く(Win + S)し、検索ボックスに「cmd」と入力します。
- 「コマンドプロンプト」が表示されたら、右クリックまたは検索結果のオプションで「管理者として実行」を選択します。
- ユーザーアカウント制御(UAC)が表示されたら「はい」をクリックして管理者権限で開きます。
- コマンドプロンプトに以下を入力してEnterを押します(正確に入力してください):
netsh wlan show wlanreport
- コマンドが完了すると、WindowsはHTMLレポートを生成し、通常は次の場所に保存します:
C:\ProgramData\Microsoft\Windows\WlanReport\wlan-report-latest.html
- ファイルエクスプローラーで上記のパスに移動してレポートをダブルクリックし、既定のブラウザーで開きます。
注意: ProgramDataは隠しフォルダーになっていることがあります。エクスプローラーの「表示」設定で隠しファイルを表示してください。
レポートの主要セクションと見るべきポイント
レポートは複数のセクションで構成されます。まずは表紙に近い「Wi‑Fiサマリー」チャートで全体像を把握し、その後、詳細セクションを掘り下げます。
- サマリーチャート: 緑のバーは各セッションの継続時間を示します。左から古い順に並びます。バー上のアイコン(アルファベットや丸印)はセッション中に発生したイベントを表し、クリックすると該当箇所へジャンプします。
- 赤い丸に「X」はエラー(切断や失敗)を示します。これを起点にそのセッションの詳細を確認します。
- 凡例(チャートの右下)で各アイコンの意味を確認してください。
主要な下位セクション
Network Adapters(ネットワークアダプタ): 物理・仮想のアダプタ一覧とドライバー情報、状態が記載されています。ここでアダプタ自体の問題(ドライバ不整合や無効化)を検出できます。
Summary(要約): 各セッションの成功/失敗、切断理由、接続時間が一覧になっています。
- Wireless Sessions(無線セッション): 個々のセッションを詳述する箇所です。使用したアダプタ、接続モード(手動/自動)、接続先SSID、セッション長、イベントごとの時刻とメッセージが時系列で並びます。各イベントの左にある「[+]」をクリックすると詳細メッセージが展開されます。
レポートの見方:トラブルシューティングの実用手順
- サマリーチャートで赤い「X」アイコンのあるセッションを見つける。
- そのセッションのWireless Sessionsへジャンプし、切断時刻直前のイベントメッセージを確認する。
- メッセージから原因のヒントを拾う(例: 認証失敗、DHCPタイムアウト、アダプタの無効化など)。
- Network Adaptersセクションで該当アダプタのドライババージョンと状態を確認する。
- 必要に応じてドライバ更新、電源管理設定の変更、またはルーター側ログの確認を行う。
補足: メッセージに「認証失敗」や「信号が弱い」といった文言がある場合は、まずルーター側のSSID/パスフレーズ、及びチャネル競合(近隣APとの干渉)を疑ってください。
実践チェックリスト(ホームユーザー向け)
- WLANレポートを生成して該当セッションを特定したか
- 赤いXやエラーメッセージの時間をルーターのログと照合したか
- アダプタの電源管理(省電力による無効化)を無効化したか
- ドライバを公式サイトから最新版に更新したか
- ルーターの再起動とファームウェア確認をしたか
ロール別チェックリスト(IT管理者向け)
- ネットワーク管理者:
- ドライバ/ファームウェアの互換性、802.11モード(a/b/g/n/ac/ax)設定を確認
- DHCP割当やRADIUS認証ログと照合
- サポート担当:
- ユーザーからレポートを受け取るための手順(ファイル送付、添付方法)を統一
- 再現手順を文書化してエスカレーションする
SOP(標準作業手順) — レポートを取得してサポートに送る流れ
- ユーザーに管理者権限でコマンドを実行させるか、ITがリモートで実行。
- 生成されたHTMLを確認し、該当セッションのスクリーンショットと該当行のテキストを抜粋。
- ルーターのログ(可能なら)と時刻を合わせ、関連ログを添えてサポートチケットに添付。
- 対応後、解決したかどうかの確認のため、同様の条件で再テストを実施。
受け入れ基準(問題が解決したと判断する条件)
- 同じ操作・環境で24~72時間以内に該当する切断やエラーが再発しない。
- WLANレポートの同セッションで赤いXや同一エラーメッセージが出ない。
- ユーザーが所定の業務を問題なく実行できる(実用確認)。
よくあるケースと対処法(短い例)
- ケース: 「接続はするがインターネットにアクセスできない」
- レポートにDHCP関連のエラーがあれば、IPアドレス割当を確認。固定IPやルーターのDHCP設定を見直す。
- ケース: 「頻繁に切断される」
- レポートのRSSI(受信信号強度)や周囲のチャンネル干渉情報がヒントになる。チャネル変更やAP配置の見直しを検討。
- ケース: 「認証(パスワード)が通らない」
- セキュリティプロトコル(WPA2/WPA3)とクライアントの対応状況を確認。RADIUSや802.1Xが関与している場合は認証サーバーログを確認。
決定フローチャート(簡易:問題切り分け)
flowchart TD
A[接続問題発生] --> B{Wi‑Fiに接続できるか}
B -- はい --> C{インターネットにアクセスできるか}
B -- いいえ --> D[アダプタ/ドライバ/SSID確認]
C -- はい --> E[外部要因(サーバ/サイト)の可能性]
C -- いいえ --> F[DHCP/ゲートウェイ/認証の確認]
D --> G[ドライバ更新・電源設定確認]
F --> H[ルーター/認証サーバーのログ照合]
G --> I[再テスト]
H --> I
I --> J{問題解決?}
J -- はい --> K[対応完了]
J -- いいえ --> L[エスカレーション]
役立つヒューリスティクス(判断のための簡潔な考え方)
- 「一台だけ問題」ならクライアント側の設定/ドライバ、複数台で問題ならインフラ側(AP/ルーター)を疑う。
- 時刻が特定の時間帯に集中する場合は、干渉(人為的な周波数使用)やスケジュールタスクを疑う。
- 認証失敗が多発する場合は認証基盤(RADIUSやAD)との同期問題の可能性が高い。
セキュリティとプライバシー上の注意
WLANレポートには接続したSSIDやMACアドレス、時刻などの情報が含まれます。これらは個人情報や環境情報に相当するため、レポートを共有する際は機密扱いにし、必要な範囲でのみ提供してください。
1行用語集
- SSID: 無線ネットワークの識別名
- RSSI: 受信信号強度指標(信号の強さ)
- DHCP: IPアドレスを自動割当する仕組み
- RADIUS: 認証サーバーの一種(企業で多用)
まとめ
WindowsのWi‑Fi(WLAN)レポートは、短時間で接続問題の原因を切り分けるための強力なツールです。管理者権限で簡単に生成でき、サマリーチャートとセッション詳細を見比べることで、アダプタ起因かネットワーク起因かを判定できます。まずはレポートを生成して、赤いエラーアイコンのあるセッションを起点にイベントを追ってください。
重要: 長期的なトレンド分析や複雑な認証問題は、追加のログ(ルーター、認証サーバー)や専門的な解析が必要です。